2023年10月10日

月経関連症状の自覚に影響する要因とは?-学歴や喫煙・朝食欠食習慣、出産経験が有意に影響、若年期での受診行動の促進や生活習慣を大事に-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

文字サイズ

1――はじめに

弊社では、2019年3月より毎年「被用者の働き方と健康に関する調査」をインターネットで実施している。本調査の対象は、全国の18~64歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象に、健康に関する自覚症状についても調査を実施しており、直近の2023年3月の調査では5,747件の回答を得た。

基礎研レポート「働く女性の自覚症状(健康問題)1では、就労中の女性2,289人を分析対象として自覚症状(健康問題)を質問した結果、健康経営の視点で注目されている女性特有の月経関連症状の自覚が、207人(3.6%,ケースの割合9.0%)であることが明らかとなった。

筆者は、これまでに10歳代を対象として月経関連症状の実態調査2,,34を実施しており、そこでは全体の6割に日常生活への支障を感じる結果が明らかとなっている。また、統計学的な分析によりBMIや運動習慣と月経関連症状との有意な関連性が示唆されている。

本稿では、弊社の調査結果を活用し、就労中の女性2,289人のうち、現在月経症状が出現していると想定される10歳代~40歳代(N=1,646)を分析対象として、年代別、職業や婚姻状況などの基本属性別、子どもの有無や体格、生活習慣との関連性を統計学的に分析した結果を示す。
 
1 乾 愛 基礎研レポート「働く女性の自覚症状(健康問題)」(2023年8月29日)
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75925?site=nli
2 乾 愛 基礎研レポート「日本の10歳代女性における月経に伴う諸症状に関する実態調査(1)」
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74017?site=nli
3 乾 愛 基礎研レポート「日本の10歳代女性における月経に伴う諸症状に関する実態調査(2)」
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74084?site=nli
4 乾 愛 基礎研レポート「日本の10歳代女性における月経に伴う諸症状に関する実態調査(3)」
 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74186?site=nli

