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サステナビリティに関わる意識と消費行動(2)-意識は成長段階・行動は途上段階、教育機会や情報感度、経済的余裕が影響

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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4――おわりに~シニアや非就業者への教育機会の充実が重要、即時性・情報流通効果はZ世代に期待
このような中で、現在の日本の消費者に向けた製品を考える場合、再生素材等を用いることで価格が高くなるようなものよりも、価格に影響を及ぼさない範囲で購入時から使用後までを含めた消費者行動のいずれかの段階で消費者にサステナビリティに関わる「手間」をかけることを求めるもの(パッケージレスや補修サービス、リサイクルなど)が受け入れられやすいだろう。また、「手間」をかけることで製品や企業に対する消費者の愛着を高められる効果も期待できる。
属性別には、意識は、日頃から消費生活への関心が高い女性やシニアで、あるいは経済的余裕のある高年収世帯ほど高い一方、行動は必ずしも意識の高さに比例しているわけではなく、組織や学校での教育機会の有無や情報感度の強さ、経済的余裕などが影響していた。よって、正規雇用者の多い男性では女性と比べて行動がやや先行していたり、学校などで学ぶ機会に恵まれたデジタルネイティブの若者では情報発信やボランティア活動に積極的な傾向が見られた。一方、比較的教育機会の少ないシニアでは具体的な取り組みへの戸惑いが大きいが意識自体は高いため、価格よりサステナビリティを優先して製品を購入するといった個人の日常の消費行動として取り組める行動については、若者以上に積極的な傾向も見られた。また、意識面の項目と行動面の項目の支持率の差(意識の高さと行動の取組みのギャップ)を見ると、若者よりもシニアでひらいているために、目先の伸びしろという意味では年齢が高いほど今後の行動を期待しやすいとも考えられる。
以上より、日本の消費者のサステナビリティに関わる取り組みを底上げするためには、シニア層や非就業者などサステナビリティに関わる教育機会が不足している層への情報発信や教育機会を充実させることで、意識を行動へ移すための具体的な取り組み方法を示すことが重要である。一方で、企業等が即時性のある好感度の向上や情報流通効果を期待する場合には、やはり情報発信力の高いZ世代などの若者への訴求が効果的だろう。
前稿でも述べた通り、将来的には、すべての消費者にとってサステナビリティという観点が消費行動の土台となっていくのだろう。しかし、未だ意識と行動に隔たりがある現在では、消費者の特徴を丁寧に捉えた上で各層に適した情報を訴求することが肝要である。
(2023年10月18日「基礎研レポート」)
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- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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