2023年03月10日

2022年に話題となった年金ニュースをTwitterから振り返る-「年金」を含むツイートの投稿契機 (2022年通年)

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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1 ―― 本稿の問題意識と分析対象:年金ツイートは、何を契機に投稿されたか?

ツイートとは、Twitterに投稿されるメッセージ(発言)である。文字数が、基本的に全角で140文字(半角で280文字)までと制限されており、「つぶやき」とも呼ばれる。近年はマスコミの報道や国会審議などでも取り上げられているが、ツイートには、熟考の上で投稿されたもの、反射的に投稿されたもの、宣伝や広報、プログラムによって投稿されたものなど、様々なものが混在している。

本稿では、「年金」を含むツイート(以下、年金ツイート)が何を契機に投稿されているかを考察するために、基礎的な投稿状況やツイートに含まれるリンクを分析した。分析対象は、2022年に投稿された年金ツイートのうち単純なリツイート等を除いたものであり(図表1)、投稿者自身の何らかの態度が示されているツイートと言えよう。
図表1 本稿が分析対象としたツイート
以下では、投稿状況の指標として、投稿数(ツイート数)と投稿者数を確認する。投稿数は、前述のとおり単純なリツイート等を含んでいない点に注意が必要である。投稿者数は、ユーザー名を集計区分ごとに名寄せした件数であり、同一の集計区分で同一のユーザーが複数のツイートを投稿していても1名と数えている。以下では、同一ユーザーからのプログラムなどを使った複数回投稿の影響を抑えるため、投稿者数を主な指標として見ていく。

2 ―― 投稿契機となったツイート

2 ―― 投稿契機となったツイート:臨時給付金や年金改革案のほか、テレビの内容が投稿契機に

図表2は、ツイートを契機として投稿された年金ツイートの、投稿日別の投稿者数の推移である。既存のツイートに対するコメントの投稿(返信ツイートや引用リツイートなど)が、この集計の対象である1。図表2を見ると、最多が3月15日、2番目が3月16日、3番目が9月28日で、これら以外に、6月8~9日、6月26~29日、10月11~12日、10月15~17日、10月26日などでも多くなっている2
図表2 ツイートを契機として投稿された年金ツイートの投稿者数
また、図表3は、年金ツイートの投稿契機となったツイートのうち、そのツイートを契機とした年金ツイートの投稿日別の投稿者数が上位10件に入ったものである。

図表2と図表3から総合的に考えると、次のことが推察される。

3月15~16日は、年金受給者に対する5000円の給付金が投稿契機となった3。個別のツイートはそれほど多くの人の投稿契機にはなっていないが(図表3)、複数の媒体がこの話題を報じたため、投稿日ごとの総数としては2022年で最多の投稿者になった(図表2)、と考えられる。

他方で9月28日は、日本経済新聞のツイートのみが投稿契機となり、個別のツイートとしては2022年で最多の投稿者を集め(図表3)、投稿日ごとの総数としても3番目に多い投稿者を集めた(図表2)。このツイートは2020年に公表されていた年金改革案を解説する記事を紹介するもので、いわゆるニュース(新しく判明した事実)ではなかった。そのため他の媒体が取り上げず、投稿契機として集中したと考えられる4

10月11~12日や10月15~17日も、2020年に公表されていた年金改革案に関するツイートが投稿契機となった(図表3)。ただし、それに関する記事を掲載した媒体が発信したツイートではなく、その記事を紹介する一般ユーザーのツイートが投稿契機になった点で、9月28日とは傾向が異なる。

また、投稿日別の投稿者数は多くないものの、1月25日と4月1日には、テレビ番組の内容を伝えるツイートが多くの人の投稿契機となった(図表3)。
図表3 年金ツイートの投稿契機となったツイート (年金ツイートの投稿日別の投稿者数の上位10件)
 
