2022年12月14日

男性の育休取得の現状-2021年は過去最高の13.97%、過半数は2週間未満だが長期化傾向も

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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1――はじめに~今年10月開始の「産後パパ育休制度」への期待

2021年に「育児・介護休業法」が改正され、今年10月1日から「産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)」が施行されている(図表1)。「産後パパ育休」は、男性が従来の育児休業に加えて新たに取得できるようになったもので、子の出生後8週間以内に4週間まで2回に分割して取得できる。従来の育児休業制度では1ヵ月前までに休業を申し出る必要があり、休業中は原則就業できなかったが、「産後パパ育休」では2週間前までに申し出ればよく、休業中も労使協定で合意した範囲で就業できるなど柔軟な仕組みとなっている。これにあわせて従来の育児休業制度も改正され、2回に分割取得が可能となった。よって、男性は子が1歳になるまで最大4回に分けて育休を取得できるようになり、妻の入退院時や復職時に家庭を支えやすいように制度環境が整えられている。

なお、事業主には対象者への周知義務などが課されるほか、従業員数1,000名以上の企業では育児休業等の取得状況を年に1回公表することも義務付けられている。

近年、「働き方改革」や「女性の活躍推進」政策が進む中、男性の育休取得も促進されてきたが、この「産後パパ育休」によって更なる向上が期待される。本稿では、厚生労働省「雇用均等調査」等を用いて、民間企業に勤める男性の育休取得の現状に注目し、男女差や産業等による違いを捉える。
図表1 男性の育児休業に関わる「育児・介護休業法」の主な改正点

2――育休取得率

2――育休取得率~民間企業の男性の育休取得率は13.97%、は金融・保険が首位で40.64%

1全体の状況~民間企業の男性の育休取得率は9年連続上昇で2021年は13.97%、女性は85.10%
民間企業に勤める男性の育児休業取得率は、8割を超える女性と比べれば格段の差はあるが、9年連続上昇しており、2021年は過去最高の13.97%にのぼる(図表2)。
図表2 育児休業取得率(民間企業) なお、コロナ禍がはじまった2020年は12.65%(2019年7.48%より+5.17%pt)へと、これまで(毎年+1%pt程度)と比べて大きく上昇している。近年の政府や企業等による環境整備や継続的な働きかけという土台の上に、コロナ禍でテレワークが浸透することで働き方が変容するとともに、生活や家族をより重視する志向が高まった影響があるのだろう1
 
1 内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月)によると、コロナ禍において家族の重要性をより意識するようになった割合は49.9%、就業者で生活を重視するようになった割合は50%、また子育て世帯の男性で家事・育児との向き合い方に変化のあった割合は55.9%(女性は65.7%)、未就園児のいる男性では67.2%(女性は67.7%)。
2|産業別の状況~男性は金融・保険が首位で40.64 %、男女とも取得率が高いのは情報通信
(1) 男性の育休取得率
産業別に2021年の男性の育休取得率を見ると、首位は圧倒的に「金融業、保険業」(40.64%)であり、全産業平均の約3倍にのぼる(図表3・4)。次いで、2位「鉱業,採石業,砂利採取業」(24.54%)、3位「サービス業(他に分類されないもの) 」(24.45%)、4位「情報通信業」(19.11%)、5位「複合サービス事業2」(18.00%)と続く。
図表3 産業別・男女別に見た育児休業取得率(民間企業、2021年)
図表4 産業別・男女別に見た育児休業取得率(%)の順位(民間企業)
なお、男性の育休取得率が首位の「金融業、保険業」に従事する男性就業者の割合は2.2%で、上位5位までの合計は16.7%3にとどまる(図表5)。一方、男性の就業者で比率が2位の「卸売業,小売業」の男性の育休取得率は5.81%で最下位であり、首位の「製造業」(21.8%)は15.23%、3位の「建設業」(12.0%)は14.01%でどちらも全産業を僅かに上回る程度である。つまり、男性の育休取得に積極的な産業では就業者数としては大きなインパクトはなく、就業者数として比較的大きなインパクトのある産業では男性の育休取得が進んでいない、あるいは平均的な取り組みにとどまっており、現在のところ、男性の育休取得は一部の産業では活発だが、就業者全体では大きな潮流にはなっていない。
図表5 産業別・男女別就業者数(2021年)
また、2018年から2021年にかけての男性の育休取得率の変化を見ると、16業種中13業種で上昇しており、特に2021年で取得率上位を占める「金融業、保険業」(+21.95%pt)や「サービス業(他に分類されないもの)」(+20.02%pt)では約2割上昇している。また、「教育,学習支援業」(+11.58%pt)や「複合サービス事業」(+11.53%pt)、「運輸業,郵便業」(+11.33%)、「製造業」(+10.93%)、「建設業」(+10.67%pt)、「学術研究,専門・技術サービス業」(+10.66%)、「鉱業,採石業,砂利採取業」(+10.60%など)でも約1割上昇している。一方、「宿泊業,飲食サービス業」(▲11.62%pt)や「電気・ガス・熱供給・水道業」(▲6.24%pt)などでは、むしろ低下している。

