- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 若年層市場・マーケット >
- VTuberの魅力をわかりやすく解説してみた-VTuberを構成する2つの魅力
VTuberの魅力をわかりやすく解説してみた-VTuberを構成する2つの魅力
生活研究部 研究員 廣瀨 涼
1――「VTuberってなんだろう」
1「VTuber/バーチャルYouTuber」という言葉が生まれたのは2016年にデビューしたキズナアイが初出だが、2011年から「Ami Yamato」というYouTuberがバーチャルキャラクターを使用して活動している
2 https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=21279 CA Young Lab、2017年国内YouTuber市場調査を実施 2018/0130
3 VTuberというフォーマットを使用し動画配信活動をする人の事
4 https://dime.jp/genre/1477561/ @DIME「国内市場は500億円超、海外市場は1兆円!?VTuberがエンタメ界を席巻する3つの理由」2022/10/11
2――2つの魅力-(1) 見た目
5 東浩紀(2001) 『動物化するポストモダン オタクから見た日本社会』 講談社
6 漫画やアニメには大きな世界観(ストーリー)があり、その世界観を基に生まれたキャラクターの性格、境遇、人となり、容姿、ストーリーとの関りなど、物語消費におけるキャラクターは、そのキャラクターの持つコンテクストが消費されている。
7 これはVTuberに限ったことではなく、個々の作品ではなくキャラクターでデザインの魅力が選考されるようになった90年代以後、このような2次元イラストのデータベース消費は必然となっていった。特に2005年に流行語に選出された「萌え」という感情を引き出す2次元のイラストは、「黒髪ロング」「ネコミミ」「メイド服」など個人の萌えという感情を誘発する記号のブリコラージュによって成立してきた。
3――2つの魅力-(2) 提供されるコンテンツ
また多くの場合、イラストのデザインからVTuberにはアイデンティティやキャラクター(性格)が付与される。例えば「にじさんじ」に所属する人気VTuber「壱百満天原サロメ」の服装は、黒と赤のドレスで、髪型は肩口から腰にかけて縦ロールのロングヘアーと、昔の少女漫画にでてくるようなお嬢様を想起するような記号で構成されており、その見た目から、お嬢様に憧れる一般人というアイデンティティが設定として付与され、そのアイデンティティを守るかのように「ですわ」と語尾につけて話している。彼女の動画は「ゲーム実況」や「ラジオ配信」が中心だが、そのすべての動画で「ですわ」口調が徹底され中毒性があることから、「ですわ」は視聴者の間ではコメントやSNSを盛り上げるネットミーム8として消費されている。
もちろん人気があるVTuberがいる一方で、なかなか軌道に乗れないVTuberもいる。数あるVTuberの中から視聴対象になるためには、キャラクターデザインの差や話題性ももちろんあるが、投稿される動画のクォリティも重要な構成要素である。ここで言うクォリティとはバーチャルデザインの質や動画の見やすさ、編集の上手さももちろん上げられるが、何よりもそのVTuberのトーク力や知識量など、VTuberを演じる動画投稿主の技量であり、見た目がいいだけではファンがつかないのが実情である。
また動画配信視聴の楽しみ方として、視聴者は動画投稿者(ここではVTuber)にコメントを送ることができる。通常、このコメントを動画投稿者が読んで質問に答えたり、歌のリクエストを受けたりする。ゲーム配信では、VTuberのゲームプレイ内容に対して、視聴者が「あーでもない、こーでもない」と他愛のないヤジを飛ばしたり、ゲームプレイに助言などをし、それにVTuberが反応することで笑いが生まれたりする。VTuberの視聴者との「掛け合い」もコンテンツを成立させる要素と言えるだろう。このように、「かわいい」や「かっこいい」といった感情を誘発させる記号を組み合わせた「外見の部分」と「動画のカテゴリー」「声質」「アイデンティティ」「クォリティ」「視聴者との掛け合い」が組み合わさることで価値が創造され、「提供するコンテンツ」との掛け合わせからお気に入りのVTuberを見つける事がVTuber市場そのものの魅力といえるだろう。
8 インターネット上で、人が人の真似をして「特定のモノやコト」が広がっていく様子や「それ自体の事」を(インター)ネットミームと呼ぶ。ネット上で生まれた言葉やコンテンツの流行と考えたらわかりやすいかもしれない。
4――匿名性と覆面性
併せて、覆面性が故にネットに素性を明かすことができない人がコンテンツを発信できる点も魅力だ。諸般の事情で容姿を晒すことができない人でも表現者になれるため、YouTuberより入り口が広いといえるだろう。また、顔を出さないからこそ専門家やプロも参入しやすく、配信者にとってもメリットは大きい訳だ。
