コラム
2023年04月25日

平均寿命と長生きの年数-生命表をもとに長生きの年数について考えてみよう

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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日本の平均寿命は年々伸びている。「令和3年簡易生命表」(厚生労働省)によれば、平均寿命は男性81.47年、女性87.57年となっている。これは世界的に見て非常に長い。日本は世界屈指の長寿国となっている。平均寿命は、男性は2013年、女性は1984年に、それぞれ80年を超えた。それ以降も、徐々に長生きの年数が伸びており、大変喜ばしいことといえるだろう。
 
ところで、この平均寿命をもとに、「あと何年生きるか」を考えようとすると――

「男性の平均寿命が81.47年ということは、70歳の男性は、平均的に、あと11.47年生きる?」
「80歳の男性だと、あと1.47年生きる??」
「では、90歳の男性は???」

と、何だかよくわからなくなってしまうかもしれない。
 
今回は、生命表をもとに長生きの年数について、少し考えてみたい。

◇ 「平均的に、あと何年生きるか」は平均余命で見る

まず、平均寿命の平均とは何か。これは、生まれたばかりの0歳の人が、平均的に何年生きるかを示すものだ。それ以外の人には、平均寿命は当てはまらない。そこで出てくるのが、「平均余命(よめい)」だ。平均余命は、ある年齢の人々が、平均的に何年生きるかを示す。つまり、生まれたばかりの0歳の平均余命が、平均寿命ということになる。
 
例えば、令和3年簡易生命表によると、40歳の人の平均余命は、男性42.40年、女性48.24年となっている。平均寿命から年齢(40歳)を差し引いた年数(男性41.47年、女性47.57年)と比べると、男性で0.93年、女性で0.67年長い。40歳では、半年以上長いわけだ。

下記の表の通り、この差は高齢になるほど大きくなっていく。
 
40歳の人は、生まれてから40年間亡くならずに生きてきた。当然のことだが、同じ時に生まれてこの40年間に亡くなった人は、寿命が40歳未満だった。40歳の人は、寿命が短かった人を除いた集団と言うことができる。このため、40歳の人の平均余命は、平均寿命-年齢よりも、長いことになる。
平均余命と、「平均寿命-年齢」の差

◇ 40歳のうち半数の人は平均余命よりも2年以上長生きする

平均余命は、ある年齢の人々が、平均的に、あと何年生きるかを示す。実は、この「平均的に」というのがクセモノだ。
 
「40歳の男性の平均余命は42.40年」と聞くと、「40歳のうちの半数の人が42.40年生きる」と考えてしまいがちだ。ところが、実際には40歳の人々の集団が半減する年数は、約44.6年であり、平均余命よりも2年以上長い。
 
平均余命は、今後の生存年数の“平均”だ。以下の「各年齢での生存者数」の図で、棒グラフの面積と四角形の面積が等しくなるような年数となる。
 
一方、40歳の人が半減するのは、以下の「各年齢での死亡者数」の図で、棒グラフの面積が左右で等しくなる年数となる。
 
「令和3年簡易生命表」で、各年齢での死亡者数を見てみると、男性は80代後半、女性は90代前半でピークを迎える。問題は、そのピークの前後だ。死亡者数は左右対称には分布していない。ピークに至るまでは、年齢が進むにつれて緩やかに死亡者数が増加する。しかし、ピークを超えた後は急に減少する。このため、平均余命や、生存者が半減する年数は、このピーク前までに前倒しされる。
 
40歳の人の場合、この前倒しは、平均余命のほうが、生存者が半減する年数よりも強く効いている。その結果、40歳のうち半数の人は平均余命よりも2年以上長生きする、ということになる。
各年齢での生存者数 (男性) (40歳時 98397人(出生時10万人))
各年齢での死亡者数 (男性) (40歳時 98397人)
各年齢での生存者数 (女性) (40歳時 98992人(出生時10万人))
各年齢での死亡者数 (女性) (40歳時 98992人)
平均余命と、生存者が半減する年数の差

◇ 平均余命の伸びの勢いはやや低下しているが…

平均余命は、平均寿命と同様、年々伸びている。
 
65歳の平均余命を見ると、2021年は、男性19.85年、女性24.73年だ。25年前の1996年には、男性16.94年、女性21.53年だった。1996~2021年の25年間で、男性、女性とも約3年伸びたわけだ。
 
さらに50年前の1971年には、男性13.08年、女性16.00年だった。1971~1996年の25年間には、男性は約4年、女性は5年以上も伸びていた。平均余命の伸びの勢いはやや低下している。
 
この平均余命の伸びが今後どうなるかはわからない。もし、伸びが1996~2021年に比べて半分に低下すると仮定した場合、2021年に40歳だった人が65歳になる2046年の時点で、65歳の平均余命は2021年に比べて1年半くらい伸びるとみることができる。
65歳の平均余命の伸び

◇ 40歳の人のうち半数は、平均寿命よりも4年以上長生き、と見積もられる

以上の話をまとめよう。令和3年(2021年)の簡易生命表で、平均寿命は男性81.47年、女性87.57年となっている。これを見た40歳の男性は、「自分は、あと41.47年生きる」と見てしまいがちだ。
 
だが、

― 「平均寿命-年齢」ではなく、平均余命で見ることにより、生存期間は半年以上伸びる。
― 半数の人が生存する年数は、平均余命より2年以上長い。
― 平均余命自体が25年間で1年半ぐらい伸びるとみられる。
 
これらを合わせると、40歳の人のうち半数は、41.47年ではなく、さらに4年以上長生きすると見積もることができる。
 
もちろん、人生、この先何が待っているかはわからない。大病を患ったり、事故に遭ったりして、不幸にして早世する可能性もある。ただ、人々の集団で考えれば、半数の人は平均寿命よりも数年は長生きする、ということになる。
 
あとは、健康に長生きできるかどうか、がポイントと言えるだろう。そのためには、バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動など、日ごろから摂生に努めることが大切、ということになりそうだ。
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2023年04月25日「研究員の眼」)

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