2023年06月22日

日銀短観(6月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは5ポイント上昇の6と予想、物価関連項目に注目

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 6月短観では、自動車領域での供給制約緩和や原材料高の一服などを追い風として大企業製造業の景況感が改善に転じると予想。自動車は産業の裾野が広いだけに、その生産回復は幅広い業種に好影響をもたらす。一方、非製造業については、新型コロナの5類への移行等に伴うサービス需要の持ち直しやインバウンド需要の回復を受けて、景況感の改善基調が維持されていると見込んでいる。
     
  2. 先行きの景況感については総じて小幅な悪化を予想。製造業では利上げに伴う欧米経済の悪化や中国経済の回復の遅れ、米中対立、原材料価格の再上昇などへの警戒感が重荷になる。非製造業でも、原材料価格の再上昇に加え、物価高に伴う国内消費の下振れや人手不足の深刻化などへの警戒感から、先行きに対する慎重な見方が台頭しやすいだろう。
     
  3. 23年度の設備投資計画(全規模)は、前年比10.7%増と前回調査から大きく上方修正されると予想。例年6月調査では投資額が上乗せされる傾向が強いうえ、資材価格や人件費の上昇を受けて、投資額が嵩みやすくなっている面も押し上げ材料になる 。ただし、実態としても、投資余力の改善、経済活動の再開、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を背景とした堅調な投資意欲を反映したものと言えそうだ。
     
  4. 今回の短観において、特に注目されるのは二つの物価関連項目だ。国内でも物価上昇率が高止まっているが、まず、「販売価格判断DI」において、先行き(3か月後)にかけてどの程度の販売価格引き上げが見込まれているのかという点は、当面の物価上昇率の動きを見通すうえで重要な手がかりとなる。また、企業の予想物価上昇率である「企業の物価見通し」における中長期の物価見通しは企業の賃金・価格設定に与える影響が大きいと考えられるため、今後の物価上昇の持続性を考えるうえで注目される。

 
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

6月短観予測:製造業の景況感が底入れ、非製造業は堅調維持
  ・大企業製造業の景況感は7四半期ぶりに改善へ
  ・設備投資計画は堅調を維持
  ・注目ポイント:販売価格判断DIと企業の物価見通し
  ・政策修正を促す材料になるか
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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