男性の育休取得率が高い産業では、既出レポート4でも述べたが、(1)ダイバーシティ経営の強化に向けて戦略的に男性の育休取得を促進している企業が多いこと、(2)育児休業等の両立支援制度を利用しやすい正規雇用者5が多いこと6、(3)職場に女性が多いなど従来から制度等の環境が整っていること、(4)裁量労働など柔軟な勤務制度が浸透し、業務における個人の裁量の幅が比較的大きいことなどがあげられる。一方で、取得率が低下した「宿泊業,飲食サービス業」では新型コロナ禍による需要の減少でパート・アルバイト等の非正規雇用者の雇用が減ることで、正規雇用者の業務負担が増すといった雇用環境の変化などが影響していることが考えられる。
 
2 郵便局や協同組合など。
3 ただし、本稿で分析対象外の「農業, 林業」や「漁業」、「公務」を含めて就業者に占める割合を見ると15%。
4 久我尚子「男性の育休取得の現状~2020年は過去最高で12.7%、5日未満が3割、業種で大きな差」、ニッセイ基礎研レポート(2021/9/7)
5 非正規雇用者が育児休業を取得する際、以前は(1)引き続き雇用された期間が1年以上、(2)子が1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない、という2つの条件を満たす必要があったが、2021年6月の「育児・介護休業法」の改正(2022年4月施行)にて(1)が撤廃された。一方で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 平成30年度厚生労働省委託事業 報告書」によると、女性非正社員が妊娠判明時に仕事と育児の両立の難しさで辞めた理由では「会社に産前・産後休業や育児休業の制度がなかった」(44.4%)が多く、非正規雇用者の育休取得においては制度環境の整備とあわせて認知も課題である。
6 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査 第10回」によると、男性の育児休業取得率が全産業平均を超える業種では、「サービス業(他に分類されないもの)」と「製造業」を除くと、男性雇用者のうち正規雇用者は7割以上を占めて高い傾向がある。
(2) 女性の育休取得率
同様に2021年の女性の育休取得率を見ると、首位は「鉱業,採石業,砂利採取業」(100.00%)だが、他産業と比べて就業者数が格段に少ない。また、2018年からの上昇率も大きいが(全産業で+2.90%ptのところ、当該産業では+47.00%pt)、これは育休取得環境が改善された影響もあるだろうが、就業者数が少ないために数値が変動しやすい影響を考慮する必要があるだろう。

次いで、2021年の女性の育休取得率は、2位「情報通信業」(97.60%)、3位「電気・ガス・熱供給・水道業」(92.60%)、4位「不動産業,物品賃貸業」(91.50%)、5位「複合サービス事業」(90.90%)までが9割を超えて続く。なお、女性の育休取得率は「生活関連サービス業,娯楽業」(77.90%)と「宿泊業,飲食サービス業」(63.70%)を除く16業種中14業種で8割を超える。また、最下位の「宿泊業,飲食サービス業」でも男性の首位(「金融業、保険業」:40.64%)を大幅に上回っており、男女の育休取得状況には大きな隔たりがある様子が見てとれる。

また、2018年から2020年にかけての変化を見ると、16業種中9業種で上昇しており、最も上昇幅が大きいのは、前述の通り「鉱業,採石業,砂利採取業」(+47.00%)、次いで「建設業」(+30.80%)、「運輸業,郵便業」(+23.80%)、「サービス業(他に分類されないもの)」(+12.10%)、「生活関連サービス業,娯楽業」(+11.10%)と1割以上で続く。

