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- 米国における企業年金の財政状態をみる:金利上昇が与えた変化
図表1の企業年金の財政状態の状況は、アメリカにおける確定給付企業年金の資産額上位100社の法定開示のデータに基づいたものである。2022年の予測給付債務(Projected Benefit Obligation:以下、PBO)は、前年比520.8百万ドル減の1,327.5百万ドル、年金資産も同じく減少し、前年比461.5百万ドル減の1,318.8百万ドルとなった。PBO、年金資産ともに縮小していることが分かる。「PBO減少額>年金資産減少額」であったことから、積立不足額は59.3百万ドル減の8.7百万ドルとなった。PBOを年金資産で割った積立率は、前年比3.0%増の99.3%となっており、100%に近い数値にまで上昇した。
図表2は、3社の企業年金の財政状態である。基本的に図表1で確認した通りの状況が確認できる。各社とも、PBO、年金資産が前年と比較して大幅に減少している。ただし、傾向には差がある。「PBO減少額>年金資産減少額」なのは、GE、GMの2社で、Fordは「PBO減少額<年金資産減少額」となっている。その結果、積立不足額(超過額)については、GEは前年比942百万ドル減の3,141百万ドル、GMは前年比371百万ドル減で84百万ドルの積立超過となった一方で、Fordの積立超過は前年比966百万ドル減の55百万ドルとなった。
積立率は、GEが前年比0.25%低下の93.47%、GMが前年比0.66%上昇の100.19%、Fordが2.1%低下の100.17%となり、GMとFordは100%を超えている。積立率が低下したGEについても、積立不足額は前年と比べて減少しているため、貸借対照表に計上される負債額は小さくなった。割引率をみると、GEは前年比2.59%上昇の5.53%、GMは前年比2.69%低下の5.47%、Fordが前年比2.60%上昇の5.51%ととなり、軒並み5.5%台まで引き上げている。こうした割引率の変更に伴うPBOの再計算の結果、2022年に大幅に債務が減少したことが分かる。
1 Milliman(2023) ,2023 Corporate Pension Funding Study.
https://www.milliman.com/en/insight/2023-corporate-pension-funding-study
3 Campbell, J. L., D.S. Dhaliwal, J.W.C. Schwartz "Financing Constraints and the Cost of Capital: Evidence from the Funding of Corporate Pension Plans,"The Review of Financial Studies,25(3), p.868-912.
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静岡県立大学 経営情報学部
上野 雄史
研究・専門分野
(2023年07月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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