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- 米雇用統計(23年3月)-雇用者数は前月から伸びが鈍化も市場予想は小幅に上回る
2023年04月10日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を上回ったほか、失業率は市場予想を下回る
4月7日、米国労働統計局(BLS)は3月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+23.6万人の増加1(前月改定値:+32.6万人)と+31.1万人から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+23.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は小幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は3.5%(前月:3.6%、市場予想:3.6%)と前月から▲0.1%ポイント低下し、市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.6%(前月:62.5%、市場予想:62.5%)と前月から+0.1%ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は3.5%(前月:3.6%、市場予想:3.6%)と前月から▲0.1%ポイント低下し、市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.6%(前月:62.5%、市場予想:62.5%)と前月から+0.1%ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:堅調な雇用の伸びが持続する一方、賃金の伸びは鈍化
非農業部門雇用者数は雇用増加ペースの鈍化傾向が持続しており、3月は雇用減少となった20年12月(▲26.8万人)以来の水準となった。もっとも、新型コロナ流行前の1年間(19年3月~20年2月)の+19.0万人を依然として上回っており、堅調な雇用増加が続いていることを確認した。
一方、失業率が前月から低下するなど労働需給の逼迫を示したものの、労働参加率が62.6%と4ヵ月連続で上昇したほか、20年3月(62.6%)以来の水準に回復しており、回復が遅れていた労働供給の回復が進んでいることも示した。
一方、失業率が前月から低下するなど労働需給の逼迫を示したものの、労働参加率が62.6%と4ヵ月連続で上昇したほか、20年3月(62.6%)以来の水準に回復しており、回復が遅れていた労働供給の回復が進んでいることも示した。

このようにみると、3月の雇用統計は堅調な雇用増加ペースが継続した一方、労働需給は引続き逼迫しているものの、これまで回復の遅れていた労働供給の回復が続いているため、今後は労働需給の緩和に伴う賃金上昇圧力の一段の低下が期待できる結果と言えよう。もっとも、堅調な雇用増加が続く中、前年同月比でみた賃金上昇率は依然としてFRBが物価目標2%と整合的と考えている3%台後半を上回っているため、5月上旬のFOMCでは政策金利の引上げが継続される可能性が高いだろう。
3.事業所調査の詳細:財生産部門の雇用が減少
事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+19.6万人(前月:+25.5万人)と前月から雇用の伸びは鈍化した(図表2)。

財生産部門は前月比▲0.7万人(前月:+1.1万人)と前月から減少に転じた。建設業が▲0.9万人(前月:+1.2万人)と前月から減少に転じたほか、製造業が▲0.1万人(前月:▲0.1万人)と前月に続いて減少した。
政府部門は前月比+4.7万人(前月:+6.0万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が+0.8万人(前月:+0.9万人)、州・地方政府が+3.9万人(前月:+5.1万人)といずれも伸びが鈍化した。
前月(2月)と前々月(1月)の雇用増加数(改定値)は前月が+32.6万人(改定前:+31.1万人)と+1.5万人上方修正された一方、前々月が+47.2万人(改定前:+50.4万人)と▲3.2万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲1.7万人の下方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って4月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+14.5万人(前月改定値:+26.1万人、市場予想:+21.0万人)と+24.2万人から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想も大幅に下回った。この結果、ADP社の統計は前月から雇用者数の伸びが鈍化した雇用統計と整合的な動きとなった。
3月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が33.18ドル(前月:33.09ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.5時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,141.39ドル(前月:1,141.61ドル)となり、2ヵ月連続で減少した(図表4)。
BLSの公表に先立って4月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+14.5万人(前月改定値:+26.1万人、市場予想:+21.0万人)と+24.2万人から上方修正された前月を下回ったほか、市場予想も大幅に下回った。この結果、ADP社の統計は前月から雇用者数の伸びが鈍化した雇用統計と整合的な動きとなった。
3月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が33.18ドル(前月:33.09ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.5時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,141.39ドル(前月:1,141.61ドル)となり、2ヵ月連続で減少した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働参加率が4ヵ月連続で上昇
家計調査のうち、3月の労働力人口は前月対比で+48.0万人(前月:+41.9万人)と前月に続いて堅調な伸びとなった。内訳を見ると、失業者数が▲9.7万人(前月:+24.2万人)と前月から減少に転じたものの、就業者数が+57.7万人(前月:+17.7万人)と失業者数の減少幅を上回る増加となって全体を押し上げた。非労働力人口は▲32.0万人(前月:▲26.9万人)と2ヵ月連続で減少した。これらの結果、労働参加率は62.6%と4ヵ月連続で上昇し、20年3月以来の水準に回復した(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は3月が83.1%(前月:83.1%)とこちらは前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が89.1%(前月:88.9%)と前月から+0.2%ポイント上昇したものの、女性が77.1%(前月:77.2%)と▲0.1%ポイント低下した。
失業率は労働参加率の上昇を伴って前月から低下しており、労働需給の逼迫が続いていることを示した。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は3月が83.1%(前月:83.1%)とこちらは前月から横這いとなった。男女の内訳は、男性が89.1%(前月:88.9%)と前月から+0.2%ポイント上昇したものの、女性が77.1%(前月:77.2%)と▲0.1%ポイント低下した。
失業率は労働参加率の上昇を伴って前月から低下しており、労働需給の逼迫が続いていることを示した。
3月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は110.4万人(前月:105.7万人)と前月から+4.7万人の増加となった。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは18.9%(前月:17.6%)と前月から+1.3%ポイント上昇した(図表7)。平均失業期間は19.5週(前月:19.3週)と前月から+0.2週長期化した。
最後に、周辺労働力人口(128.9万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(410.2万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、3月が6.7%(前月:6.8%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.2%ポイント(前月:+3.2%ポイント)と前月から横這いとなった。
最後に、周辺労働力人口(128.9万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(410.2万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、3月が6.7%(前月:6.8%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.2%ポイント(前月:+3.2%ポイント)と前月から横這いとなった。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年04月10日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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