2023年03月17日

ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)の積立等を巡る動向-金利上昇の影響等-

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(参考)最高責任準備金評価利率を巡る動向
金利の上昇に伴い、最高責任準備金評価利率の引き上げもテーマになってくるが、現時点では2024年まで変更はないと想定されている。ドイツアクチュアリー会(DAV)も2024年1月1日からの最高責任準備金評価利率について、現行の0.25%を据え置くことを推奨している5
(参考3)基準利率及び参照利率の推移
2|格付け会社Assekurata社による報告
格付け会社Assekurata社は、2022年12月19日に、「ECGチェック2022:生命保険の収益性保証チェック」というレポートにおいて、69の生命保険会社のデータに基づいて、ドイツの生命保険会社の収益力に関する調査結果を公表している6。この報告書によれば、ドイツの生命保険会社は金利の上昇により、全体的には恩恵を受けているが、ZZRのランオフが早ければ2022年にも予定されており、一方でこれは金利の上昇に伴う含み損の発生による収益力の低下で相殺される、と述べられている。

今回の調査によれば、2022年の業界全体でのZZRのリリースは30億ユーロ(その後の2023年2月28日のレポートでは40億ユーロとなっている)になると想定されている。調査では、2035年までの様々な金利シナリオにおける ZZRの進展を推定している。金利が今後数年間かけて2028年に3.00%まで上昇するシナリオの場合、参照金利は今後数年間1.57%で安定したままであり、2028 年から初めて上昇することになる。参照金利が横ばいで推移する中でも、ポートフォリオの縮小による減少額が、毎年算出されるZZR追加必要積立額を上回ることで、ZZR残高が減少していくことになるが、参照金利が上昇すれば、ZZR残高の減少はさらに加速していくことになる。

また、ZZRの資金調達に使用されてきた評価準備金(資産の含み益)は、2021年末には約1,500億ユーロあったが、2022年末には約500億ユーロのマイナス(含み損)になっていると想定されている。この隠れ負債(資産の含み損)は本質的に固定金利投資によるものであるため、純粋に金利に関連した価値の変化の場合、生命保険会社は長期投資家として、通常、バイアンドホールド戦略で運営されているため、減価償却は必要ない。一方で、この隠れ負債は、収益の柔軟性を低下させ、例えば、顧客が大規模に契約を解約したり、発行体の信用度が低下したために評価減が必要になったりした場合に、これらを実現しなければならなくなる。

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、2022年に入ってからのグローバルベースでの市中金利上昇の動きの中でのドイツの追加責任準備金ZZRの積立等を巡る状況について報告してきた。

このZZRに関連する問題は、日本の生命保険会社等にとっても非常に関心の高いテーマであることから、今後のZZRの積立等を巡る動向や金利上昇下におけるドイツの生命保険会社の動向等については、引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年03月17日「保険・年金フォーカス」)

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