2023年07月27日

パワーカップル世帯の動向(2)生活基盤の状況-小学生の子を持つ30・40代、DINKS40・50代、大企業勤務夫婦、4割が金融資産4千万円以上

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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1――はじめに~実はDEWKSが約6割のパワーカップル、その生活基盤の状況は?

現在のところ、夫婦ともに年収700万円以上のパワーカップル世帯は共働き世帯の約2%にとどまる1。しかし、仕事と家庭の両立環境が整備され、男女とも若い世代ほど価値観が変容する中で、パワーカップルは増加傾向にある(2022年で37万世帯)。また、パワーカップルはDINKSとの印象が強いかもしれないが約6割に子どもがおり、データを丁寧に見ると印象と違う部分もあるようだ。

前稿では政府統計を用いて、パワーカップル世帯数やその内訳、夫婦の収入の状況などを捉えたが、本稿と次稿ではニッセイ基礎研究所の調査2を用いて、パワーカップルの年代やライフステージ、子の人数、職業、居住形態、金融資産といった生活基盤の状況について見ていきたい。ただし、データの制約上、配偶者の年収条件を設定できないため、便宜上、本稿ではパワーカップルを「共働き夫婦で妻の年収700万円以上、世帯年収1,000万円以上3」とし、妻の収入階級による違いを捉える。よって、冒頭に示したパワーカップルの定義とは異なってしまうのだが、前稿で示した通り、夫婦の年収は比例関係にあるため、パワーカップルの傾向と近しい状況が得られると考えている。
 
1 久我尚子「パワーカップル世帯の動向(1)-コロナ禍でも引き続き増加傾向、子育て世帯が約6割」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2023/7/13)
2 ニッセイ基礎研究所「生命保険マーケット調査」、調査時期は2022年11月17日~12月2日、調査対象は20~69歳、インターネット調査、有効回答数7,359(本稿の分析対象は969)、株式会社日経リサーチのモニターを利用。
3 データの制約上、世帯年収の設定上限が1,000万円までのため、本来の定義より低く抑えられている。

2――生活基盤の状況

2――生活基盤の状況~小学生の親やDINKSなど、大企業勤務、金融資産4千万円以上が4割

1年代やライフステージ~小学生の子を持つ30・40代、DINKSの40・50代、独立子を持つ50・60代、子どもは2人以上が7割弱で一般的な共働き世帯より多め、世帯主妻が約4割
まず、20~60歳代の共働き世帯の妻の年代を見ると、全体で最も多いのは40歳代(29.6%)であり、僅差で次いで50歳代(28.4%)、30歳代(20.7%)と続く(図表1)。また、パワーカップルを含む妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)で最多は40歳代(35.8%で全体より+6.2%pt)で、次いで50歳代(26.4%で同▲2.0%pt)、30歳代(24.5%で同3.8%pt)と続き、30・40歳代(60.3%)が全体(50.3%)と比べて多い傾向がある(+10.0%pt)。
図表1 共働き妻の年収階級別に見た年代 なお、妻の年収700万円未満では、年収が低い方が比較的年齢が高く(50歳以上が全体では41.5%だが年収300万円未満では48.4%で+6.9%pt)、年収が比較的高い方が若い年代が多い傾向がある(20・30歳代が全体では28.9%だが年収300~700万円未満では41.4%で+12.5%pt)。

これは、M字カーブ問題で指摘されてきたように、これまでは出産や子育てを機に一旦離職し、パートタイムの仕事等で再就職する女性が多かったが、近年の「女性の活躍推進」政策等の効果によって、若い世代ほど育児休業や時間短縮勤務制度等を活用しながら、賃金水準の高い正規雇用の仕事を継続する女性が増えているためだろう。
図表2 共働き妻の年収階級別に見たライフステージ また、ライフステージについては、全体で最多は結婚(31.7%)で、次いで末子独立(13.1%)、第一子小学校入学(10.0%)と続く(図表2)。

妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)で最多は結婚(32.1%)で、次いで第一子小学校入学(24.5%)、第一子高校入学と第一子大学入学、第一子独立(いずれも7.5%)と続き、全体と比べると、第一子小学校入学(+14.5%pt)や第一子誕生から大学入学までの子育て世帯(49.0%で全体37.5%より+11.5%pt)が多い。

