- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- サステナビリティに関わる意識と消費行動(2)-意識は成長段階・行動は途上段階、教育機会や情報感度、経済的余裕が影響
サステナビリティに関わる意識と消費行動(2)-意識は成長段階・行動は途上段階、教育機会や情報感度、経済的余裕が影響

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
- ニッセイ基礎研究所の調査に基づき、20~74歳のサステナビリティに関わる意識を見ると、そう思う割合が最多は「サステナビリティに関わる問題は他人事ではない」(43.9%)であり、次いで僅差で「サステナビリティに今すぐに取り組まないと手遅れになる」(42.8%)などが続き、日本の消費者においてサステナビリティに関わる意識が一定程度は醸成されており、成長段階にある様子がうかがえる。
- 行動面については、そう思う割合が最多は「価格が安くても人権問題等のある製品は買わない」(22.1%)であり、次いで僅差で「サステナビリティを意識して行動している」(21.5%)などが続き、意識面と比べてそう思う割合が低い。関心はあっても具体的な行動に戸惑いがある消費者も目立ち、行動については途上段階にあるようだ。
- 現在の日本の消費者に向けた製品を考える場合、高価格になりがちな再生素材等を用いたものよりも、価格に影響を及ぼさない範囲で購入時から使用後までを含めた消費者行動のいずれかの段階で消費者にサステナビリティに関わる「手間」をかけることを求めるもの(パッケージレスや補修サービス、リサイクルなど)が受け入れられやすいだろう。「手間」をかければ製品や企業に対する消費者の愛着も高まりやすい。
- 属性別には、意識は女性やシニア、高年収世帯で高い一方、行動は教育機会の有無や情報感度の強さ、経済的余裕などが影響しており、正規雇用者の多い男性で女性よりやや先行していたり、教育機会に恵まれたデジタルネイティブの若者で情報発信やボランティア活動に積極的な傾向などが見られた。一方、シニアでは具体的な取り組みへの戸惑いが大きいが、価格よりサステナビリティを優先して製品を購入するといった個人的に取り組みやすい行動は、若者以上に積極的な傾向も見られた。
- サステナビリティに関わる取り組みを底上げするためには、シニアや非就業者などへの情報発信や教育機会を充実させることが重要だ。一方で、企業等が即時性のある好感度の向上や情報流通効果を期待する場合には、やはり情報発信力の高いZ世代などの若者への訴求が効果的だろう。将来的には、すべての消費者にとってサステナビリティという観点が消費行動の土台となっていくだろうが、意識と行動に隔たりがある現在では、消費者の特徴を丁寧に捉えて情報を訴求することが肝要だ。
■目次
1――はじめに
~認知は広がるが、現段階では価格よりサステナビリティ優先した製品購入は少数派
2――全体の状況
~意識は成長段階、行動は途上段階、サステナビリティにお金というより手間をかけたい
3――属性別の状況
~教育機会や情報感度、経済的余裕が意識の高さや行動の積極性に影響
1|性別の状況
~消費生活の関心が高い女性で意識は高く、研修機会等の多い男性で行動はやや先行
2|年代別の状況
~シニアで意識高く、教育機会に恵まれたデジタルネイティブで行動はやや積極的
3|職業別の状況
~公務員は時間のなさが足かせのようだが価格よりサステナビリティ優先傾向強い
4|世帯年収別の状況
~高年収ほど意識が高く、行動は正規雇用者の多い層を中心に積極的
4――おわりに
~シニアや非就業者への教育機会の充実が重要、即時性・情報流通効果はZ世代に期待
(2023年10月18日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/02/06 | インバウンド消費の動向(2024年10-12月期)-2024年の消費額は8.1兆円、訪日客数は3,687万人で過去最高 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/11/19 | 家計消費の動向(~2024年11月)-緩やかな改善傾向、継続する物価高で消費に温度差 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/11/08 | Z世代の消費志向とサステナブル意識-経済・社会的背景から見た4つの特徴 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2024/10/30 | 訪日外国人消費の動向(2024年7-9月期)-9月時点で2023年超えの5.8兆円、2024年は8兆円も視野 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年02月07日
金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか? -
2025年02月07日
英国金融政策(2月MPC公表)-利下げ決定、今後の段階的・慎重姿勢は維持 -
2025年02月07日
基礎研REPORT(冊子版)2月号[vol.335] -
2025年02月07日
Jリート市場回復の処方箋 -
2025年02月07日
海底資源探査がもたらす未来-メタンハイドレートと海底金属
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【サステナビリティに関わる意識と消費行動(2)-意識は成長段階・行動は途上段階、教育機会や情報感度、経済的余裕が影響】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
サステナビリティに関わる意識と消費行動(2)-意識は成長段階・行動は途上段階、教育機会や情報感度、経済的余裕が影響のレポート Topへ