2――月経関連症状を自覚する女性の特徴

2――月経関連症状を自覚する女性の特徴

1分析対象者
一般的に月経は、平均50歳で閉経を迎えるとされていることから、今回は月経関連症状の自覚対象者を10歳代~40歳代と仮定し、50歳代及び60歳代は分析から除外した。また、年代別の人数を確認したところ、10歳代が2人のみであったため、統計学的な分析には不適切と判断し除外した。その結果、本稿での分析対象者は、20歳代から40歳代の就労中の女性1,646人となった。
2年代別の月経関連症状の自覚有無 
次に、これらの分析対象者を20歳代、30歳代、40歳代の各年代別に分け、月経関連症状の自覚有無を図表1へ示した。その結果、20歳代では、自覚なしが454人(88.8%)に対し自覚ありが57人(11.2%)、30歳代では、自覚なしが463人(87.7%)に対し自覚ありが65人(12.3%)、40歳代では、自覚なしが538人(88.6%)に対し自覚ありが69人(11.4%)であった。(*割合は、年代の%を表記)
図表1.年代別月経関連症状有無 
3職業別の月経関連症状の自覚有無
続いて、これら分析対象者の職業ごとに、月経関連症状の自覚有無を図表2へ示した。その結果、国家公務員(一般)では、自覚なしが46人(95.8%)に対し自覚ありが2人(4.2% )、国家公務員(管理職以上)では、自覚なしが7人(100.0%)に対し自覚ありが0人(0.0%)、地方公務員(一般)では、自覚なしが15人(93.8%)に対し自覚ありが1人(6.3%)、地方公務員(管理職以上)では、自覚なしが6人(100.0%)に対し自覚ありが0人(0.0%)、正社員・正職員では、自覚なしが1110人(88.9%)、自覚ありが138人(11.1%)、正社員・正職員(管理職以上)では、自覚なしが43人(86.0% )に対し自覚ありが7人(14.0%)、契約社員(フルタイムで期間を定めて雇用される者)では、自覚なしが133人(89.9%)に対し自覚ありが15人(10.1%)、派遣社員(労働者派遣事業者から派遣されている労働者)では、自覚なしが95人(77.2%)に対し自覚ありが28人(22.8%)であった。(*割合は、業種の%を表記)
図表2.職業別月経関連症状有無
4最終学歴別の月経関連症状の自覚有無
続いて、分析対象者の最終学歴別に、月経関連症状の自覚有無を図表3へ示した。その結果、中学卒業者では、自覚なしが9人(75.0%)、自覚ありが3人(25.0%)、高等学校卒業者では、自覚なしが289人(84.5%)、自覚ありが53人(15.5%)、高専卒業者では、自覚なしが34人(97.1%)、自覚ありが1人(2.9%)、専門学校卒では、自覚なしが188人(88.3%)、自覚ありが25人(11.7%)、短大卒業者では、自覚なしが188人(90.4%)、自覚ありが20人(9.6%)、大学卒業者では、自覚なしが681人(89.1%)、自覚ありが83人(10.9%)、大学院卒業者では、自覚なしが51人(91.1%)、自覚ありが5人(8.9%)、その他卒業者では、自覚なしが15人(93.8%)、自覚ありが1人(6.3%)という結果であった。(*割合は、最終学歴の%を表記)
図表3.最終学歴別月経関連症状有無
5|子どもの有無・人数別、月経関連症状の自覚有無
最後に、子どもの有無・人数別における月経関連症状の自覚有無を図表4へ示した。その結果、こどもなし(0人)では、自覚なしが1,066人(87.4%)、自覚ありが154人(12.6%)であった。子どもあり(1人)では、自覚なしが210人(92.9%)、自覚ありが16人(7.1%)、子どもあり(2人)では、自覚なしが134人(91.2%)、自覚ありが13人(8.8%)、子どもあり(3人)では、自覚なしが29人(82.9%)、自覚ありが6人(17.1%)、子どもあり(4人)では、自覚なしが6人(85.7%)、自覚なしが1人(14.3%)、子どもあり(5人)では、自覚なしが3人(100.0%)、自覚ありが0人(0.0%)、子ども(6人)では、自覚なしが2人(100.0%)、自覚ありが0人(0.0%)という結果であった。(*割合は、子どもの有無・人数の%を表記)
図表4.子どもの有無(数)別月経関連症状有無

3――月経関連症状の自覚有無に影響する要因分析

3――月経関連症状の自覚有無に影響する要因分析

続いて、月経関連症状の自覚有無に影響を与える因子を探索するため、多変量解析によるロジスティック回帰分析5を実施した。

従属変数は、月経関連症状の自覚有無(自覚なし:0、自覚あり:1)とおいて、独立変数には、年代(39歳以下:0、40歳以上:1)、職業(正規職:0、非正規:1)、最終学歴(高専以上:0、高卒以下:1)、BMI(標準~肥満:0、痩せ:1)、運動習慣(あり:0、なし:1)、朝食欠食(欠食なし:0、欠食あり:1)、喫煙習慣(なし:0、あり:1)、飲酒習慣(なし:0、あり:1)、子どもの有無(子ども有り:0、子ども無し:1)を強制投入した。

尚、これらの独立変数は、先行研究等において、月経関連症状との関連性が示されている要因を選定したものである。
 
5 多変量解析であるロジスティック解析とは、複数の要因から、ある事象(0、1をとる2値の結果)が発生する確率を推定する統計学的な手法のひとつである。詳細は、以下を参照のこと
 金明中 基礎研レポート「統計分析を理解しよう-ロジスティック回帰分析の概要-」(2019年7月19日)
Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・高齢社会・健康・医療・ヘルスケア

経歴
  • 【職歴】
     2012年 東大阪市 入庁(保健師)
     2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了
         (看護学修士)
     2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
     2019年~大阪市立大学大学院 看護学研究科 研究員(現:大阪公立大学 研究員)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【月経関連症状の自覚に影響する要因とは?-学歴や喫煙・朝食欠食習慣、出産経験が有意に影響、若年期での受診行動の促進や生活習慣を大事に-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

月経関連症状の自覚に影響する要因とは?-学歴や喫煙・朝食欠食習慣、出産経験が有意に影響、若年期での受診行動の促進や生活習慣を大事に-のレポート Topへ