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2022年度 生命保険会社決算の概要
保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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利差益については、平均予定利率はわずかながら低下し、基礎利回りは近年になく大きく低下したので、利差益は941億円と大幅に減少している。危険差と費差の合計は減少しているが、これらを合計した基礎利益は1,923億円と減少した。
かんぽ生命の資産運用は、有価証券については、国債・地方債・社債がほとんどを占めており、中でも国債の構成比が有価証券全体の74%となっている(前年度は70%)。株式への投資は、もともとほぼゼロであったものが、近年構成比を高めているが、まだ小さい。こうした点は、他の伝統的な大手中堅生保とは異なっており、安全性を重視した運用ポートフォリオとなっている(一方、9社計では、有価証券中の国債の構成比は近年40%程度)。
そうしたこともあり、基礎利回りが低い反面、ソルベンシー・マージン比率については、2021年度は1,003.7%と若干低下したものの高水準である(前年度は1,042.4%)。こうした高水準は、リスク性資産の構成割合が従来から低いことに加え、内部留保が厚いことに起因する。例えば、民営化前の旧簡易保険契約(貯金・簡易生命保険管理機構からかんぽ生命が受再している形態)を含め約1.7兆円の危険準備金を保有している。かんぽ生命を除く民間生保40社の合計額が、ここ数年増加してきてはいても5.6兆円程度であることからも、水準の厚さがうかがえる。また逆ざやに備えるための追加責任準備金が累計で5.3兆円と、引き続き厚い水準にある。
海外の金利上昇により債券価格が下落したということだが、そのことは、外貨建保険の加入に関しては好ましい状況であり販売も好調であることから、金利為替等経済環境の動向次第ではあるが、新規資金の配分でいえば今後もさらに増加していくのではないかと予想される。
外貨建保険については、健全性確保のため、販売量の多い米ドルとオーストラリア・ドル建の商品について、2022年度から新たに標準責任準備金の対象となり、販売商品の予定利率より低い標準利率で計算された(さらに多額の)責任準備金の積立が法令上必須となった。
会社によっては、この改定による責任準備金積立負担による利益の圧迫ないしは減少が大きかったところもあるようだ。外貨建商品は現在販売の中心にあるが、毎年の決算でこうした負担に耐えられる内部留保が求められるようになっている。
ヘッジコスト815億円を、キャピタル損から移して、基礎利益(利差益)に負担させたこと
投信解約益1,276億円を、利差益からキャピタル益に移動させたこと
有価証券償還益の為替変動部分(プラス)1,154億円をキャピタル益に移動させたこと
による。
また2022年度は、新たに負担となったヘッジコスト負担がさらに増加し、基礎利益(利差益)を押し下げた。それでもヘッジコストをかけてでも獲得した利息収入の増加や、予定利率負担の減少により、減少金額は抑えられている。(逆にいうと、実質的には金利低下により利息配当金などが減少している、ともいえる。)
また、投信解約益と有価証券償還益の為替部分はさらに金額が増加しており、基礎利益からは外されたとはいえ、これはこれで収支上は好ましいことである。
なお、再保険に関わる収支については今回改定とはいうものの、既に基礎利益から除外していた会社が多く、「統一的な取り扱いを確認した」という実態であり、改定の影響はほぼ受けていない。
(2023年07月14日「基礎研レポート」)
03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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