2023年08月14日

中国本土旅行者がコロナ前水準に戻るのはいつか?

三尾 幸吉郎

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1――中国本土旅行者の動向

中国政府は昨年末、新型コロナ対策を感染予防から重症化防止へ重点を移し、事実上「ゼロコロナ政策」を卒業して「ウィズコロナ政策」に舵を切った。年明け以降も各地で感染爆発が発生し死亡者も少なくなかった模様ではあるが、人の移動(人流)は持ち直し、国内旅行をする人も増えてきた。実際、国内航空旅客数の推移を見ると(図表-1)、今年4月にコロナ前(2019年の同じ月)の水準を上回り、その後も増加傾向を維持している。そして日本を訪れる人も増え始め、昨年は通期で19万人に満たなかった旅行者数が、今年は上半期だけでその3倍の59万人に達している(図表-2)。
(図表-1)中国の国内航空旅客の推移/(図表-2)訪日外客数の推移
但し、他国・地域と比べると中国本土からの旅行者の動きは鈍い。今年上半期の訪日外客数は1071万人と、コロナ前(2019年上半期)の水準の約65%まで回復した。しかし、国・地域別の内訳を見ると(図表-3)、中国本土のシェアは5.6%とコロナ前(27.2%)に遠く及ばない。韓国がトップで、米国もコロナ前(2019年上半期)の水準を超え、中国語圏では台湾・香港が中国本土を上回った。
(図表-3)訪日外客数(2019年上半期)/訪日外客数(2023年上半期)

2――コロナ前水準に戻るのは2024年夏と予想

2――コロナ前水準に戻るのは2024年夏と予想

(図表-4)海外団体ツアーの再開 このように他国・地域からの訪日旅行者と比べて動きが鈍かった中国本土だが、今後は増加ピッチを速める可能性が高い。日中両国の航空会社が直行便を増やしているのに加えて、中国政府が日本向け団体旅行ツアーの再開を通知したからである。中国文化観光部は8月10日、中国国民を対象とした海外団体旅行ツアーと「航空券+ホテル」サービスを再開する国・地域の一覧(第3弾)を、全国の旅行代理店・オンライン旅行会社に対して通知した。そこには日本の名前も含まれている(図表-4)。
中国本土旅行者は団体旅行ツアーを利用することが多い。日本の国土交通省観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査」を見ると(図表-5)、コロナ前(2019年)に訪日した中国本土旅行者のうち27.1%が団体ツアーに参加していた。したがって日本向け団体旅行ツアーが再開されれば、中国本土旅行者の増加ピッチはスピードアップするだろう。また、先行事例として第1弾(今年2月)で団体旅行ツアーが再開されたタイの動向を見ると(図表-6)、中国本土旅行者の戻りは日本よりも早いことが分かる。
 
(図表-5)旅行手配方法(2019年)/(図表-6)中国本土からの旅行者の推移
さらに足元の円安・元高もフォローの風となりそうだ。人民元レートの推移を見ると(図表-7)、足元の水準はコロナ前(2019年)より2割ほど円安・元高となっており、中国本土旅行者から見ると韓国ウォンやタイバーツよりも割安感がある。日本とともに人気の高い韓国・タイはライバルだけに、中国本土旅行者が旅行先として日本を選択する誘因となるだろう。中国本土旅行者の動きはこれまで鈍く、コロナ前(2019年)の水準に戻るのは2024年末頃と見ていたが、日本向け団体旅行ツアーの再開で2024年夏に前倒しになる可能性が高くなった(図表-8)。
(図表-7)人民元レート/(図表-8)中国本土からの訪日外客数
 
 

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(2023年08月14日「基礎研レター」)

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