コラム
2023年10月24日

コールされなかった数は?-記憶力に限界を感じたとき

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

人間の記憶力はどれくらい伸ばせるものだろうか。記憶力を測るときに定番の、円周率(パイ)の記憶桁数で見てみると、ギネスブックの公認記録は2015年にインドの人が達成した7万桁。ただ、日本では、これを上回る10万桁以上の記憶を達成した人がいて、いまのところこれが世界最多だという。
 
ただ、こうした話は、生まれつき才能を持った一部の人にしかあてはまらない。多くの人は、円周率を100桁記憶するのも大変だ。
 
天賦の才は無くても、暗唱を繰り返す、語呂合わせを作るなど、努力をすれば、ある程度まで記憶力を高めることはできるだろう。でも、それにも限界がある。それでは、記憶力に限界を感じたときは、どうすればよいだろうか。

◇ 数を9個憶えることはなんとかできる

まず、次のようなテストを考えてみる。
 

(テスト1)
1から10までの整数を考えます。このうち、9個の数を5秒ごとに、ランダムに、コールします。一度コールした数を、もう一度コールすることはありません。このとき、最後までコールされなかった数はどれでしょうか? ただし、道具を使うことはできません。

9個の数であれば、コールされた数を憶えておくことは、なんとかできる。もしどうしても記憶に自信がなければ、両手の指に1~10までの数を割り振っておいて、コールされたらその指を折るというテクニック(ズル?) も考えられる。コールされなかった数を言い当てることは、できるはずだ。

◇ 数を99個憶えることは難しい

だが、99個の数になると、テストの難しさは格段に跳ね上がる。
 

(テスト2)
1から100までの整数を考えます。このうち、99個の数を5秒ごとに、ランダムに、コールします。一度コールした数を、もう一度コールすることはありません。このとき、最後までコールされなかった数はどれでしょうか? ただし、道具を使うことはできません。

よほどの訓練を積まない限り、ランダムにコールされる99個の数を記憶していくことは難しい。テスト1のときのような、両手の指を使うテクニックも通用しない。多くの人にとって、自らの記憶力に限界を感じるテストと言えるだろう。
 
では、どうすればよいだろうか?

◇ 記憶の代わりに..

ここで、数学 (もしくは算数) が役に立つ。
 
1から100までの数を憶えることはあきらめる。その代わり、コールされる数を頭の中で足し算していく。
 
1から100までの整数を全部足すと、5050なので、コールされた99個の数の合計を5050から引き算すれば、コールされなかった数がわかる。
 
つまり、記憶の代わりに、暗算をするわけだ。これならば、暗算力で99個くらいはなんとかなるだろう。

◇ 下2桁だけでよい

でも、足し算の暗算といっても、数が大きくなってくると簡単ではない。例えば、4849に86を足す計算を暗算で素早く行うことは結構大変だ。「一の位同士を足すと9+6で15だから、十の位は4+8に繰り上がりの1が加わって…」などと暗算していると、あっという間に5秒経ってしまう。足し算の結果が4935と計算できたころには、次の数がコールされてしまっているだろう。
 
ここで、テスト2には、もう1つ、テクニックがある。
 
コールされる99個の数の合計は、4950~5049のどれかになる。コールされなかった数が100の場合は、5050から100を引き算した4950。コールされなかった数が1の場合は、5050から1を引き算した5049となるからだ。
 
ここで、注目したいのは、この99個の数の合計の、下2桁の数だ。50、51、…、99、00、01、…、48、49と、全部違ってくる。
 
下2桁が50~99のどれかだったら、150からその数を引き算した数。下2桁が00~49のどれかだったら、50からその数を引き算した数として、コールされなかった数を言い当てることができる。
 
これは、暗算での足し算は、下2桁だけが重要で、あとはどうでもよい、ということを意味する。先ほどの例でいえば、4849に86を足すという計算ではなく、下2桁の49に86を足すことになる。そして、その結果の135のうち、下2桁の35だけを残して、次の足し算に進めばよい。

◇ あとは集中力の持続が問題

テスト2では、超人的な記憶の代わりに、コールされる数の足し算を下2桁について暗算していく。これで、コールされなかった数を言い当てることができるわけだ。
 
だが、ここで最後の問題がある。足し算を淡々と続けていく集中力をどう持続するかという点だ。
 
5秒に一度、98回の足し算をするということは、490秒、つまり8分以上の間、集中し続けなければならない。これは、頭で考えるほど、簡単なことではない。1つ1つの足し算の作業が単調であるため、どうしても集中が途切れがちになってしまう。
 
人間離れした記憶を回避しても、暗算を下2桁に簡略化しても、最後には、一定時間の集中力の持続が必要となる。こればかりは、勉強などの訓練を通じて培う以外にないだろう。
 
やはり、日々の地道な勉強を通じて集中力を高めることが、最後にものをいうことになりそうだ。

(参考文献)
 
「円周率」(ウィキペディア フリー百科事典) (関連サイトを含む)
 
“Mathematical Puzzles” Peter Winkler (CRC Press, 2021)
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

(2023年10月24日「研究員の眼」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【コールされなかった数は?-記憶力に限界を感じたとき】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

コールされなかった数は?-記憶力に限界を感じたときのレポート Topへ