コラム
2023年08月07日

2023年7月投資部門別売買動向~海外投資家は4カ月連続で買い越しも4~5月と比較して小規模に~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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日経平均株価は、7月3日に日銀短観を好感、企業の景況感改善したことから3万3,753円と年初来高値を更新した。その後は、高値警戒感や米国の金融引締め長期化懸念による軟調な米国株を受け下落し、7月12日には3万1,943円と3万2,000円を下回った。ただ、7月12日夜に発表された米消費者物価指数が予想を下回ったことから、米国の金融引き締め懸念が和らぎ、日経平均株価は7月13日に3万2,419円まで反発した。それからしばらくは、中央銀行の金融政策決定会合を控え方向感のない展開が続いた。米FOMCを波乱なく通過したことで、日経平均株価は7月27日に3万2,891円まで上昇した。7月28日は日銀の金融政策決定会合でYCCの運用柔軟化が発表され、3万2,759円まで下落したものの、月末は反発し3万3,172円で終えた。7月はこのように日経平均株価が推移するなか、海外投資家、個人が買い越す一方で、信託銀行が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年7月(7月3日~7月28日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で7,389億円の買い越しと、6月と比べてやや減少したが最大の買い越し部門であった。

特に、7月第2週(7月10日~14日)は8,816億円買い越しとなった。7月12日夜に発表された米消費者物価指数(CPI)が前年同月比3.0%と前月の4.0%から大幅に減速し、市場予想の3.1%も下回ったことから、月初から高まっていた米国の金融引締め長期化懸念が和らぎ、短期資金が多い先物中心に買われた。ただし、7月第1週(7月3日~7日)、第3週(7月18~21日)はどちらも買い越し額は約500億円と小幅であり、7月第4週(7月24~28日)は売り越しに転じるなど、4~5月のような大幅な買い越しは6月第1週で止まったことが改めて確認される。また、個人も現物と先物の合計で5,160億円の買い越しと4カ月ぶりの買い越しとなった。
図表2 海外投資家は4カ月連続買い越しも、4~5月ほどの勢いはなし
一方で、信託銀行は、現物と先物の合計で1兆7,325億円の売り越しと、7月最大の売り越し部門であった。株価指数が上昇するなかで、年金基金などが資産別の保有比率を維持するためにリバランスを実施する中、信託銀行経由で株式を売却している様子で、4カ月連続の売り越しだった。7月は、特に第2週(7月10日~14日)は1兆1,641億円の大幅売り越しとなった。年金基金等のリバランス以外にも、上場投資信託(ETF)の分配金捻出のための売りが集中したことが背景にあると思われる。
図表3 信託銀行は4カ月連続の売り越し
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年08月07日「研究員の眼」)

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