2023年04月07日

米国株式に集中? それとも分散投資?

基礎研REPORT(冊子版)4月号[vol.313]

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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大人気のインデックス型の米国株式投信

2019 年の「老後2,000万円問題」をきっかけに資産運用に関心を持ち、実際に投資を始める人が増えている。それに伴って、2020年からインデックス型の外国株式投信の資金流入が増加している[図表1]。インデックス型の外国株式投信の中で特に売れているのが、S&P500などに連動する米国株式投信である。
[図表1]インデックス型の外国株式投信の資金流出入

過去10年だと米国株式一択でほぼ正解

このように米国株式が大人気になっているのは、米国株式がこれまで好調だったことが大きく関係していると思われる。実際に米国株式と日本株式、さらには全世界株式の主要株価指数の過去30年間の推移をみると、米国株式は日本株式だけでなく全世界株式も上回って上昇してきたことが一目瞭然である[図表2]。

詳しくみると、2012年以降の米国株式の上昇が突出しており、その期間で全世界株式と差が付いたことが分かる。つまり、過去10年くらいは米国株式にさえ投資していればよい状況であった。その印象が強いため、今後の米国株式にも期待する人が多いのではないかと考えられる。
[図表2]過去30年の株価指数の推移
では、なぜ米国株式が長きにわたって好調だったのだろうか。主な要因として、米国企業の業績が急成長したことがあげられる。各指数の予想EPSの推移をみると、米国企業の業績が2012年あたりから特に拡大していたことが確認できる[図表3]。この業績拡大が米国株式の株価を押し上げたといえるだろう。
[図表3]過去30年の12カ月先予想ESPの推移

考え方次第で、どちらでも正解だが

これからも米国株式に期待していいのだろうか。その鍵は、やはり米国企業業績の動向が握っていると考えている。

今後も米国企業の業績の急成長が続くならば、中長期的に米国株式は全世界株式を上回って上昇し続ける可能性が高いと思われる。そのため、米国企業の業績急拡大が続くことを期待したり予想したりするならば、米国株式に集中投資するのが最適な投資行動であるといえる。

ただ、2022年後半から米国企業の業績拡大に陰りがみえている。あくまでも一時的な鈍化かもしれないが、これまでの急成長が終わりに差し掛かっている可能性もある。少しでも今後の米国企業の業績に疑念を持つのであれば、米国株式だけでなく米国株式以外にも分散投資した方が無難である。

特に、米国株式は予想PERが全世界株式と比べて緩やかに上昇してきており、株高が許容されてきた面もある。このように株高が許容されてきた背景にも米国企業の業績の持続的拡大があると思われる。米国企業の業績拡大が鈍化し全世界株式並みに落ち着くと、米国株式はこれまでのように株高が許容されなくなる可能性もある。

過去のパフォーマンスは過去問と同じ

ゆえに今後の米国企業の業績や株価には注意が必要であり、過去のパフォーマンスは参考値として、米国株式に対して過度に期待しない方がよいと考えている。

試験などを受ける際に過去出題された問題、いわゆる過去問を参考に対策する方がほとんどだろう。過去問はとても参考になるが、参考にし過ぎて痛い目を見た方も多いのではないだろうか。

資産運用における過去のパフォーマンスは決して将来を保証するものではない。まさに試験対策における過去問程度に捉えて参考にしていただくことをおすすめする。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年04月07日「基礎研マンスリー」)

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