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2023年01月27日
マスク着用が表情認識に与える影響-マスク着用による影響の度合いは親と子で異なる可能性
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3| 小学生が写真を見た場合と中学生が写真を見た場合の違い
親の回答者が「無表情」の人を見たときに笑っていると感じる傾向があるのは、これまでの様々な人々との交流経験を子より多く持っていることによって、表情を認識する力をより強く身に着けているためである可能性が考えられるかもしれない。今回使用した写真は、日常の一場面の写真ではなく、カメラに視線があたっている写真であることから、日常における「無表情」より視線が定まっていることでやや明るい印象があるかもしれない。そうした中で、親が「無表情」の人を見た時に、マスクをつけることによってより大きな影響を受けるのは、顔のより多くの部分から表情を判断しているからという可能性も考えられる。そして、こうした表情を認識する力は子の成長過程によって身についていくものである可能性が考えられる。そこで、子の表情認識について、小学校低学年、小学校高学年、及び中学生に分けて違いを確認したのが、図3である。
親の回答者が「無表情」の人を見たときに笑っていると感じる傾向があるのは、これまでの様々な人々との交流経験を子より多く持っていることによって、表情を認識する力をより強く身に着けているためである可能性が考えられるかもしれない。今回使用した写真は、日常の一場面の写真ではなく、カメラに視線があたっている写真であることから、日常における「無表情」より視線が定まっていることでやや明るい印象があるかもしれない。そうした中で、親が「無表情」の人を見た時に、マスクをつけることによってより大きな影響を受けるのは、顔のより多くの部分から表情を判断しているからという可能性も考えられる。そして、こうした表情を認識する力は子の成長過程によって身についていくものである可能性が考えられる。そこで、子の表情認識について、小学校低学年、小学校高学年、及び中学生に分けて違いを確認したのが、図3である。
図3の分布から、マスクをしていない状態でもマスクをした状態でも、大人の「無表情」の写真を見た際について、笑っていると感じる人の割合は、小学校低学年の回答者の間で特に低い傾向が見られる9。そして、中学生の間では、マスク無の写真を見た場合には、親の回答者よりも笑っていると感じる人の割合が若干小さいものの、マスク着用の写真を見た際に笑っていると感じる人の割合は、親の回答者とほとんど変わらないようだ10。マスクを着用した人の顔を見た場合の中学生の表情認識は親の回答者と同程度であるが、マスクを着用していない人の顔を見た場合の表情認識は親の回答者と少し異なることの要因について、コミュニケーション経験の積み重ね年数の違いの他、コロナによるマスク着用の常態化が考えられるのか、今後の課題として検討していく必要があるだろう。また、もともと表情認識が親の回答者と大きく異なる可能性のある小学校低学年の子への、マスク常態化の将来的な表情認識への影響の検討も重要な課題と考えられる。
9 大人の無表情の画像を見た人(親と子)のみを抽出して、笑っていると感じた場合に1をとり、その他の場合に0をとるダミー変数を被説明変数、マスク着用画像ダミー、学年カテゴリ―(親、小学校低学年の子、小学校高学年の子、中学生)及び学年カテゴリーとマスク着用画像ダミーの交差項を説明変数とした線形確率モデルの推定を行うと、学年カテゴリーダミーの係数は、親カテゴリーを参照カテゴリーにした場合、低学年になるほど、大きくマイナスの値になる傾向が見られた。(小学校低学年のカテゴリーでは有意水準1%で負)。一方、交差項の係数で統計的に有意なものはなかった。
10 注8の推定で中学生のカテゴリーダミーの係数は、有意水準15%で統計的に有意に負の値であった。
9 大人の無表情の画像を見た人(親と子)のみを抽出して、笑っていると感じた場合に1をとり、その他の場合に0をとるダミー変数を被説明変数、マスク着用画像ダミー、学年カテゴリ―(親、小学校低学年の子、小学校高学年の子、中学生)及び学年カテゴリーとマスク着用画像ダミーの交差項を説明変数とした線形確率モデルの推定を行うと、学年カテゴリーダミーの係数は、親カテゴリーを参照カテゴリーにした場合、低学年になるほど、大きくマイナスの値になる傾向が見られた。(小学校低学年のカテゴリーでは有意水準1%で負)。一方、交差項の係数で統計的に有意なものはなかった。
10 注8の推定で中学生のカテゴリーダミーの係数は、有意水準15%で統計的に有意に負の値であった。
5――おわりに
本稿では、ニッセイ基礎研究所が、親子937組を対象に行った独自のWEB実験を元に、マスクを着用することの、親世代(24~64歳)及び子世代(小中学生)の表情認識への影響を確認した。本実験で得られた結果は主に以下の6点である
こうした親と子の表情認識やマスクの影響の違いは、コミュニケーション経験の積み重ね年数の違いが原因である可能性が考えられるが、コロナによるマスク着用の常態化の影響も考えられるのか、今後の課題として検討していく必要があるだろう。また、もともと表情認識が大人と大きく異なる可能性があることが示された子どもたち、とくに、低年齢層の子への、マスク常態化の将来的な表情認識への影響の検討は、今後の重要な課題であると考えられる。
- マスクの着用は、それを見た親の回答者(24~64歳)にも子の回答者(小・中学生)にも、笑っていると認識させにくくする影響が見られる。
- マスクの着用がそれを見た人に笑っていることを認識させにくくする影響は、マスクの下で歯の見えるような大きな笑顔をしている場合よりも、歯の見えない表情(無表情)をしている場合に特に大きい傾向がある。
- 歯の見えない表情(無表情)をしている人を見た際に、マスクによって笑っていると感じにくくなる影響の大きさについて、親の回答者と子の回答者で比較すると、親の回答者が受ける影響の方が大きい傾向がある。
- 歯の見えない表情(無表情)をしている人を見た際に、マスクによって笑っていると感じにくくなる影響について、子よりも親の回答者の間で大きい傾向が見られるのは、親の回答者に比べて子の回答者は、もともとマスクを着用していない人を見た場合でも、笑っていると認識しにくい傾向によるものである可能性が示唆される。
- マスクを着用していない、歯の見えない表情(無表情)の大人の写真を見た際に、笑っていると感じにくい傾向は、子の回答者の中でも特に低年齢の子の間で顕著に見られる。
- マスクの着用をした人を見た場合の中学生の回答者の表情認識は親の回答者と同程度であるが、マスクを着用していない人を見た場合には、親の回答者よりもやや笑っていると感じにくい可能性がある。
こうした親と子の表情認識やマスクの影響の違いは、コミュニケーション経験の積み重ね年数の違いが原因である可能性が考えられるが、コロナによるマスク着用の常態化の影響も考えられるのか、今後の課題として検討していく必要があるだろう。また、もともと表情認識が大人と大きく異なる可能性があることが示された子どもたち、とくに、低年齢層の子への、マスク常態化の将来的な表情認識への影響の検討は、今後の重要な課題であると考えられる。
(2023年01月27日「基礎研レポート」)


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