2023年01月27日

小・中学生が感じるマスクをつけること/はずすことの「いやさ」-親が思うより子は「いやだ」と感じているかもしれない

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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6――親が感じる小・中学生の子がマスクをはずすことの不快度合い

次に、親の回答者に、2022年10月現在とその2年前(新型コロナ感染拡大が始まった頃)それぞれで、子(小・中学生)がどの程度マスクをはずすことを不快に感じていると思うかを尋ねた結果を、男子の親と女子の親別に、図7に示した。図3に示した、子自身が感じるマスクをはずすことの「いやさ」の程度の分布と比較をすると、2022年10月現在で、子の回答者の約31%が、マスクをはずすことを「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じている一方、親の回答者で子がマスクをはずすことを「非常に不快に感じている」もしくは「不快に感じている」と思うと答えた人の割合は、2022年10月現在で、全体の約26%となっている。このことから、親が感じるよりも、子自身はマスクをはずすことを「いやだ」と感じている可能性が示唆される19

また、図7からは、男子の親であっても女子の親であっても、子がマスクをつけることを不快と感じていると思う人の割合は2年間でほとんど変化していない傾向が見られる20
図7. お子さんはマスクを外すことを、どの程度不快に感じていると思いますか(男女別)
さらに、親の回答者に、2022年10月現在とその2年前それぞれで、子がどの程度マスクをはずすことを不快に感じていると思うか尋ねた結果を、子の学年別に、図8に示した。図8からは、小学校高学年や中学生の子の親は、小学校低学年の親と比べて、子がマスクをはずすことを「非常に不快に感じている」もしくは「少し不快に感じている」と回答した人の割合が大きいことが確認できる21。これは、図4で見られた、子自身の回答と一貫した傾向である。また、子の学年に関わらず、子がマスクをつけることを不快と感じていると思う人の割合は過去2年間でほとんど変化が見られないことが分かる22
図8. お子さんはマスクをはずすことを、どの程度不快に感じていると思いますか(学年別)
 
19 子自身がマスクをはずすことを「とてもいやだ」もしくは「すこしいやだ」と感じる場合に1をとるダミー変数と親が子がマスクをはずすことを「非常に不快に感じている」もしくは「少し不快に感じている」と回答した場合に1をとるダミー変数の差についてt検定を行うと、統計的に有意な差が確認された(有意水準1%)
20 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、男子の間でも女子の間でも、統計的に有意な違いは見られなかった(有意水準15%)。
21 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在の値を被説明変数、女子ダミー、学年ダミー(小学校低学年ダミー、小学校高学年ダミー、中学生ダミー)を説明変数とした線形回帰モデルを推定すると、小学校低学年ダミーを参照カテゴリーとした場合、中学生ダミーの係数は統計的に有意に正(有意水準5%)、小学校高学年ダミーの係数は正だが統計的に有意ではなかった(p値0.152)。
22 マスクをつけることについて、非常に不快に感じているを4、少し不快に感じているを3、ほとんど不快に感じていないを2、全く不快に感じていないを1としたマスクをつけることの不快度合い変数を作成し(わからないはサンプルから除いて推定)、2022年10月現在と2年前をt検定で比較すると、小学校低学年、小学校高学年、中学生のいずれの学年の間でも、統計的に有意な違いが見られなかった(有意水準15%)。

7――おわりに

7――おわりに

本稿では、ニッセイ基礎研究所が子育て中の人々とその子を対象に行った独自の WEB アンケート調査を用いて、子ども自身が感じているマスクをつけることやはずことの「いやさ」の程度及び、親が思う子のマスクを不快に感じている程度の分布を、子の男女、学年別に確認した結果を紹介した。本稿で示された主な結果は以下の通りである。
 
  • 中学生は、小学生に比べて、マスクをつけることをいやだと感じる人の割合が小さい傾向が見られる。特に中学生女子は、マスクをつけることをいやだと感じる人の割合が小さい傾向が見られる。
     
  • 小学校高学年の子や中学生は、小学校低学年の子に比べて、マスクをはずすことをいやだと感じる人の割合が大きい傾向が見られる。
     
  • 新型コロナ感染症拡大が始まった時期と現在を比較すると、親は子のマスク着用への不快度合いは小さくなったと感じている傾向が見られる。
     
  • 親が感じている子のマスクをつけることやはずすことの不快度合いよりも、子が実際に感じているマスクをつけることやはずすことへの不快度合いの方が大きい可能性がある。

 
男女や学年の間で見られる違いの理由については、今後の検討課題であるが、成長段階の違いや、新型コロナ感染症の流行によってマスクが外見の魅力度に与える影響が変化したといった報告もあることから23、こうした外見への意識が影響している可能性が考えられるかもしれない。政府は、2023年1月21日現在、学校でのマスク着用について、「身体的距離が十分とれない時はマスクを着用すべき」としている24。しかし、政府は、2023年1月20日に、現在新型コロナウイルスの感染症法上の分類について、2023年春にも「5類」に移行する方針を示した。これによって、子どもたちの学校でのマスク着用についての今後の方針についても議論が始まっている25。マスクをつけることやはずすことについて、親が感じる以上に「いやだ」と感じている可能性がある子どもたちにとって、どのような影響があるのか、そして、どのような形での指針の発信が適切なのか、慎重に検証、議論していく必要があるだろう。
 
23 北海道大学(2021/6/28)https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210628_pr2.pdf(2023年1月23日アクセス)
24 文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症対策に関するQ&A(問3 学校でのマスクの着用が必要ですか。(令和4年9月20日更新)」(https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00020.html#q3、2023年1月23日アクセス)
25 毎日新聞(2022年1月20日)5類移行 吉村・大阪知事、学校での一律マスク着用「やめるべきだ」(https://mainichi.jp/articles/20230120/k00/00m/040/215000c、2023年1月23日アクセス)
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村松 容子 (むらまつ ようこ)

(2023年01月27日「基礎研レポート」)

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