コラム
2023年10月06日

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1――マイナポイント第2弾による交付率の伸びは一服

総務省が2023年10月に発表した「マイナンバーカード交付状況について」によれば、2023年9月末時点のマイナンバーカード交付率は76.8%で、対前月比0.9%ptの増加であった(図表1)。また、マイナンバーカードの交付数から失効数(死亡・有効期限切れ・返納など)を差し引いた保有率1は72.5%であった。2023年3月にマイナポイント第2弾が終了して以降、ポイントによる交付促進効果が徐々に落ち着いたことから、対前月比交付率の伸びも鈍化し、10月にはほぼマイナポイント第2弾前の水準に戻った。
(図表1)マイナンバーカードの交付率と対前月比交付率の伸び
 
1 保有率は、2023年5月末以前のデータが公表されていない。

2――相次ぐトラブルは、政権運営にも影響

しかし、マイナンバーカードを取り巻く状況は厳しい。相次ぐマイナンバーカードに関するトラブルは、国民の不安を掻き立てた。足元では、(1) 健康保険証との誤紐付け (2) 地方職員共済組合での誤紐付け (3) 障がい者手帳情報との誤紐付け (4) 公金受取口座情報の誤登録 (5) 課税情報との誤紐付け (6) 労災情報との誤紐付け (7) 証明書の誤発行などが明らかとなっている。マイナンバーカードの紐付け事務はデジタル化されていない部分も多く、端末の操作ミスや確認ミスなどのヒューマンエラーを原因とするものが今般のトラブルでは多いのが特徴だ。

トラブルは政権運営にも影響を与えている(図表2)。5月以降、内閣支持率は急落し、来秋の健康保険証の廃止に対しても、延期または一体化の撤回を求める声が大きくなりつつある(図表3)。ただ、岸田総理大臣は、健康保険証の来秋廃止とマイナンバーカード保険証への一本化を当面維持する方針を示しており、その時期については「総点検とその後の修正作業の状況を見極めた上で、更なる期間が必要と判断される場合には、(中略)適切に対応する」と表明2した。
(図表2)支持率低下の原因だと思うこと
(図表3)2024年秋の健康保険証廃止・マイナンバーカードへの一本化についてどう思うか
 
2 「岸田総理大臣記者会見」. 内閣官房. 2023-08-04 https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0804kaiken.html . (2023-09-21参照)

3――今後は、11月の総点検と再発防止策に注目

しかし、健康保険証の廃止時期については、現状、明確な見通しは立っていない。岸田総理は、総点検の進捗や結果次第でその延期を示唆しているためだ。総点検とは、個人情報とマイナンバーの紐づけの正確性を確認する作業であり、マイナポータルで閲覧できる29項目(図表4)の全てが点検対象となる。デジタル庁が主導し、厚生労働省や総務省などの関連省庁3の連携のもとで進められる。
(図表4)マイナポータルで閲覧可能な全29項目と情報の主な例
総点検の手続きは、主に2つの段階から構成される。第一段階は、誤紐づけが多発しているケースの特定と整理だ。各省庁は、紐づけを行った団体(自治体や保険者など)に紐づけ方法を確認し、国の指示との相違があるケースなど、不適当な紐づけを行った団体を絞り込む。第二段階は個別データの点検だ。各団体が、不適当なケースに該当すると指摘された項目について、具体的な紐づけ状況や情報漏洩の有無などを点検する。

2023年5月に開始された総点検は、原則として11月末までに全ての確認・修正を完了する予定だ。しかし、点検を実施する団体には大きな負担であり、河野大臣も「期限ありきでない」と、後ずれする可能性を指摘している4。また、新たに大量の誤登録が見つかれば、マイナンバーに対する国民の信頼はさらに低下しかねない。

5月から8月にかけて、他の項目に先行して行われた3項目(健康保険証・共済年金・障害者手帳)の総点検では、新たに1,069件の健康保険証の誤紐づけが確認された。また、障害者手帳では、総点検の第一段階で不適当ケースと判断された50の団体以外でも誤紐づけが多発した。このため障害者手帳に関しては、第一段階で絞り込んだ団体に限らず、紐づけを実施した全団体が第二段階の個別データの点検を実施する。

­­­­­­­­­現在、先行した3項目から29項目に範囲を広げて総点検を行っている。総点検は概ね第二段階に入っており、全47都道府県と285の市区町村、労働基準監督署1カ所で、個別データの点検を行っている。今後、総点検を通じて更なる誤紐づけが明らかになる可能性もある。健康保険証廃止時期を見越す上で、総点検の進捗や結果が明らかになる11月末までの期間に注目したい。

また、マイナンバーカードトラブルを受けての再発防止策にも注目したい。8月8日に公表された総点検の中間報告では、点検の状況報告と併せて、(1) マイナンバー登録事務に関する横断的ルールの策定 (2) マイナンバー照会方法の改善 (3) マイナンバー登録事務のデジタル化、という3つの再発防止策が公表された。とりわけ、(3) マイナンバー登録事務のデジタル化は、今後のトラブルの防止に大きく役立つように思われる。一部の紐づけ実施主体では、手入力でマイナンバーと個人情報と紐づける過程で誤入力が発生し、それが誤紐づけを引き起こしてきた。政府は年度内を目途に、マイナンバーカードから機械的にマイナンバーを読み取って登録する紐づけのデジタル化を推進する方針だ。このデジタル化により、ヒューマンエラーに起因するトラブルが、今後どの程度収まっていくか注目したい。
 
3 文部科学省やこども家庭庁、財務省(国税庁)など
4 根本和哉「マイナ総点検、大きく後ずれも 河野氏『期限ありきでない』」産経新聞社 . 2023-08-08. https://www.sankei.com/article/20230808-D7MGO2J475OVJADFSWWWZBKOQU/ .(2023-10-06)
 
 

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総合政策研究部   研究員

河岸 秀叔 (かわぎし しゅうじ)

研究・専門分野
日本経済

(2023年10月06日「研究員の眼」)

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【マイナンバーカードの総点検に注目】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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