なお、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では、ライフステージが結婚では40歳代や50歳代がそれぞれ約3割を、第一子小学校入学では40歳代が約6割、30歳代が約3割を、第一子独立以降(18.9%)では50歳代が約6割、60歳代が約3割を占めて多くなっている(図表略)。
図表3 共働き妻の年収階級別に見た扶養している子の数(同居している子ありのみ) つまり、パワーカップルの妻は、小学生の子を持つ30・40歳代(本稿で見るパワーカップル妻全体の2割強)、DINKSの40・50歳代(同約2割)、独立した子を持つ50・60歳代(同2割弱)などが多い様子がうかがえる。

なお、子と同居している共働き世帯(51.9%)に対して、扶養している子の人数をたずねたところ、最多は2人(41.0%)で、次いで1人(35.4%)と続き、両者で8割弱を占める(図表3)。
図表4 共働き妻の年収階級別に見た世帯主との関係 妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも最多は2人(46.9%で全体より+5.9%pt)で、次いで1人(25.0%で同▲15.4%pt)が続く。なお、2人以上とすると、全体(50.2%)と比べて、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)(65.6%で+15.6%pt)で多いことから、パワーカップルは一般的な共働き世帯と比べて子どもの数が多い様子がうかがえる。

世帯主との関係については、全体では圧倒的に世帯主の配偶者(89.5%)が多い(図表4)。また、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)でも最多は世帯主の配偶者(58.5%で全体より▲31.0%pt)だが、世帯主本人(39.6%で+31.2%pt)が約4割を占めて多い。
2本人や配偶者の仕事~大企業勤務の正規雇用者夫婦が半数以上、妻が公務員や役員も1割程度
本人の職業については、全体で最多はパート・アルバイト(44.7%)で、次いで正規雇用者(32.2%)が続き、両者で約8割を占める(図表5(a))。妻が高年収であるほど正規雇用者や役員が増える傾向があり、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では圧倒的に正規雇用者(64.2%で全体より+19.5%pt)が多く、次いで公務員(13.2%で同+9.5%pt)、役員(9.4%で同+7.7%pt)と自営業・自由業(9.4%で同+0.8%pt)が続く。つまり、パワーカップルの妻は約8割が正規雇用者、約1割が役員ということになる(本稿では夫婦ともに年収700万円以上との従来の定義と比べてやや幅広な範囲で見ているために実際にはもう少し多いことが予想される)。

なお、自営業・自由業とパート・アルバイト以外に対して、勤務先の従業員規模をたずねたところ、全体で最多は100人未満(35.9%)で、次いで100人~1,000人未満(35.1%)、1,000人以上(29.0%)と続き、従業員規模が小さいほど多い傾向があるが、おおむね3分の1ずつを占める(図表5(b))。一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では、逆に規模が大きいほど多い傾向があり、過半数が1,000人以上(53.7%で全体より+24.7%pt)で、次いで100人以上~1,000人未満(34.1%で▲1.0%pt)、100人未満(12.2%で同▲23.7%pt)と続く。

つまり、パワーカップルの妻は一般的な共働き世帯と比べて従業員規模の大きな組織で働いている傾向が強く、半数以上は従業員規模1,000人以上の組織に勤務している。
図表5 共働き妻の年収階級別に見た職業や勤務先の従業員規模
配偶者の職業については、妻とは異なり、全体では圧倒的に正規雇用者(62.6%)が多く、次いで自営業・自由業(11.8%)が続く(図表6(a))。一方、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では、妻と同様、全体と比べて正規雇用者(71.7%で全体より+9.1%pt)や役員(15.1%)で全体5.4%より+9.7%pt)が多い傾向がある。なお、当該層では公務員が0%となっているが、サンプル数が必ずしも多くないことも考慮すべきだろう。

また、配偶者の勤務先の従業員規模については、妻と同様、全体ではそれぞれの区分が約3分の1ずつを占めるが、妻の年収700万円以上(かつ世帯年収1,000万円以上)では規模が大きいほど多い傾向があり、約半数が1,000人以上(46.9%で全体32.3%より+14.6%pt)である。

つまり、パワーカップルの夫は約7割が正規雇用者、約15%が役員、そして、約半数が従業員規模1,000人以上の組織勤務ということになる(前述同様、実際はもう少し多い)。

また、パワーカップルの夫婦を比べると、妻の方が職業は公務員や自営業・自由業が多く、従業員規模の大きな組織で勤務している傾向があり、雇用環境の安定性や働き方の柔軟性を重視する妻が夫と比べると一定程度多い様子がうかがえる。
図表6 共働き妻の年収階級別に見た配偶者の仕事の状況
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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