2023年01月11日

データヘルス改革による健康・医療データ利活用推進の状況

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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5――情報の取り扱い

患者の保健医療情報は、センシティブな情報である。医療機関等での患者の情報閲覧には、個人情報保護法にもとづき、患者の同意が必要となる。通常時は、医療機関等の受付で、顔(または暗証番号)で認証を行った後、「過去の診療・お薬情報を当機関に提供することに同意しますか」「過去の健診情報を当機関に提供することに同意しますか」といったメッセージが表示される。同意するかどうかは、医療機関に行く度に聞かれる。救急搬送時や災害時も、原則として本人の同意が必要となるが、緊急性の高く同意が取れる状況ではない場合は、ルールに基づいて閲覧することもある(後日、本人によって誰がどこで閲覧したかを確認することができる)。現在のところ、同意しても、閲覧できる診療・薬等の情報は過去3年に限られるほか、受療する度に同意/非同意を選ぶことができる。

また、自身の保健医療情報を活用できる仕組み(PHR)においては、自分で閲覧するための同意は不要であるが、民間や自治体のアプリ等にマイナポータルAPI等を介してデータを連携する場合は、サービス提供者に対して利用の同意をする必要がある。さらに、国が策定した「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針(2021年)」により、サービス提供者はデータの取り扱いを厳重に行っている。

6――おわりに

6――おわりに

以上のとおり、健康・医療に関する情報の電子化や共有によって、事務コストの軽減と医療費の削減するシステムが整ってきた。よりこのシステムを効果的に使うためには、患者がマイナンバーカードを使い、医療機関に自分の健康・医療情報を提供したり、マイナポータルを使って自分の健康に関心を持つことが欠かせない。

2021年10月にマイナンバーカードを保険証として利用しはじめた当初は、従来の保険証を使うよりマイナンバーカードを使った方が初診料等が高く設定されており、マイナンバーカード利用に対する「逆インセンティブ」と揶揄されたが、2022年10月にその逆インセンティブは解消し、カードリーダを設置している医療機関ではマイナンバーカードを使った方が安くなった。特に、2024年秋以降原則として保険証廃止するという方針の発表は、「マイナンバーカード取得状況と使途・今後利用したいサービス6で紹介したとおり、マイナンバーカード取得に向けた強いメッセージとなったと思われる。さらに、2023年4月からは、従来の保険証を使った場合の初診料が当面の間、更に高くなる等、マイナンバーカード利用者の初診料が有利にすることが検討されており、マイナンバーカードの取得・利用を促す力が強く働いている。

その一方で、マイナンバーカードやカードリーダは国が想定するほどは普及していない。そこで、次稿では、マイナンバーカード普及状況、医療機関におけるカードリーダ普及状況と、利用意向に関するアンケート調査の結果を紹介する。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

経歴
  • 【職歴】
     2003年 ニッセイ基礎研究所入社

(2023年01月11日「基礎研レポート」)

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