2018年10月15日

ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)制度の見直しを巡る動き-財務省が改正法案を提示-

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■要旨

ドイツにおいては、国内の生命保険会社の法定会計において、一定のルールに基づいて強制的に追加責任準備金の積立を求める、いわゆるZZR(Zinszusatzreserve)と言われる制度が2011年に導入された。昨今の低金利環境下で、この制度に基づく、追加の責任準備金積立負担が大きなものになっていることについては、基礎研レポート「金利低下に保険監督当局はどう対応してきたのか-ドイツBaFinの例-」(2015.6.15)で報告した。さらには、そうした状況下で、保険監督当局であるBaFin(連邦金融監督庁:Bundesanstalt fur Finanzdienstleistungsaufsicht)が、2015年度決算において、ZZR制度の適用緩和策を導入したことを、基礎研レター「ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)制度を巡る動き-BaFinによる適用緩和策-」(2016.2.22)で報告した。

その後も、ドイツの金利環境を巡る状況は厳しく、毎年の決算において多額のZZRの積立を余儀なくされている。また、その財源確保のために、債券の売却を行って、含み益の実現を余儀なくされることで、生命保険会社の財務状況に与える影響等が極めて大きなものとなっている。

こうした状況下で、生命保険業界等は、これまでBaFinや財務省(Bundesministerium der Finanzen:BMF)に対して、現行のZZR制度の見直しについて、強い働きかけを行ってきた。一方で、ドイツの連邦議会の金融委員会は、財務省に対して、2014年から施行されている生命保険改革法(LVRG)の影響を評価し、これを報告するように求めていた。財務省は、これらに応える形で、6月28日に「評価報告書」を金融委員会に提出して、公表した。この「評価報告書」の中で、ZZRについては、BaFinによる調査結果が示され、現行の制度に基づく課題が示され、その計算ルールの調整を行うべき、との結論が述べられた。

ZZR制度の見直し案については、これまでにDAV(ドイツ・アクチュアリー会)が具体的な提案を行い、BaFinとの検討も行われて、共同で開発されてきた。こうした動きについて、保険年金フォーカス「ドイツにおける追加責任準備金(ZZR)制度の見直しを巡る動き-BaFinとDAVによる新たな方式-」(2018.8.7)((以下、「前回のレポート」という)で、報告した。

その後、財務省が9月13日にZZRを改正するドラフト法案を公表しているので、今回のレポートは、これについて報告する。

■目次

1―はじめに
2―ZZR制度について
  1|ZZR制度の概要
  2|ZZR制度による追加責任準備金の積立状況
3―今回のZZR制度の見直し案について
4―今回の見直し案による影響
  1|参照利率及びZZR積立額への影響
  2|その他の財務面への影響
5―今回の見直し案(ドラフト法案)に対するコメント
  1|GDV(ドイツ保険協会)
  2|DAV(ドイツ・アクチュアリー会)
6―まとめ
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中村 亮一

研究・専門分野

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レポート紹介

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