コラム
2022年12月28日

図形数について(その2)-3次元立体図形に関する図形数、ウェアリングの問題等-

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はじめに

図形数に関する前回の研究員の眼では、「図形数(figurate number」と呼ばれるもののうちの、2次元の平面図形に関する数について紹介した。

今回は、三角錐数や立方数等の3次元の立体図形に関する図形数、パスカルの三角形及びウェアリングの問題について紹介することにする。

三角錐数(正四面体数)

三角錘数(triangular pyramidal number」というのは、下図のように、球を三角錐の形に並べたとき、そこに含まれる球の総数にあたる自然数のことをいい、「四面体数(tetrahedral number」とも呼ばれる。これは三角数を1から順に加えていくことで得られる数に相当している。

三角数の場合、ある三角数から次の三角数を作成するには、底辺を1つ増やしてやればよかったが、三角錐数の場合、ある三角錘数から次の三角錘数を作成するには、三角形の底面を1つ増やしてやればよい。
三角錘数
n 番目の三角錐数 Tn は1から n 番目の三角数 n(n + 1)/2 までの和に等しいので
n 番目の三角錐数
となる。これはまた、組み合わせの記号を使うと、Tn=n+2C3 となる。

三角錐数(正四面体数)の性質

三角錐数にも、いくつかの性質がある。

・三角錐数のうち三角数でもある数は1, 10, 120, 1540, 7140 の5つのみ
・三角錐数のうち四角数(平方数)でもある数は 1と4 と 19600の3つのみ
・三角錐数の奇数番目は奇数の平方和、偶数番目は偶数の平方和で表される。

実際に、以下のようになる。
三角錐数(正四面体数)の性質
三角錐数は「奇数-偶数-偶数-偶数」といった順番の繰り返しで現れる。

実際に、1, 4, 10, 20, 35, 56, 84, 120, 165, 220, 286, 364, 455, 560, 680, 816,… というような具合である。

立方数(正六面体数)

立方数(cubic number」は、正六面体を基に生成される数である。これは結局、縦・横・高さに同じ個数を並べて得られる数となるので、ある数の三乗(立方)となる。

即ち、立方数は、以下のようになる。

1, 8, 27, 64, 125, 216, 343, 512, 729, 1000,……

1からn 番目の立方数 n3 までの和に関しては、以下の等式が成り立つ。
1からn 番目の立方数 n3 までの和
この式が正しいことは、数学的帰納法で証明される。

即ち、「1からn 番目の立方数 n3 までの和は、1からnまでの和の二乗」となる。

なお、この算式については、以下のアプローチからも得られる。即ち、

13=1
23=3+5
33=7+9+11
43=13+15+17+19
53=21+23+25+27+29
・・・・・・
k3=(k2-(k-1))+(k2-(k-1)+2)+・・・+(k2-1)
    +(k2+1)+・・・+(k2+(k-1)-2)+(k2+(k-1))    kが偶数の時
 =(k2-(k-1))+(k2-(k-1)+2)+・・・+(k2-2)+k2
    +(k2+2)+・・・+(k2+(k-1)-2)+(k2+(k-1))    kが奇数の時

とk3は連続する奇数のみで表される。ここで、

(k-1)2+((k-1)-1)=k2―k-1(=(k2-(k-1))-2 )

となることから、1からn 番目の立方数 n3 までの和は、1からn2+(n-1)までの全ての奇数の合計値となる。即ち、以下の式が成り立つことになる。
1からn 番目の立方数 n3 までの和
前回の研究員の眼の四角数で説明したように、この奇数の和は四角数を構成していることから、
奇数の和
となる。

なお、これからまた、立方数は2つの平方数の差として表されることになる。
立方数

立方数(正六面体数)の性質

立方数にも、いくつかの性質がある。

・2通りの方法で、2つの立方数の和として表される最小の自然数は、1729 = 123 + 13 = 103 + 93 である。これについては、以前の研究員の眼「天才数学者ラマヌジャン-「奇蹟がくれた数式」を観て-」(2017.3.21)において、「タクシー数」ということで紹介した。

