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- 世帯年収別に見たコロナ禍3年の家計収支-給付金や消費減少で貯蓄増加、消費は回復傾向だが子育て世帯で鈍さも
2023年03月20日
■要旨
■目次
1――はじめに
~コロナ禍3年余りだが低迷の続く個人消費、現下の家計消費にはプラス・マイナス両面
2――家計収支の変化
~給付金や消費減少で貯蓄増加、消費は回復傾向だが子育て世帯で鈍さも
1|実収入の変化
~給付金や雇用環境改善、「女性活躍」で増加傾向だが温度差も、子育て世帯で厳しさも
2|消費支出の変化
~高収入階級でコロナ禍前と同水準、子育て世帯や高齢世帯の動きは鈍いが回復傾向
3|貯蓄の変化
~給付金や配偶者収入と世帯主収入(高収入層と高齢層)の増加、消費減少で貯蓄増加
3――労働者数の変化
~女性は医療・福祉などの正規雇用増加が飲食等の非正規雇用減少を上回る
1|雇用形態別雇用者数の変化
~女性は正規増加が非正規減少を上回りトータルで増加、男性は減少
2|産業別就業者数の変化
~従来から女性の多い医療・福祉で増加、宿泊・飲食サービス等で男女とも減少
3|雇用形態別および産業別の年収の変化
~医療・福祉で増加、生活関連サービス業・娯楽業などで減少
4――おわりに
~賃金構造の改革、安心して働き続けられる環境整備が究極の家計支援策
- 総務省「家計調査」を用いてコロナ禍3年間における二人以上勤労者世帯の家計収支を見たところ、「特別定額給付金」や「女性の活躍」推進による妻の収入増加、外出自粛による消費支出の減少によって、収入階級によらず貯蓄は増加している。消費は全体で見れば未だコロナ禍前の水準を下回っているが、高収入階級ではコロナ禍前の水準に回復し、回復傾向の鈍い世帯年収600万円前後の子育て世帯や高齢者の勤労世帯でも、コロナ禍2年目と比べて3年目の2022年では回復基調が強まっている。
- 5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ5類指定感染症へと見直されるが、コロナ禍で増えた貯蓄によって家計に余力があるために、短期的には消費回復の動きが更に活発化するだろう。一方で、物価高が継続する中では賃金が物価の上昇率を超えて伸びない限りは、コロナ禍で抑制していた消費活動が一巡した後は消費行動には節約志向が色濃くあらわれる懸念がある。
- 特に懸念されるのは中低収入層の子育て世帯の消費だ。既出レポートで述べてきた通り、物価高進行下において、子育て世帯では物価高の負担感が強い。収入が減少した層が比較的多く、あらゆる面で支出を抑制する工夫をしている。また、「全国旅行支援」などの需要喚起策も経済的、あるいは時間的な余裕のなさを理由に利用が少ない。
- 今の子育て世帯は就職氷河期世代の親が増えており、上の世代と比べて経済状況が厳しい。35~44歳の男性の非正規雇用率は1990年と比べて現在では約3倍(2022年9.3%)へ上昇している。また、正規雇用者の賃金カーブは10年ほど前と比べて30~40歳代で平坦化している(40歳前後の10年間で大学卒の男性で約▲730万円、女性で約▲820万円)。
- 物価高が進行する中で、政府はエネルギー価格や食料価格の抑制対策や賃上げ支援、低所得世帯への給付といった物価高対策を実施しており、負担感の大きな子育て世帯に向けた給付等を行う自治体もある。生活困窮世帯を中心に即時的な家計支援策の実行が求められる一方で、中長期的には、安心して働き続けられる就業環境の整備を進めることが究極の家計支援策と言える。
- また、家計負担が増した状況を根本的に改善するには賃金の上昇が必要だ。そのためには、生産性を高めることで高い報酬を得られるような賃金構造に抜本的に変えていく必要がある。欧米と比較して日本の賃金水準が低い背景には、雇用者の約3割が賃金水準の低い非正規雇用者であり、正規雇用者でも、終身雇用や年功序列が色濃い日本型雇用では高い能力や成果に対する報酬が低く抑えられていることがある。
■目次
1――はじめに
~コロナ禍3年余りだが低迷の続く個人消費、現下の家計消費にはプラス・マイナス両面
2――家計収支の変化
~給付金や消費減少で貯蓄増加、消費は回復傾向だが子育て世帯で鈍さも
1|実収入の変化
~給付金や雇用環境改善、「女性活躍」で増加傾向だが温度差も、子育て世帯で厳しさも
2|消費支出の変化
~高収入階級でコロナ禍前と同水準、子育て世帯や高齢世帯の動きは鈍いが回復傾向
3|貯蓄の変化
~給付金や配偶者収入と世帯主収入(高収入層と高齢層)の増加、消費減少で貯蓄増加
3――労働者数の変化
~女性は医療・福祉などの正規雇用増加が飲食等の非正規雇用減少を上回る
1|雇用形態別雇用者数の変化
~女性は正規増加が非正規減少を上回りトータルで増加、男性は減少
2|産業別就業者数の変化
~従来から女性の多い医療・福祉で増加、宿泊・飲食サービス等で男女とも減少
3|雇用形態別および産業別の年収の変化
~医療・福祉で増加、生活関連サービス業・娯楽業などで減少
4――おわりに
~賃金構造の改革、安心して働き続けられる環境整備が究極の家計支援策
(2023年03月20日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/11/19 | 家計消費の動向(~2024年11月)-緩やかな改善傾向、継続する物価高で消費に温度差 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/11/08 | Z世代の消費志向とサステナブル意識-経済・社会的背景から見た4つの特徴 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2024/10/30 | 訪日外国人消費の動向(2024年7-9月期)-9月時点で2023年超えの5.8兆円、2024年は8兆円も視野 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2024/10/23 | 大学卒女性の働き方別生涯賃金の推計(令和5年調査より)-正社員で2人出産・育休・時短で2億円超、男性並で3億円超 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
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