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2023年01月30日
マスク着用が周りの人の感情に与える影響-ポジティブな感情の伝染を弱める可能性
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15 図1のステップ3で画像を見て「笑っている」と認識した場合に1をとるダミー変数を内生変数として、被説明変数をポジティブな感情変数、操作変数をマスク着用画像ダミー、笑顔画像ダミー及び笑顔画像ダミー×マスク着用画像ダミーとした2段階推定では、第1段階の画像を見て「笑っている」と認識した場合に1をとるダミー変数を被説明変数とした推定では、マスク着用ダミーの係数は負で統計的に有意(有意水準1%)であり、2段階目のポジティブな感情変数を被説明変数とした推定では、内生変数の係数は、正で統計的に有意(有意水準1%)であった。
4| マスクの有無とネガティブな感情の変化
次に、「笑顔」の写真か「無表情」の写真か、及び大人の写真を見た場合と、子どもの写真を見た場合について、親の回答と子の回答を分けずに、全体として、マスクの有無によるネガティブな感情の変化の違いを確認したのが、図5である16。図5からは、どの写真を見た場合も全体としてネガティブな感情の値は下がっているが、その下がり度合いは、マスクが無い写真を見た場合に比べて、マスクがある写真を見た場合に小さい傾向が見られる(図内の緑色矢印はマスク無の写真を見た場合の減少幅、黄緑色の矢印はマスク有の写真を見た場合の減少幅。どの写真を見た場合も、黄緑色の方が緑色よりも短いことが確認できる)17。このことから、マスクの着用は、周りの人のネガティブな感情を下げる効果を小さくする影響が示唆される。
次に、「笑顔」の写真か「無表情」の写真か、及び大人の写真を見た場合と、子どもの写真を見た場合について、親の回答と子の回答を分けずに、全体として、マスクの有無によるネガティブな感情の変化の違いを確認したのが、図5である16。図5からは、どの写真を見た場合も全体としてネガティブな感情の値は下がっているが、その下がり度合いは、マスクが無い写真を見た場合に比べて、マスクがある写真を見た場合に小さい傾向が見られる(図内の緑色矢印はマスク無の写真を見た場合の減少幅、黄緑色の矢印はマスク有の写真を見た場合の減少幅。どの写真を見た場合も、黄緑色の方が緑色よりも短いことが確認できる)17。このことから、マスクの着用は、周りの人のネガティブな感情を下げる効果を小さくする影響が示唆される。
16 本稿で紹介する分析では、大人の写真、子どもの写真ともに、男性の写真と女性の写真の区別は行っていない。
17 親と子を合わせたデータを用いて、介入後のネガティブな感情の値を被説明変数、介入前のネガティブな感情の値、マスク有画像ダミーと笑顔画像ダミーを説明変数とした線形確率モデルの推定を行うと、マスク画像ダミーの係数は正で統計的有意である(有意水準5%)。このことからも、マスクの着用は、周りの人のネガティブな感情を下げる効果を小さくする影響が示唆される。
18 注16と同様の推定を親の回答者と子の回答者のサンプルに分けて行ったところ、マスク有画像ダミーの係数は、子の回答者サンプルのみを用いた推定では0.48で統計的に有意(有意水準10%)、親の回答者サンプルのみを用いた推定では0.41で、有意水準15%で統計的に有意な値であった。
5――おわりに
本稿では、ニッセイ基礎研究所が、親子937組を対象に行った独自のWEB実験を元に、マスク着用の、周りの人々の感情への影響を確認した結果を紹介した。本実験で得られた結果は主に以下の4点である。
マスクの着用は、笑顔が周りの人のポジティブな感情を高める効果や、ネガティブな感情を下げる効果を小さくしている可能性が示唆された。そして、マスクが笑顔のポジティブな効果を減少させる影響は、特に子どもの間で大きかった。多くの学校で長期的にマスク着用が続いている状況が、子ども同士でコミュニケーションに影響を与えている可能性が示唆される結果といえるかもしれない。
- 子どもの笑顔は、周りの人のポジティブな感情を高める傾向見られる。
- 子どもの笑顔は、周りの人のポジティブな感情を高めるが、マスクをした場合は、周りの人のポジティブな感情を高める効果は小さくなる傾向がある。特に周りの大人に比べて、周りの子どものポジティブな感情を高める効果は小さくなる可能性がある。
- マスクの着用は、人々に笑顔を認識させにくくすることで、それを見た人々のポジティブな感情を高めにくくさせている可能性がある。
- マスクの着用は、周りの人のガティブな感情を下げる効果を小さくする可能性がある。
マスクの着用は、笑顔が周りの人のポジティブな感情を高める効果や、ネガティブな感情を下げる効果を小さくしている可能性が示唆された。そして、マスクが笑顔のポジティブな効果を減少させる影響は、特に子どもの間で大きかった。多くの学校で長期的にマスク着用が続いている状況が、子ども同士でコミュニケーションに影響を与えている可能性が示唆される結果といえるかもしれない。
(2023年01月30日「基礎研レポート」)


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