・全ての自然数は、9個以下の立方数の和として表される(ウェアリングの問題)。これについては、後述する。

・立方数を2つの立方数の和として表すことはできない。これは、有名な「フェルマーの最終定理」(3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない)におけるn=3 のケースに該当している。

四角錘数

四角錘数(square pyramidal number」というのは、下図(n=4のケース)のように、球を1段目に1個、2段目に4個、3段目に9個、…というように正四角錐の形に積んだとき、そこに含まれる球の総数にあたる自然数のことをいう。これは1から順に四角数(平方数)を加えることで得られる数に相当している。

(n=4のケースの四角錘数)
n=4のケースの四角錘数
n 番目の四角錐数 Sn は1から n 番目の平方数 n2 までの和に等しいので
n 番目の四角錐数 Sn
となる。

四角錘数の性質

四角錐数にも、いくつかの性質がある。

・四角錐数は「奇数-奇数-偶数-偶数」といった順番の繰り返しで現れる。

実際に、1, 5, 14, 30, 55, 91, 140, 204, 285, 385, 506, 650,… というような具合である。

・四角錐数のうち三角数でもある数は 1, 55, 91, 208335 の4つのみ
・四角錐数のうち四角数(平方数)でもある数は 1 と 4900(24番目の四角錐数)の2つのみ
・四角錐数かつ三角錐数でもある数は 1 のみ
四角錘数は2つの連続する三角錐数の和となる(因みに、前回の研究員の眼で述べたように「四角数は2つの連続する三角数の和」となっている)

これは、上式から Sn=n+1C3n+2C3  となっていることで示せる。

n×nマスの方眼の中に含まれる正方形の数は n 番目の四角錐数Snに等しくなる。

これは、四角錘数の構成要素を考えれてみれば確認できる。

パスカルの三角形

以下では、「図形数」に関連するトピックを紹介する。まずは、「パスカルの三角形」である。

パスカルの三角形(Pascal's triangle)」と呼ばれるものは、二項展開における係数を三角形状に並べたものに相当しているもので、以下の図で示されるものである1
パスカルの三角形
パスカルの三角形については、以前の研究員の眼「フィボナッチ数列について(その3)-フィボナッチ数列はどこで使用され、どんな場面に現れてくるのか(自然界以外)-」(2021.3.26)で紹介した。そこで説明したように、このパスカルの三角形において、桂馬跳びの様に斜め方向に数字を拾い、その合計を取っていくと「フィボナッチ数列」が現れる。例えば、上の図の上から6段目の斜め線で示している数値の合計は5+20+21+8+1=55 はフィボナッチ数になっているというような具合である。

一方で、よりシンプルに、パスカルの三角形における数列を左上(または右上)にある列から順にみてみると、以下の通り、これまで紹介してきた図形数等の数列になっている。

単数列             1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1,…,
自然数の数列          1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9,…,
三角数の数列          1, 3, 6, 10, 15, 21, 28, 36, 45,…,
三角錐数(正四面体数)の数列  1, 4, 10, 20, 35, 56, 84, 120, 165,…,

因みに、その次の数列 1, 5, 15, 35, 70, 126, 210, 330, 495, …, については、「五胞体数」と呼ばれる数列になっている。「五胞体(ごほうたい)」と呼ばれるのは、4次元単体で、5つの胞で囲まれたものであり、全ての胞が四面体、全ての面が三角形となっているものである。いわば「4次元四面体」に相当し、その意味では「五胞体数」は「4次元正面体数」(「4次元超四面体」とも呼ばれる)に相当するものになっている。同様に、その次の数列 1,6,21,56,126,252,462.792,…, については、「六胞体数」と呼ばれる数列で、「5次元四面体数」(「5次元超々四面体数」)と呼べるものになっている。 

なお、パスカルの三角形の横の数列は、当然に2項展開の各項の係数を示しているが、その各行の合計値は2のべき乗(n行目の場合 2n1)となっている。
 
1 なお、このような数字の三角形については、パスカルよりも遥か以前から知られていたが、その新たな性質を発見して、それを証明したことから、パスカルの名が付与されている。
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中村 亮一

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