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日本の重要課題は何?-他の国における自然環境の重要性を学ぶ

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――日本は163か国中の19位でもあり、134位でもある
波及指標は、その国が他の国に及ぼす影響を評価した結果である。得点が高いほど他の国に良い影響を及ぼす(悪い影響を及ぼさない)ということである。163か国中の134位という結果を素直に解釈すると、日本は他の国に良い影響を及ぼさないで、むしろ悪い影響を及ぼしていると評価されているのである。
他の国に及ぼす影響として、分かりやすい例は大気汚染や水質汚染であろう。風下や川下に位置する国が、風上や川上に位置する国による汚染の影響を受けることは容易に想像がつく。しかし、残念ながら波及指標の算出にあたり大気汚染や水質汚染は勘案されていない。現時点において大気汚染や水質汚染の他国への影響を定量的に捕捉することが困難だからである。波及指標の算出の際に考慮される項目は、定量的に捕捉可能な輸出入に関係する項目が多いので、所得の高い国は総じて波及指標が低い(図表1)。
2――波及効果の具体的評価項目と日本の課題
SDGs指標や波及指標は4段階で評価され、最高が「目標達成」、2番目が「課題が残っている」、3番目が「重要な課題が残っている」、最低が「大部分の課題が残っている」である。
輸出関係の3項目は、「有害農薬の輸出量」、「プラスチック廃棄物の輸出量」と「兵器の輸出額」である。日本は、「兵器の輸出額」が4段階評価中最高の評価を得ているが、「有害農薬の輸出量」は3番目、「プラスチック廃棄物の輸出量」は最低の評価を受けている。
輸入関係で最高の評価を得ている項目はなく、7項目中3項目が2番目、1項目が3番目、残りの3項目は最低の評価を受けている。輸入関係で最低の評価の3項目は、「輸入品の生産過程で排出された二酸化炭素量」、「輸入品の産出過程に起因する海洋生物の多様性への脅威」と「輸入品の産出過程に起因する陸域及び淡水域の生物の多様性への脅威」である。我々の消費活動のために、他国で二酸化炭素が大量に排出されたり、他国の生態系が脅かされたりしているのである。輸入品に関する課題と言えば、立場の弱い開発途上国の生産者に正当な対価を支払わないことが、生産者の貧困からの脱却を阻害したり、強制労働など人権侵害の温床になるといった社会問題(Social)のイメージが強いが、日本においては、二酸化炭素量や生物多様性といった環境面(Environment)に大きな課題が残っている。
資金の流れに関係する項目では、4項目中2項目が最高の評価を得ている一方、残りの2項目で最低の評価を受けている。最低の評価の2項目は、「ODA等の国際的な資金援助」(評価対象は所得の高い国のみ)と「金融の機密性の高さ」である。日本では、多くの人が金融の機密性は高い方が良いと思うかもしれないが、機密性が高いほど、不公正な税回避やマネーロンダリングの温床となりやすいとも考えられるので低い評価を受ける。
3――OECD加盟諸国との比較
なお、波及指標の評価項目以外のSDGs指標の評価項目にも、最低の評価を受けている項目が11項目あり、波及指標の評価項目6項目を加えると全17項目ある。17項目の中でも世界順位が最も低いのは「輸入品の産出過程に起因する海洋生物の多様性への脅威」である。「輸入品の産出過程に起因する海洋生物の多様性への脅威」は、17のSDGsゴールのうち「14海の豊かさを守ろう」に属する。守るべき海の豊かさは日本近海に限らない。世界中の海の豊かさを守るという意識が必要なのである。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年03月01日「基礎研レター」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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