2023年05月01日

宿泊旅行統計調査2023年3月-日本人延べ宿泊者数は2ヵ月連続でコロナ禍前を上回り、外国人延べ宿泊者数は急回復

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 外国人延べ宿泊者数は急速に回復ペースを高めた

観光庁が4月28日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年3月の延べ宿泊者数は4,973万人泊(2月:4,114万人泊)となった。前年同月比は48.6%(2月:同76.7%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲2.8%(2月:同▲5.5%)と2ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。

2023年3月の日本人延べ宿泊者数は4,184万人泊(2月:3,521万人泊)となり、2019年同月比は0.5%(2月:同2.8%)と2ヵ月連続でコロナ禍前を上回った。1月10日以降、運用が再開された全国旅行支援の後押しを受けて日本人延べ宿泊者数は高い水準で推移している。

2023年3月の外国人延べ宿泊者数は789万人泊(2月:593万人泊)となり、2019年同月比は▲17.0%(2月:同▲36.1%)と2ヵ月ぶりにマイナス幅が縮小し、回復のペースが高まった。外国人延べ宿泊者数は2022年10月の水際対策緩和以降、回復傾向にある。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比/)宿泊施設タイプ別客室稼働率推移
2023年3月の客室稼働率は全体で55.5%(2月:同53.4%)、2019年同月差▲7.9%(2月:同▲8.5%)となり、先月からマイナス幅が縮小した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は37.4%、2019年同月差▲2.4%(2月:同▲4.6%)、リゾートホテルは53.8%、2019年同月差▲6.9%(2月:同▲7.7%)、ビジネスホテルは66.4%、2019年同月差▲10.8%(2月:同▲11.1%)、シティホテルは70.8%、2019年同月差▲10.2%(2月:同▲13.2%)、簡易宿所は22.6%、2019年同月差▲8.7%(2月:同▲9.8%)であった。2019年同月差では、すべてのタイプの宿泊施設でマイナス幅が縮小した。

2. 使用条件の撤廃でさらなる活用が期待される全国旅行支援

日本人延べ宿泊者数は、2ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。全国旅行支援が開始された2022年10月以降、日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準で推移しており、同制度が積極的に活用されていることが分かる。

全国旅行支援は2022年10月に運用が開始され、2023年1月10日以降は割引率を40%から20%へ下げて延長されている。割引上限額は交通付宿泊旅行の場合は一泊5,000円、それ以外の場合は3,000円、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円である。

また、当初の予定では3月末までの運用予定だったが、4月以降も割引率やクーポンの付与額などの変更なしで継続されている。ただし繁忙期にあたるゴールデンウイークは除外される。観光庁の見解では多くの都道府県で初夏ごろまでの実施が可能だという。

現在は、すべての都道府県でワクチンの3回接種証明書もしくは陰性証明書の提示が要件とされているが、5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられることに伴って、この要件は撤廃されることが発表された。これによって全国旅行支援のさらなる活用が期待される。引き続き全国旅行支援の後押しを受けて日本人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準で推移するだろう。
全国旅行支援の概要

3. 中国からの入国者が回復すれば、外国人宿泊者数はさらに回復していく

国籍別外国人延べ宿泊者数 外国人延べ宿泊者数は2022年10月11日に個人旅行の解禁、短期滞在のビザ免除再開、一日あたりの入国者数の上限の撤廃など水際対策が緩和されたことで急回復してきた。しかし、2023年入り後は回復のペースが鈍化した。その一因は中国人観光客が回復していないことである。中国人観光客はコロナ禍前、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていたが、厳格なゼロコロナ政策及び同政策解除後の中国国内での感染拡大に伴う日本政府側の入国規制によって回復が遅れている。なお、3月1日以降、中国と日本の直行便は成田、羽田、関西、中部の4空港以外への到着および増便が認められ、中国人宿泊者数はわずかに回復しているが、回復ペースは遅い。
中国を除いた外国人延べ宿泊者数 外国人延べ宿泊者数は今後、さらに回復していくことが見込まれる。その理由は2つある。1つ目は、中国人観光客の回復である。4月5日以降、中国からの入国者に対する規制は緩和された。具体的には7日以内に中国に渡航歴のあるすべての人及び中国からの直行便で入国する人に対して、ワクチン接種の有無にかかわらず、出国前検査での陰性証明書の提出を求めるという規制が撤廃され、他の国・地域からの入国者と同じようにワクチン3回接種証明書もしくは出国前72時間の陰性証明によって入国ができるようになった。これによって中国人観光客の回復が期待される。ただし、中国政府は日本への団体旅行を解禁していないため、これが中国人宿泊者数の回復の足かせになる可能性があることには注意が必要だ。
2つ目は水際対策の撤廃である。4月29日以降、全ての入国者はワクチン3回接種証明書および出国前72時間以内の陰性証明書の提示なしで日本に入国できるようになった。これによってインバウンド需要はさらに回復していくだろう。

以上の理由で、外国人宿泊者数は4月、5月にはさらに回復ペースを高めることが予想される。外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年3月には全体が▲20.2%、中国を除いた全体が▲0.6%と、中国を除けばほとんどコロナ禍前と同じ水準にまで回復している。4月には規制緩和によって中国人観光客が回復ペースを高め、5月には水際対策撤廃による訪日客数の増加で5月の外国人延べ宿泊者数はコロナ禍前と同程度の水準まで回復すると予想する。
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」へ引き下げられることに伴う旅行関連の変化
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2023年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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