なお、上昇幅の大きな上位3つの産業では従来から就業者に占める男性の割合が高い7。よって、旧来型の日本の雇用慣習などが根強く残るような印象を受ける産業においても、育休を取得して就業を継続する女性が増えており、近年の「女性の活躍推進」政策や「働き方改革」の効果等によって、仕事と家庭の両立環境の整備が進んでいる様子がうかがえる。
 
7 図表4より各産業の男性の割合は「建設業」82.9%、「運輸業,郵便業」78.4%、「鉱業,採石業,砂利採取業」66.7%。
(3) 育休取得率の男女の傾向の違い
男女の育休取得率の産業別順位を比べると、「鉱業,採石業,砂利採取業」(男性2位、女性1位)や「情報通信業」(男性4位、女性2位)、「複合サービス事業」(どちらも5位)など、男女とも上位を占め、仕事と家庭の両立環境の整備を図る企業が増えている様子がうかがえる産業もあれば、「電気・ガス・熱供給・水道業」(男性14位、女性3位)や「不動産業,物品賃貸業」(男性15位、女性4位)、「金融業,保険業」(男性1位、女性11位)など男女の傾向が必ずしも一致しない産業もある。

男女の傾向が一致しない産業については、「金融業,保険業」では男女の育休取得率の差が最も小さいため(男性が女性より▲46.26%pt)、前述の通り、戦略的な男性の育休取得の促進によって男性の育休取得率が他産業より圧倒的に高い影響と見られる。

一方で、「電気・ガス・熱供給・水道業」(同▲84.33%ptで16産業中で最も差が大きい)や「不動産業,物品賃貸業」(同▲83.31%ptで2番目に差が大きい)では男女の育休取得率の差が8割を超えて大きくひらいており、男性の育休取得が進まない何らかの要因があると見られる。この要因としては、例えば、業務における男女の役割分担が固定化しているような組織では、両立環境の整備が進む中で女性は育休を取得しやすくなっていても、男性は依然として育休取得の希望を言い出しにくい雰囲気が根強く残っているなど、組織風土などの課題があげられる。

また、2021年の女性の育休取得率最下位の「宿泊業,飲食サービス業」については、2021年の男性の育休取得率は2018年と比べて10%を超えて大幅に低下したために男女差は比較的小さくなっている(同▲55.40%ptで2番目に差が小さい)。しかし、2018年の数値を見ると、男性は首位の一方、女性は13位と低く、男女の傾向が一致していない産業と言える。この要因としては、男女の雇用形態の違いがあげられる。男性は比較的育休を取得しやすい正規雇用者が多い一方、女性は雇用期間によっては制度の対象外となるような非正規雇用者が多い8とことがあげられる。
 
8 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査 第5回」によると、20~74歳の雇用者で「宿泊、飲食サービス業」従事者のうち男性は正規雇用者45.0%、非正規雇用者55.0%(男性はサンプル数が少ないため参考値)、女性は20.4%、79.6%である。
3事業所規模別の状況~大規模ほど育休取得率が高く、500人以上で男性17.0%、中小は人手不足感
事業所規模別に男性の育休取得率を見ると、規模が大きいほど取得率は高く、男性の育休取得の進む大企業傘下の事業所が取得率を押し上げている様子がうかがえる(図表6)。
図表6 事業所規模別に見た育児休業取得率(民間企業) 女性では100人以上の事業所では9割を超える一方、100人未満では7割台であり、男性と比べて育休取得が進んでいるだけに事業所規模による差が大きな様子がうかがえる。

2018年と2021年を比べると、男性では30人以上の事業所(+約1割)と比べて、育休取得率の低い30人未満(+5.45%pt)で伸びがやや小さく、小規模の事業所では休業中の代替要員の確保に課題のある様子がうかがえる。

一方、女性では、大規模な事業所では既に育休取得が進んでいるために、比較的育休取得率が低い小規模の事業所での伸びが若干大きくなっている。

なお、日本商工会議所および東京商工会議所「多様な人材の活躍に関する調査」(2021年9月)によると、中小企業における男性の育休取得促進に関する課題で最も多いのは「人員に余裕がなく、既存社員による代替が困難」(56.7%)で過半数を占め、次いで「専門業務や属人的な業務が多く、対応できる代替要員がいない」(38.2%)、「採用難で代替要員が確保できない」(32.1%)と続き、やはり代替要員の確保に課題のある企業が多い。
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

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