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- 2022年度自社株買い動向~自己株式の取得を行う理由と株価の関係~
2023年05月10日
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■設定金額、件数ともにコロナ禍前の水準を回復
自社株買いは例年、決算発表と合わせて設定されることが多く、特に本決算の発表が集中する4-6月に自社株買いが設定されやすい。2022年度も4-6月の設定金額及び設定件数が最も多かった。ここ数年は、2020年度は新型コロナの影響から先行き不透明感が強く1年を通して低調、2021年度は業績の底入れや前年度に低調だった反動から、年度後半である10月以降の自社株買い設定が増加した。2022年度はコロナ禍前の水準にほぼ戻ったといえよう。
■2022年度も自社株買いを株式市場は好感
自社株買い設定の発表は、株価には一般的にプラスに働くと考えられている。過去の集計では、自社株買いの設定を発表した企業の株価は、発表翌営業日にTOPIXを約2%超過し、その後は上昇した水準でほぼ横ばいに推移していた。
2022年度はどうであったか確認する。図表3は、2022年度に自社株買いの実施を設定した企業の株価推移をまとめたものである。自社株買い設定日を基準日(0日)として、自社株買い設定企業の対TOPIX超過収益率を単純平均している。
2022年度に自社株買いの設定を発表したTOPIX構成銘柄企業720社についても、発表翌営業日に平均で約2%対TOPIXで上昇し、その後も2~3%で推移した。過去の集計と同様に自社株買いの設定に対して、株価はポジティブに反応した様子である。
2022年度はどうであったか確認する。図表3は、2022年度に自社株買いの実施を設定した企業の株価推移をまとめたものである。自社株買い設定日を基準日(0日)として、自社株買い設定企業の対TOPIX超過収益率を単純平均している。
2022年度に自社株買いの設定を発表したTOPIX構成銘柄企業720社についても、発表翌営業日に平均で約2%対TOPIXで上昇し、その後も2~3%で推移した。過去の集計と同様に自社株買いの設定に対して、株価はポジティブに反応した様子である。
■自己株式の取得を行う理由と株価の関係は
取得理由に『株主還元』というワードが含まれていた企業438社(図表5②株主還元)の株価は、発表翌営業日から10営業日後までの間、全体720社(図表5①全体)を上回って推移した。対して、『株主還元』というワードが含まれていなかった企業282社(図表5③株主還元以外)の株価は、対TOPIXでポジティブな反応はしていたものの、発表翌営業日から10営業日後の間、①全体と②株主還元を下回って推移した。
自己株式の取得を行う理由に『株主還元』をあげた企業の約半数は、『資本効率の向上』も理由としてあげている。企業の経営者が自社の株価が割安であることや将来の業績への自信を示す「アナウンスメント効果」に加えて、自社株買いによるEPS(一株当たり利益)の増加や、ROE(自己資本利益率)上昇への期待感も高まることで、株式市場から特に好意的に評価されたと考えられる。
自己株式の取得を行う理由に『株主還元』をあげた企業の約半数は、『資本効率の向上』も理由としてあげている。企業の経営者が自社の株価が割安であることや将来の業績への自信を示す「アナウンスメント効果」に加えて、自社株買いによるEPS(一株当たり利益)の増加や、ROE(自己資本利益率)上昇への期待感も高まることで、株式市場から特に好意的に評価されたと考えられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年05月10日「基礎研レター」)

03-3512-1855
経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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