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2023年07月03日
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4. 売上・利益計画: 23年度収益は上方修正も、引き続き減益計画
2022年度収益計画(実績・全規模全産業)は、売上高が前年比8.7%増(前回は8.1%増)、経常利益が同16.2%増(前回は7.9%増)と、利益を中心に上方修正され、増収増益で着地した。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートし、6月調査で前年度分の上方修正などを受けて伸び率がさらに下方修正された後は、(景気が想定外に下振れた場合を除き)実績が判明するにつれて上方修正される傾向が強い。今回も同様のパターンとなった。
原燃料価格の高止まりや海外経済の減速などは収益の重荷になったものの、国内の経済活動再開の流れが継続したや価格転嫁が一定進んだことを受け、もともとの保守的ぎみであった想定よりも収益がやや上振れたとみられる。実際、利益計画の上方修正幅は非製造業が製造業を上回っている。また、想定為替レートがやや円安方向に修正されたことも輸出企業を中心に収益の上方修正要因となったと考えられる。
企業規模別では、大企業の経常利益の伸び率が前年比20.7%に達する一方で、中小企業では同3.9%に留まっており、中小企業における価格転嫁の難しさを反映している可能性がある。
2022年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は131.19円と、前回調査時点(130.65円)からやや円安方向へ修正されている。前回調査時点で、年度平均レートの実績(135.5円)と比べてかなり円高の水準に留まっていたため、実績に合わせる方向での修正が入った。
また、2023年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年比1.8%増(前回は1.1%増)、経常利益が5.8%減(前回は同2.6%減)となっている。経常利益については22年度の実績が大きく上方修正されているため、水準としては前回調査を上回っている。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートした後、6月調査では、比較対象となる前年度分の上方修正などを受けて、さらに伸び率がやや下方修正される傾向が強い。今回も同様のパターンとなった。また、インバウンドのさらなる回復などコロナ禍からの経済活動再開局面の継続が期待される一方で、欧米など海外経済の減速や原燃料価格の再上昇といった下振れリスクが残るため、とりあえず慎重な見通しで仮置きして様子見している企業も多いと推測される。
なお、2023年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は132.43円(上期132.60円、下期132.27円)と、前回(131.72円)からやや円安方向に修正されたが、足下の実勢(144円台)からはかなり円高水準となっている。前回以降、大きく円安が進んだが、短観の想定為替レートは修正に時間がかかる傾向があるうえ、輸出企業などでは保守的に円高気味の想定を据え置いているとみられる。今後もドル円レートが想定を上回れば、輸出企業を中心に収益計画の上方修正要因になり得る。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートし、6月調査で前年度分の上方修正などを受けて伸び率がさらに下方修正された後は、(景気が想定外に下振れた場合を除き)実績が判明するにつれて上方修正される傾向が強い。今回も同様のパターンとなった。
原燃料価格の高止まりや海外経済の減速などは収益の重荷になったものの、国内の経済活動再開の流れが継続したや価格転嫁が一定進んだことを受け、もともとの保守的ぎみであった想定よりも収益がやや上振れたとみられる。実際、利益計画の上方修正幅は非製造業が製造業を上回っている。また、想定為替レートがやや円安方向に修正されたことも輸出企業を中心に収益の上方修正要因となったと考えられる。
企業規模別では、大企業の経常利益の伸び率が前年比20.7%に達する一方で、中小企業では同3.9%に留まっており、中小企業における価格転嫁の難しさを反映している可能性がある。
2022年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は131.19円と、前回調査時点(130.65円)からやや円安方向へ修正されている。前回調査時点で、年度平均レートの実績(135.5円)と比べてかなり円高の水準に留まっていたため、実績に合わせる方向での修正が入った。
また、2023年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年比1.8%増(前回は1.1%増)、経常利益が5.8%減(前回は同2.6%減)となっている。経常利益については22年度の実績が大きく上方修正されているため、水準としては前回調査を上回っている。
例年、経常利益計画は初回の3月調査時点で保守的に見積もられ、前年比で小幅なマイナス圏でスタートした後、6月調査では、比較対象となる前年度分の上方修正などを受けて、さらに伸び率がやや下方修正される傾向が強い。今回も同様のパターンとなった。また、インバウンドのさらなる回復などコロナ禍からの経済活動再開局面の継続が期待される一方で、欧米など海外経済の減速や原燃料価格の再上昇といった下振れリスクが残るため、とりあえず慎重な見通しで仮置きして様子見している企業も多いと推測される。
なお、2023年度の想定ドル円レート(全規模・全産業ベース)は132.43円(上期132.60円、下期132.27円)と、前回(131.72円)からやや円安方向に修正されたが、足下の実勢(144円台)からはかなり円高水準となっている。前回以降、大きく円安が進んだが、短観の想定為替レートは修正に時間がかかる傾向があるうえ、輸出企業などでは保守的に円高気味の想定を据え置いているとみられる。今後もドル円レートが想定を上回れば、輸出企業を中心に収益計画の上方修正要因になり得る。
5. 設備・雇用:設備投資計画は堅調維持、人手不足感には緩和の兆しなし
