コラム
2023年01月23日

小数について(その1)-小数の起源や記法等はどうなっているのか-

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現在における小数の表現

小数部の区切り
国際単位系(International System of Units: SI)の規定では、桁数が多い場合の読取りを容易にするため、小数部の桁数が4以上の場合は、3桁ごとに空白(通常は、半角スペース)で区切ることになっている(小数部の桁数が4の場合は、通常3桁と1桁とに分けない)。

具体的には、以下の通りである。

1234.5678 又は 1 234.567 8
小数点の記法
小数点としては、「点(.)」(又は「ピリオド」)を用いるケースと、「コンマ(,)」を用いるケースがある13。これは、国・地域等によって異なっているが、概ね、英国14、米国、カナダ、オーストラリア等の英語圏の国々、日本、中国、インド等では「点」を用い、フランス15、ドイツ、イタリア、スペイン等の非英語圏の大陸欧州の国々やブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー等の南米の国々では「コンマ」を用いている。

国際度量衡総会(世界で通用する単位系(国際単位系(SI))を維持するための会議)では、「点」を用いる方式を「英国式(British practice)」、「コンマ」を用いる方式を「フランス式(French practice)」と呼んでいる。
 
13 「点(.)」(又は「ピリオド」)は、英語では「dot」や「point」となるが、正確には「point on the line」とされ、「コンマ(,)」についても、「comma」ではなく、「comma on the line」と される。
14 英国(及び英連邦の国々)では、以前は「・(中点)」の使用が好まれていたが、「・(中点)」は既に乗算を示すために使用されていたため、国際単位系(SI)が小数点の記号としての使用を認めなかったため、英国は1968年に「点(.)」を選択した。
15 フランスでは、小数点の概念が導入された当時、「ピリオド(.)」がローマ数字を読みやすくするために既に印刷に使用されていたことから、「コンマ(,)」を選択した。
(1) 英国式
整数部の3桁ごとの区切りにコンマ「 , 」、小数部の3桁ごとの区切りに半角スペース「 」が用いられる。具体的には、以下の通りである。

123,456.78   0.123 456 789

(2) フランス式
整数部の3桁ごとの区切りにピリオド「 . 」、小数部の3桁ごとの区切りに半角スペース「 」が用いられる。具体的には、以下の通りである。

123.456,78   0,123 456 789

国際単位系(SI)では小数点について、英国式でもフランス式でも、どちらでもよいと規定しているが、桁の区切りについては、整数部でも小数部でも、スペースに限るとしていて、ピリオドやコンマの使用は禁じられている16。即ち、国際単位系では、以下の通りとなる。
123 456.78   0.123 456 789

なお、数字が+ 1 と −1 の間にある場合は、小数点の前に常にゼロ(0)を置く。国際単位系(SI)や日本のJIS(日本産業規格)で、小数点の前のゼロは省略してはならないと規定している。
 
16 なお、国際標準を策定するISO(国際標準化機構)やIEC(国際電気標準機構)などは、英語を含む全ての言語表記でフランス式を統一的に用いる、と定めているが、これに対して、英語圏の諸国は、英語表記では英国式に統一することを国際機関に働きかけているようだ。

日本における小数点

日本においては、明治時代にフランスから数字の書き方が導入されたため、当初は、小数点としてフランス式のコンマが用いられていたが、後に英国式のピリオドが用いられるようになった。

現在の日本では、アラビア数字の横書きの場合、殆どのケースでピリオド(英国式)が用いられる。ただし、アラビア数字の縦書きの場合、中黒「・」で表すことが多い。

また、漢数字を十進表記の位取り記数法で使用する場合、アラビア数字の 0 から 9 を単に〇から九に変えれば良いが、横書きでも縦書きでも小数点を中黒「・」で表す。例えば 32.1 は、数詞では「三十二点一」だが、位取り記数法では「三二・一」となる。

最後に

今回は、小数を巡る話題のうち、その起源や記法等について報告してきた。

何をもって、小数の起源とするのかについては、いろいろな考え方もあると思われるが、十進法による小数表示に関しては、概ね中国に由来して、それが中東に広がり、さらに欧州へと広がっていったようである。日本における小数の考え方も、基本的には中国に由来しているようである。その意味で、古代中国における文明の偉大さを改めて感じさせられる。

なお、今回の研究員の眼を執筆するにあたり、文中や脚注で引用させていただいたものに加えて、以下の著書等を参考にさせていただいた。

「カッツ 数学の歴史」 ヴィクター・J. カッツ著 共立出版

「メルツバッハ&ボイヤー  数学の歴史I ―数学の萌芽から17世紀前期まで」 
U. C. メルツバッハ、C.B. ボイヤー 著 朝倉書店 「数学の流れ30講 上 16世紀まで」 志賀浩二著 朝倉書店

次回は、「循環小数」を巡る話題について、述べることとする。

(2023年01月23日「研究員の眼」)

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