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- スチュワードシップ活動の実質化とアセット・オーナーの役割
2023年07月05日
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両コードの策定から8~9年が経過し、その間にそれぞれ2度の改訂を経た現在においても、両コードの普及・定着状況を確認し、更なる充実に向けて必要な施策を議論・提言する会議が継続的に開催されている。今年4月に開催された会議では、取組むべき項目案の一つとして「スチュワードシップ活動の実質化」が示された。一部の機関投資家によるスチュワードシップ活動が形式的な活動にとどまり、責任を適切に果たせていないのではないかという指摘・問題への対応である。
投資先企業との建設的な対話や適切な議決権行使といったスチュワードシップ活動を担うのは、アセット・マネージャーであるが、アセット・オーナーである年金基金等は無関係とは言えない。形式的な活動にとどまる要因として、必要なリソース(人材、情報、時間)の不足やインセンティブの欠如が挙げられる。必要なリソースを確保するためのコストを最終的かつ実質的に負担するのは、運用報酬を支払うアセット・オーナーである。また、アセット・オーナーは、スチュワードシップ活動の適切性や実効性等も踏まえて委託運用機関を選択することにより、実質的なスチュワードシップ活動に取組むインセンティブを与えることも可能だ。
日本株投資残高の約7割(投資顧問業協会のアンケート調査結果)を占めるパッシブファンドに対しても、積極的に中長期的視点に立った対話や議決権行使に取組み、市場全体のリターン拡大に寄与することが期待されている。しかし、パッシブファンドにおけるスチュワードシップ活動状況のモニタリング・評価はもちろん、適切なコストの負担も簡単ではない。
実効的なスチュワードシップ活動に取組み、市場全体のリターン拡大に大きく貢献しても、パッシブファンドが中長期的に市場を上回る実績を生むことはパッシブ運用の仕組み上ない。このため、実績データが参考になるのは、パッシブファンドとしての適格性評価くらいである。もとよりパッシブファンドは差別化が難しく、投資先企業との対話の回数やエンゲージメント従事者の数を考慮したところで、形式的なモニタリング・評価の域を超えない。
運用報酬の低さに偏った委託先選択はフリーライダーの謗りを免れないとは言え、ファンド運営の非効率さに起因し割高な運用報酬を支払う必要はない。運用報酬の内訳の開示を求めてもよいが、スチュワードシップ活動のコストは複雑である。ファンド毎の活動は非効率で、機関投資家が協働して効率的に対話を行う取組もあるので、単純に比較できない。ファンド間のコスト分担やスチュワードシップ活動の効率化に対する考え方を確認し、スチュワードシップ活動に対する真摯さを評価する等出来ることはあるが簡単ではない。
アセット・マネージャーに真摯な取組を求めるなら、アセット・オーナー自らもスチュワードシップ責任に照らして従来の運用体制や慣習の適切性を検証する等、スチュワードシップ責任の果たし方について真摯に検討するべきだろう。株式型のパッシブファンドには貸株有と貸株無があり、国内株式型パッシブファンドにおいては、品貸料が期待できる貸株有が約7割を占めるが、2020年を境に貸株有が7割強から7割弱に転じている。2019年12月に、GPIFがスチュワードシップ責任との整合性に対する懸念等を理由に貸株の停止を公表している。GPIFは公表以前から国内株式では貸株を採用していないので、直接的な影響はないはずだが、アセット・オーナーによるSSCの受入れが進んだ時期でもあり、間接的に影響を及ぼした可能性はある。議決権行使にとどまらず、貸株による議決権数減少の是非も含め、スチュワードシップ責任をどう果たすべきか、再検討してはどうだろうか。
投資先企業との建設的な対話や適切な議決権行使といったスチュワードシップ活動を担うのは、アセット・マネージャーであるが、アセット・オーナーである年金基金等は無関係とは言えない。形式的な活動にとどまる要因として、必要なリソース(人材、情報、時間)の不足やインセンティブの欠如が挙げられる。必要なリソースを確保するためのコストを最終的かつ実質的に負担するのは、運用報酬を支払うアセット・オーナーである。また、アセット・オーナーは、スチュワードシップ活動の適切性や実効性等も踏まえて委託運用機関を選択することにより、実質的なスチュワードシップ活動に取組むインセンティブを与えることも可能だ。
日本株投資残高の約7割(投資顧問業協会のアンケート調査結果)を占めるパッシブファンドに対しても、積極的に中長期的視点に立った対話や議決権行使に取組み、市場全体のリターン拡大に寄与することが期待されている。しかし、パッシブファンドにおけるスチュワードシップ活動状況のモニタリング・評価はもちろん、適切なコストの負担も簡単ではない。
実効的なスチュワードシップ活動に取組み、市場全体のリターン拡大に大きく貢献しても、パッシブファンドが中長期的に市場を上回る実績を生むことはパッシブ運用の仕組み上ない。このため、実績データが参考になるのは、パッシブファンドとしての適格性評価くらいである。もとよりパッシブファンドは差別化が難しく、投資先企業との対話の回数やエンゲージメント従事者の数を考慮したところで、形式的なモニタリング・評価の域を超えない。
運用報酬の低さに偏った委託先選択はフリーライダーの謗りを免れないとは言え、ファンド運営の非効率さに起因し割高な運用報酬を支払う必要はない。運用報酬の内訳の開示を求めてもよいが、スチュワードシップ活動のコストは複雑である。ファンド毎の活動は非効率で、機関投資家が協働して効率的に対話を行う取組もあるので、単純に比較できない。ファンド間のコスト分担やスチュワードシップ活動の効率化に対する考え方を確認し、スチュワードシップ活動に対する真摯さを評価する等出来ることはあるが簡単ではない。
アセット・マネージャーに真摯な取組を求めるなら、アセット・オーナー自らもスチュワードシップ責任に照らして従来の運用体制や慣習の適切性を検証する等、スチュワードシップ責任の果たし方について真摯に検討するべきだろう。株式型のパッシブファンドには貸株有と貸株無があり、国内株式型パッシブファンドにおいては、品貸料が期待できる貸株有が約7割を占めるが、2020年を境に貸株有が7割強から7割弱に転じている。2019年12月に、GPIFがスチュワードシップ責任との整合性に対する懸念等を理由に貸株の停止を公表している。GPIFは公表以前から国内株式では貸株を採用していないので、直接的な影響はないはずだが、アセット・オーナーによるSSCの受入れが進んだ時期でもあり、間接的に影響を及ぼした可能性はある。議決権行使にとどまらず、貸株による議決権数減少の是非も含め、スチュワードシップ責任をどう果たすべきか、再検討してはどうだろうか。
(2023年07月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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経歴
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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【スチュワードシップ活動の実質化とアセット・オーナーの役割】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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