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断DIが▲4、雇用人員判断DIが▲35とそれぞれ3ポイントの低下が見込まれており、不足感がさらに強まる見通しになっている。雇用に関しては、上記のコロナ禍前ピークと並ぶほどの強い人手不足感が見込まれている。
この結果、「短観加重平均DI」も▲23.6と足元から3ポイント低下する見込みとなっている。
2022年度の設備投資計画(実績・全規模全産業)は、前年比9.2%増と6月調査(実績)としては2006年度(前年比9.4%増)以来の高い伸びで着地した。
なお、3月調査(実績見込み)からの修正幅は▲2.2%ポイントと例年5並みであった。もともと6月調査(実績)では大企業を中心に下方修正が入り、全体としても下方修正される傾向がある。
また、2023年度の設備投資計画(全規模全産業)は、2022年度実績比で11.8%増と前回3月調査(3.9%増)から大きく上方修正された。上方修正幅は7.9%ポイントと例年6をやや上回っており、6月調査時点での伸び率としても昨年度(14.1%)に次ぐ過去2番目の高水準となっている。
例年6月調査では年度計画が固まってきて投資額が上乗せされる傾向が強い。また、資材価格や人件費の上昇に伴う投資額の上振れ7が押し上げに働いた可能性もある。ただし、収益回復に伴う投資余力の改善、経済活動の再開、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築など設備投資の追い風は多く、実態としても堅調な投資意欲を反映していると言えるだろう。
なお、2022年度設備投資計画(全規模全産業で前年比9.2%増)は市場予想(QUICK 集計7.7%増、当社予想は7.6%増)を上回る結果だった。また、2023年度設備投資計画(全規模全産業で前年比11.8%増)も市場予想(QUICK 集計9.3%増、当社予想は10.7%増)を上回る結果だった。
2022年度のソフトウェア投資額(実績・全規模全産業)は前回(14.4%増)から下方修正されたものの、前年度比11.5%増と大幅な増額で着地した。また、2023年度の計画(全規模全産業)も2022年度比14.6%増と高い伸びが示されている。企業において、オンライン需要への対応や省力化等に向けた業務のIT化といったデジタル化が加速している証左とみられ、設備投資を合わせて前向きな動きと言える。
この結果、「短観加重平均DI」も▲23.6と足元から3ポイント低下する見込みとなっている。
2022年度の設備投資計画(実績・全規模全産業)は、前年比9.2%増と6月調査(実績)としては2006年度(前年比9.4%増)以来の高い伸びで着地した。
なお、3月調査(実績見込み)からの修正幅は▲2.2%ポイントと例年5並みであった。もともと6月調査(実績)では大企業を中心に下方修正が入り、全体としても下方修正される傾向がある。
また、2023年度の設備投資計画(全規模全産業)は、2022年度実績比で11.8%増と前回3月調査(3.9%増)から大きく上方修正された。上方修正幅は7.9%ポイントと例年6をやや上回っており、6月調査時点での伸び率としても昨年度(14.1%)に次ぐ過去2番目の高水準となっている。
例年6月調査では年度計画が固まってきて投資額が上乗せされる傾向が強い。また、資材価格や人件費の上昇に伴う投資額の上振れ7が押し上げに働いた可能性もある。ただし、収益回復に伴う投資余力の改善、経済活動の再開、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築など設備投資の追い風は多く、実態としても堅調な投資意欲を反映していると言えるだろう。
なお、2022年度設備投資計画(全規模全産業で前年比9.2%増)は市場予想(QUICK 集計7.7%増、当社予想は7.6%増)を上回る結果だった。また、2023年度設備投資計画(全規模全産業で前年比11.8%増)も市場予想(QUICK 集計9.3%増、当社予想は10.7%増)を上回る結果だった。
2022年度のソフトウェア投資額(実績・全規模全産業)は前回(14.4%増)から下方修正されたものの、前年度比11.5%増と大幅な増額で着地した。また、2023年度の計画(全規模全産業)も2022年度比14.6%増と高い伸びが示されている。企業において、オンライン需要への対応や省力化等に向けた業務のIT化といったデジタル化が加速している証左とみられ、設備投資を合わせて前向きな動きと言える。
5 2012~21年度における6月調査での修正幅は平均で▲1.9%ポイント
6 2013~22年度における6月調査での修正幅は平均で+6.3%ポイント
7 GDP統計における設備投資デフレーター(四半期次)は昨年以降、前年比3~4%台で推移。
6. 企業金融:企業の資金繰りはやや改善
企業の資金繰り判断DI(「楽である」-「苦しい」)は大企業が13、中小企業が8とそれぞれ前回から2ポイント、1ポイントの上昇となった。
企業サイドから見た金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」-「厳しい」)は、大企業・中小企業ともに15と前回から変わらなかった。
これまで、企業の金融環境に絡む指標は緩やかにタイト化方向へ動いてきたが、今回はタイト化が一服している。
資金繰りに関しては、ゼロゼロ融資などコロナ禍で膨らんだ借入の返済や、原材料コストの上昇に伴う運転資金の増加、人手不足に伴う一部人件費の増加が資金繰りの圧迫要因になっていると考えられるが、経済活動の再開や価格転嫁の進展に伴う企業収益の改善がキャッシュフローの回復を通じて資金繰りを支えたと考えられる。
企業サイドから見た金融機関の貸出態度判断DI(「緩い」-「厳しい」)は、大企業・中小企業ともに15と前回から変わらなかった。
これまで、企業の金融環境に絡む指標は緩やかにタイト化方向へ動いてきたが、今回はタイト化が一服している。
資金繰りに関しては、ゼロゼロ融資などコロナ禍で膨らんだ借入の返済や、原材料コストの上昇に伴う運転資金の増加、人手不足に伴う一部人件費の増加が資金繰りの圧迫要因になっていると考えられるが、経済活動の再開や価格転嫁の進展に伴う企業収益の改善がキャッシュフローの回復を通じて資金繰りを支えたと考えられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年07月03日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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