2022年12月06日

資産所得倍増プランのiDeCo改革で恩恵を受けられるのは誰?~年金改革ウォッチ 2022年12月号

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫

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1 ―― 先月までの動き

企業年金・個人年金部会は新メンバーでの初会合を開き、事務局が現状と課題等を説明し、各委員が課題意識などを発言した。経済前提に関する専門委員会も新メンバーでの初会合を開き、事務局が前回の財政検証における経済前提の設定等を説明し、各委員が議論が必要な点などを発言した。年金数理部会は複数の委員が交代し、4年ぶりにセミナー形式(ただし今回はオンライン)で開催され、前回のピアレビューについて意義や課題を意見交換した。首相官邸では、全世代型社会保障構築会議で厚生年金の適用拡大が、資産所得倍増分科会で個人型確定拠出年金(iDeCo)の見直しが議論された。
 
○社会保障審議会 企業年金・個人年金部会
11月14日(第19回) 部会長等の選出、私的年金制度(企業年金・個人年金)の現状と課題等
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29156.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金財政における経済前提に関する専門委員会
11月18日(第1回) 委員長等の選出、令和元年(2019年)財政検証における経済前提の設定等
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29173.html (資料)
 
○社会保障審議会 年金数理部会
11月28日(第93回) オンラインセミナー(ピアレビューと財政検証)
 URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00024.html (資料)
 
○全世代型社会保障構築会議
11月11日(第8回) テーマ別検討の議論の状況、各種団体へのヒアリング
 URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai8/gijisidai.html (資料)
11月24日(第9回) 全世代型社会保障の構築に向けた論点の整理
 URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai9/gijisidai.html (資料)
 
○新しい資本主義実現会議 資産所得倍増分科会
11月15日(第2回) 資産所得倍増プランの項目(案)
 URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/sisanshotoku_dai2/ (資料)
11月25日(第3回) 資産所得倍増プラン(案)*1
 URL https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/bunkakai/sisanshotoku_dai3/ (資料)
 
*1 報道によれば、11月28日の新しい資本主義実現会議で決定された。

2 ―― ポイント解説

2 ―― ポイント解説:資産所得倍増プランによる個人型確定拠出年金(iDeCo)の見直し

11月14日に企業年金・個人年金部会が1年半ぶりに開かれ、11月28日には新しい資本主義実現会議で資産所得倍増プランが決定された。本稿では、同プランに第2の柱として盛り込まれた個人型確定拠出年金(iDeCo)の見直しについて、内容を確認し、今後の論点を考察する。
1|見直し1:加入可能年齢を70歳に引上げ。公的年金との関係を断絶か?
資産所得倍増プランには「iDeCoの加入可能年齢を70歳に引き上げる」と明記され、「2024年の公的年金の財政検証に併せて、所要の法制上の措置を講じる」とされた。
図表1 iDeCoの加入要件の変遷(概要) iDeCoの加入要件は、これまで公的年金と関係づけて定義されてきた。現在、公的年金で70歳まで加入できるのは厚生年金のみであるため、70歳未満のほぼ全員にiDeCoの加入を認めるためには、公的年金と関係づけずにiDeCoの加入要件を定義することになるだろう*2
 
*2 70歳への引上げが厚生年金加入者に限定されることも考えられるが、同プランでは「働き方やライフスタイルが多様化していることに留意し…iDeCo 制度の改革を実施する」としているため、厚生年金加入者に限定されない可能性が高いと思われる。
2|見直し2:拠出限度額と受給開始年齢上限の引上げ。実現可能性や引上げ幅は不透明
資産所得倍増プランには、加入可能年齢に次ぐ項目として、拠出限度額と受給開始上限年齢の引上げも盛り込まれた。しかし、「…引上げについて、2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得る」となっており、引き上げられるか否かや引上げの具体的な内容は、今後の議論次第となっている。

iDeCoの拠出限度額は、加入対象者が拡大された2017年から企業型の確定拠出年金や確定給付型の企業年金に加入しているかで分かれていたが、今年10月と2024年12月の制度改正で一定程度は共通化されることになっている*3。今後の見直しとしては、iDeCoの拠出限度額としてのさらなる共通化(現在の月額2.0万円と2.3万円の統一)や、企業型確定拠出年金の拠出限度額との統合などが考えられる。

受給開始年齢の上限は、公的年金の繰下げ受給の上限年齢見直しに連動して、今年4月に70歳から75歳へ引き上げられた。今後は、加入可能年齢と同様に公的年金との関係が論点になると考えられる。

今回のiDeCo改革で60代は恩恵を受けそうだが、詳細や他の見直しは今後の議論にかかっている。
図表2 確定拠出年金の拠出限度額の推移 (2017/1~)
 
*2 2024年12月に実施される制度改正の詳細は、厚生労働省ホームページ本誌2020年12月号(検討段階の解説)を参照。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴
  • 【職歴】
     1995年 日本生命保険相互会社入社
     2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
     2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
    (2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

    【社外委員等】
     ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
     ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
     ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
     ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

    【加入団体等】
     ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
     ・博士(経済学)

(2022年12月06日「保険・年金フォーカス」)

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