2023年07月13日

ロシアの物価状況(23年6月)-前年比で3%台まで上昇

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比で3%台まで上昇

7月12日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(23年6月)】
前年同月比は3.25%、市場予想1(3.30%)より下振れ、前月(2.51%)から上昇(図表1)
前月比は0.37%、市場予想(0.50%)より下振れ、前月(0.31%)から上昇

【コア指数2(23年6月)】
前年同月比は2.44%、前月(2.12%)から上昇した(図表2)
前月比は0.49%、前月(0.52%)から低下した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前月比では食料品を除く伸び率が高い

6月のロシアのインフレ率は前年比で3.25%となり、4月の2.51%から上昇した。ベース効果で3月以降の伸び率が低下しているなか、5・6月と2か月連続で上昇したことになる。ただし、ロシア中銀のインフレ目標(4%)は下回った状態が続いている。

インフレ率を大分類別に見ると、6月の前年比伸び率は食料品が0.18%、財(非食料品)が0.99%、サービスが0.96%となっている。食料品は2か月連続のマイナスからプラスに転じた。財もやや伸び率を高めた。サービスはやや減速したが、2か月連続で2桁台の伸び率となっている。寄与度で見ると、サービスのみが全体の物価を押し上げている構図が続いている(図表1)。

6月の前月比伸び率は、総合指数で0.37%、コア指数で0.49%となった。前月に続き総合指数はコロナ禍前のペース程度で推移、コア指数の伸び率はやや高めという状況にある(例えば2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。大分類では食料品が▲0.01%、財(非食料品)が0.42%、サービスが0.83%となり、食料品以外がやや高めの伸び率となっている。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では、最新の7月10日時点の前週比で0.14%となり、コロナ禍前並みの上昇率にとどまっており、品目全体で見ると高いインフレ圧力は見られない(図表4)。
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、6月で10.2%となり、依然として10%を超える状況が続いている。過去に、前年比インフレ率が2-3%台だった17年後半や20年前半には期待インフレ率が1桁台であったが、今回は、当時ほどの期待インフレ率の低下が見られない(図表5)。
品目別の上昇率を見ると13(図表6)、6月は前年比で海外旅行サービス(40.61%)、その他サービス(19.67%)、旅客サービス(14.36%)の伸び率が高い一方、テレビ(▲21.45%)、通信機器(▲13.54%)、パスタ・穀物(▲12.26%)が大きく下落している。

前月比では、健康増進サービス(8.03%)、その他サービス(5.12%)、砂糖(4.62%)、旅客サービス(4.39%)の上昇率が相対的に大きい一方、卵(▲2.39%)、青果物(▲2.35%)、テレビ(▲2.13%)の下落率が相対的に大きかった。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(1.26%ポイント)、家庭サービス(0.30%ポイント)、旅客サービス(0.29%ポイント)、海外旅行サービス(0.29%ポイント)となった。一方、パスタ・穀物(▲0.14%ポイント)、通信機器(▲0.12%ポイント)、電化製品(▲0.10%ポイント)は前年比でのマイナス寄与が相対的に大きい。

一方、前月比上昇率の寄与では肉製品(約0.10%ポイント)、その他サービス(約0.08%ポイント)、ガソリン(約0.07%ポイント)、乗用車(約0.06%ポイント)の押し上げ寄与が大きく、青果物(約▲0.10%ポイント)の押し下げ寄与が大きかった。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
13 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)を記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年07月13日「経済・金融フラッシュ」)

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