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日本の子どもの性被害(2)-2022年の児童買春事犯等の被害児童は1400人超、被害の5~6割が高校生、室内や限定的な空間に注意!-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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1――はじめに
これらの事件を受けて、前稿では1 、子どもの性被害の定義や性被害後の身体的、精神的影響について整理し、児童買春・児童ポルノ禁止法や児童福祉法に違反した場合には懲罰と罰金の併科がある重罪であること、居住自治体の青少年保護条例を各自で確認する必要性を示した。
また、子どもの性被害に関する身体的影響では、性器周りの損傷に留まらず、長期的な言動を観察しケアする必要があること、精神的な影響では、日常生活や成人後の社会生活にも長期的な人生に影響を及ぼし兼ねないストレス障害等が生じる可能性があることなどをまとめた。
これら前稿での性被害の基礎知識を基に、本稿では、実際の子どもの性被害の被害児童人数や年次推移、罪種別の事犯の特徴などを分析する。
1 乾 愛 基礎研レター「日本の子どもの性被害(1)」(2023年5月26日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74890?site=nli
2――警察庁の罪種別子どもの性被害
また、児童買春事犯や淫行させる行為等と比べて、みだらな性行為等の被害人数は、2013年から2022年を通して大きな変動がなく千人前後で推移している。みだらな性行為の被害人数が減少しない理由について、後ほど学識別被害場所から考察する。
さらに、罪種別の2021年前年からの増減数をみると、淫行させる行為やみだらな性行為等の増減数は減少しているにも関わらず、児童買春事犯の被害児童の人数は、プラス14人(増減率+3.4%)と増加している。
みだらな性行為や淫行させるなどの強要する行為よりも、金銭を稼ぐために風営法に違反した店舗で働くことや、既に売買されている児童ポルノを購入し所持するなどの、18歳未満の者が無知ながらも自分の意思で選択した行為の結果、被害に陥りやすいことを示しているものと思われる。
2023年5月8日には、新型コロナウイルス感染症の位置づけが第5類へ移行したことに伴う社会活動の活性化により、被害児童の件数が増加する懸念がある。
続いて、児童買春事犯等における被害児童の被害場所について、図表3へ示した。
その結果、児童買春事犯等では、モーテルやラブホテルでの被害が249人(59%)と全被害児童数の6割を占めることが分かった。
また、淫行させる行為等では、住宅での被害が38人(48.7%)、みだらな性行為等でも住宅での被害が337人(35.0%)という結果が明らかとなった。
被害場所の被害総数別では、全体の1461人のうち、モーテルやラブホテルでの被害が569人(38.9%)と全体の4割近くを占めることが明らかとなった。
さらに、被害場所を事犯別にみると、全ての被害場所においてみだらな性行為等の事犯が最も多い被害人数を占めていることが明らかとなった。
被害場所が不明である者が1割を占める中で、被害場所が明確になっているものは、室内や個室などの限定的な空間で被害を受けていることが特徴的と言える。
前稿のレポートでも紹介したように、居住自治体では青少年保護条例が制定されており、青少年の夜間の外出禁止や、リスクのあるコンテンツの回避について定められている。教育関係者のみならず、子どもをもつ保護者も今一度居住自治体の条例について確認し対策を講じてほしい。
また、室内や限定的な空間においての性被害が認められることから、知り合いであってもついていかないことや、誘われた時に明確に断れるような術を身に着けることが重要となってくる。
2022年から導入された高等学校学習指導要領では2、「道徳教育」等での人間関係の構築の仕方や、再編された「情報」において、情報セキュリティーを含む基礎的な知識の獲得が必修となる。
犯罪に巻き込まれない倫理観の醸成や、適切な人間関係の結び方、リスクのあるネット情報のフィルタリングによる回避やアクセス制限などの知識がより重要となってくるだろう。
2 文部科学省 高等学校学習指導要領ポイント
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/1304427.htm
3――まとめ
その結果、2022年には1461人の子どもが性被害を被っており、2013年と比較すると全体的な被害人数は減少しているものの、児童買春事犯の被害人数が微増、みだらな性行為等の被害人数は千人前後で大きな変動がなく、コロナ明けの社会活動の活発化に伴う性犯罪被害の拡大には留意する必要がある。
また、被害児童の5割から6割は高校生であり、室内や限定的な空間における性被害が特徴的であることから、行動範囲が拡大した高校生においての情報モラルの知識習得や夜間外出禁止などの行動範囲の制限などのリスク回避は重要となってくるであろう。
本稿では、児童買春等の被害児童の実態を示したが、次稿では、さらに具体的に児童ポルノ事犯における被害状況や、SNSに起因する事犯についての特徴を分析する予定である。
(2023年05月29日「基礎研レター」)

03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
乾 愛のレポート
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