5――企業とVTuberの関わり方の変化
また、昨今では企業が独自でVTuberをプロデュースする「企業系VTuber」の例も増えてきている。例えばサントリーホールディングスの「燦鳥(さんとり)ノム」は、チャンネル登録者16万9,000人(2022年12月現在)の人気企業系VTuberの一人で、商品紹介だけでなく、歌やトークなどの動画を配信することで、新たな消費者との接点を生み出している。実際に『動画で紹介した商品を飲みました』『ノムちゃんを応援したいからサントリー製品飲んでいる』といった声もあり、推し活の一側面として考察するのならば、彼女が紹介している商品を購入して彼女を応援したいという応援消費は、間接的にサントリーそのものに対する親近感やロイヤリティを生んでいるといえる。他にもロート製薬株式会社の「根羽清ココロ」や株式会社サンリオの「なつめれんげ」など企業系Vチューバー業界に進出している企業も増えている。2022年3月19日には「根羽清ココロ」が主催する「企業系V人狼 2022」と称した企業系Vチューバーだけが参加するゲームライブ配信もされ、企業系Vチューバー独自のコミュニティも形成されている13,14。
9 2022年2月26日に活動休止しており、現在は表立った活動はしていない。
10 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000181.000021986.html 株式会社エビリー「2022年版!VTuberのバズるポイントは?最新トレンド調査」2022/10/26
11 ハイライト動画
12 https://www.kankomie.or.jp/report/detail_1248.html三重県観光連盟公式サイト 観光三重「周央サンゴさんが絶賛する「志摩スペイン村」を全力紹介!」2022/11/30
13 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000180.000044879.html「業界初!企業系VTuberだけのゲーム大会「企業V人狼2022」3月19日開催決定!」2022/03/14
14 特にTwitterでは、企業が運営する企業アカウントが商品紹介だけではなく、ネットミームを用いて、他のユーザー(消費者)と交流したり、他の企業アカウントとSNS上で交流し、その交流を他のユーザーに見せることで、面白い企業という感想をもってもらい消費者との新しい接点を創造している企業も多い。2019年6月21日にはタカラトミーのTwitterアカウントが主催となって、花王やサントリー、井村屋など16社のTwitterアカウント運営者が参加する「#中の人令和版人生ゲーム大会」が開催されている。企業系VTuberのように新しい接点を創造したり、他の企業アカウントとコミュニティを形成するなど従来から企業のSNSがインフルエンサーのような機能を持つことはあった。しかし、企業SNSは企業の名前を背負っていることもあり、過剰な消費者とのなれ合いや、ネットミームを使用することで失言を生んだり、企業アカウントとしてふさわしくない投稿が炎上することも多々あった。一方企業系VTuberは商品宣伝よりも歌やトークなどエンターテインメント性が求められており、SNSの企業アカウントと比較してそもそも期待されていることが異なるため、エンターテインメント性の提供という側面から見れば、SNSよりも適したプラットフォームであると考えられる。
03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
・令和6年度 東京都生活文化スポーツ局都民安全推進部若年支援課広報関連審査委員
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年05月10日
米国消費者の生命保険ニーズギャップは過去最大-コロナ禍以降、ニーズギャップは拡大- -
2024年05月10日
英国金融政策(5月MPC公表)-6会合連続で政策金利据え置きを決定 -
2024年05月10日
米労働市場の減速は続くか-中小企業を中心に労働需要が低下するほか、移民増加が賃金上昇圧力を緩和する可能性 -
2024年05月10日
投資部門別売買動向(24年4月)~個人は2カ月連続買い越し~ -
2024年05月10日
Japan Real Estate Market Quarterly Review-First Quarter 2024
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【VTuberの魅力をわかりやすく解説してみた-VTuberを構成する2つの魅力】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
VTuberの魅力をわかりやすく解説してみた-VTuberを構成する2つの魅力のレポート Topへ