コラム
2023年02月06日

米株高と日銀の金融緩和策の現状維持で海外投資家が買い越し~2023年1月投資部門別売買動向~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2023年1月前半は、日経平均株価は2万6,000円を挟んだ展開となった。一方、1月後半は17~18日に開催された日銀金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持が決定されたことから一転して安心感が広がり、日経平均株価は18日に2万6,791円まで上昇した。その後は、米金融引締めに対する警戒感が後退し米国株が上昇したこと、ゼロコロナ政策を大きく転換させた中国の景気回復期待などから、日経平均株価は上昇し2万7,327円で終えた。1月はこのように日経平均株価が上昇するなか、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、信託銀行、個人が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
図表2 海外投資家は1月後半に大幅買い越し
2023年1月(1月4日~1月27日)の主な投資部門別の売買動向は、海外投資家が現物と先物の合計で1兆2,640億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。特に、1月第3週(1月16~20日)に4,561億円、第4週(23~27日)に1兆3,226億円と1月後半に大きく買い越した。背景の一つとして、17~18日に開催された日銀金融政策決定会合があげられる。
 
日銀は、2022年12月に開催された日銀金融政策決定会合で政策金利水準は据え置いたものの、イールドカーブコントロール(YCC)の10年国債利回りの変動幅を、±0.25%程度から±0.5%程度へ拡大することを決定した。市場ではこの決定を事実上の利上げと受け止め、しかも事前に予想されていなかったこともあり市場心理が悪化し、海外投資家は2022年12月第3週に1兆円83億円売り越した。その後も更なる金融緩和策の修正懸念がくすぶっていた。しかし、1月17~18日に開催された日銀金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持が決定し、とりあえず金融政策に対する目先の不透明感が解消された。さらに米国株が上昇しリスク回避姿勢が和らいでいたことも加わり、海外投資家は大幅な買い越しとなった。
 
その一方で信託銀行は、現物と先物の合計で7,680億円の売り越しと1月最大の売り越し部門であった。また、個人も6,761億円の売り越し、投資信託も1,587億円の売り越しであった。自社株買いが買いの中心と見られる事業法人は3,737億円の買い越しだったものの、それ以外の主要国内投資家は日経平均株価が上昇するなか利益確定の売りが優勢となったようだ。
図表3 事業法人以外の主要国内投資家は売り越し
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年02月06日「研究員の眼」)

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