1 あるツイートの返信ツイートや引用リツイートとして投稿された年金ツイートのほか、他のツイートのURLをツイート中のURL1つめとしている年金ツイート(※)も、ツイートを契機として投稿された年金ツイートとみなしている。なお、ツイートを契機として投稿された年金ツイート702,362件のうち、返信ツイートは565,932件、引用リツイートは131,797件、※のタイプの年金ツイートは4,633件であった。
2 平均+2×標準偏差よりも多いことを、「多い」の目安にしている。以下同じ。
3 図表3には投稿日が3月16日のものがないが、別途確認した。図表3に投稿日が3月16日のものが入っていないのは、この話題に関するツイートが増えて、返信や引用の対象が分散したためだと考えられる。
4 実際の(紙の)紙面で1面に掲載されたことも、多くの人の投稿契機となった一因だと考えられる。

3 ―― 投稿契機となったWebページ

3 ―― 投稿契機となったWebページ:給付金や改革案に関する速報や刺激的な題名が投稿契機に

図表4は、Webページを契機として投稿された年金ツイート5の、投稿日別の投稿者数の推移である。ニュースサイト等に掲載された記事を見て、記事の脇のアイコンから投稿した場合などが想定される。図表4を見ると、最多が3月15日、2番目が3月16日、3番目が10月15日で、これら以外に、3月18日、9月28日、10月11日などでも多くなっている。
図表4 Webページを契機として投稿された年金ツイートの投稿者数
図表5は、年金ツイートの投稿契機となったWebページのうち、そのWebページを契機とした年金ツイートの投稿日別の投稿者数が上位10件に入ったものである。

図表4と図表5から総合的に考えると、次のことが推察される。

3月15~16日は、ツイートを契機とした投稿と同様に、年金受給者に対する5000円の給付金が投稿契機となった6。しかし、ツイートを契機とした投稿では投稿契機が分散したのに対し、Webページを契機とした投稿ではFNNが「速報」という見出しを付けて発信したニュース(Yahoo! ニュースへの転載を含む)が多くの人の投稿契機として集中した(図表5)。

9月28日以降は、年金制度の改革案を紹介する記事が多くの人の投稿契機となった(図表5)。9月28日は厚生年金と国民年金(基礎年金)における給付削減の程度や終了時期を揃える案7を紹介した日本経済新聞の記事が、10月11日は9月28日の日本経済新聞の記事を参照したマネーポストWEBの記事が、10月15~16日は国民年金(基礎年金)の拠出期間の延長案8を紹介する共同通信の記事(Yahoo! ニュースへの転載)が、多くの人の投稿契機となった(図表5)。これらの記事が紹介した改革案は2020年12月に厚生労働省が公表した資料に載っていた案であり、記事が出た際に新たに判明した内容ではなかった9。そのため複数の媒体が同時に取り上げる状況にはならなかったが、11月5日のSmartFLASHや12月26日のマネーポストWEBの記事(どちらもYahoo! ニュースへの転載)が刺激的な題名で改めて取り上げ、それぞれの時期で大きめの投稿契機となった(図表5)。
図表5 年金ツイートの投稿契機となったWebページ (投稿日別の投稿者数の上位10件)
 
5 ツイート中にURLを含む年金ツイートのうち、前述したツイートを契機として投稿された年金ツイート以外のもの。
6 図表5には投稿日が3月16日のものがないが、別途確認した。図表5に投稿日が3月16日のものが入っていないのは、この話題に関するWebページが増えて、参照の対象が分散したためだと考えられる。
7 この案の概要は、拙稿「現行制度を放置すると低所得会社員ほど大幅な年金カットに」を参照。
8 この案については、例えば拙稿「国民年金納付5年延長でも、無収入なら免除の可能性」を参照。
9 いずれの記事にも2020年12月に公表されていた内容であることの記載はなかった。なお、10月15日の共同通信の記事には、「関係者への取材で15日、分かった」と記載されていた。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

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