2022年11月07日

インドネシア経済:22年7-9月期の成長率は前年同期比+5.72%~輸出の好調続き、成長加速

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インドネシアの2022年7-9月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.72%増(前期:同5.45%増)と上昇し、市場予想2(同+5.60%)を上回る結果となった。

7-9月期の実質GDPを需要項目別に見ると、内外需の拡大が成長の牽引役となった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.41%増(前期:同5.49%増)と堅調な伸びを維持した。費目別に見ると、輸送・通信(同12.87%増)とホテル・レストラン(同9.12%増)の伸びが加速した一方、食料・飲料(同2.65%増)や住宅設備(同2.30%増)、保健・教育(同1.04%増)が鈍化した。

政府消費は前年同期比2.88%減(前期:同4.86%減)となり、3四半期連続で減少した。

総固定資本形成は前年同期比4.96%増(前期:同3.07%増)と、伸びが加速した。機械・設備(同36.46%増)が6四半期連続の二桁増となる一方、建設投資(同0.07%増)が停滞した。

純輸出は成長率寄与度が+1.05%ポイントと、前期の+2.20%ポイントから縮小したが、引き続きプラス寄与となった。まず財・サービス輸出は前年同期比21.64%増(前期:同20.02%増)と大幅な伸びが続いた。輸出の内訳を見ると、財輸出(同19.11%増)とサービス輸出(同82.84%増)がそれぞれ好調だった。また財・サービス輸入も同22.98%増(前期:同12.37%増)と二桁増となり、輸出の伸びを上回った。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、主に第三次産業の拡大が成長の牽引役となった(図表2)。

第三次産業は前年同期比7.74%増(前期:同5.73%増)となり、伸びが加速した。内訳を見ると、ホテル・レストラン(同17.83%増)や運輸・倉庫(同13.65%増)、行政・国防(同12.42%増)、ビジネスサービス(同10.79%増)が二桁成長を記録したほか、構成割合の大きい卸売・小売(同7.43%増)や情報・通信(同6.88%増)、教育サービス(同4.46%増)が底堅い伸びとなった。一方、保健衛生・社会事業(同1.74%減)は減少、金融・不動産(同0.77%増)は伸び悩んだ。

第二次産業は前年同期比3.54%増(前期:同3.41%増)と伸びが僅かに加速した。内訳を見ると、電気・ガス・水供給業(同7.75%増)が改善したほか、構成割合の大きい製造業(同4.83%増)と鉱業(同3.22%増)は緩やかな伸びが続いた。建設業(同0.63%増)は停滞した。

第一次産業は前年同期比1.65%増(前期:同1.38%増)と小幅に上昇した。
 
1 2022年11月7日、インドネシア統計局(BPS)が2022年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

7-9月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の再開によりプラス成長が続いており、21年の成長率は前年比+3.69%(20年:▲2.07%)と上昇した。今年前半は成長率5%台で推移、そして今回発表された7-9月期は+5.72%と加速し、堅調な拡大が続いていることが明らかとなった。

7-9月期は内外需ともに拡大しているが、特に輸出の好調(前年同期比+21.64%)が景気の牽引役となっている。国際商品市況は年前半に頭打ちした後も高止まりしており、資源輸出国であるインドネシアの交易条件(輸出物価指数を輸入物価指数で除した比率)は改善している。従って、貿易を通じて海外からインドネシアへの所得流入が進み、国内の企業収益の改善や家計所得の向上を通じて内需の拡大に繋がっている。

またインドネシアは今年4月以降、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いて推移(7-9月の新規感染者数は平均3千人台)している(図表3)。政府は新型コロナ対策の活動制限(PPKM)についてジャカルタ首都圏のリスク区分を今年7月に「レベル1」(4段階のうち最も低い)に引き下げ、エッセンシャル分野以外の企業ではオフィスへの出社率が100%まで認められるようになった。このように7-9月期は活動制限の緩和が更に進んだ結果、人流の回復が続いた。実際に小売・娯楽関連施設への移動量をみると、7-9月平均はコロナ前比+14.3%となり、前年の同▲11.9%から大きく改善した。インドネシアでは補助金対象燃料の価格引き上げの影響により9月の消費者物価上昇率が+6.0%に上昇するなど(図表4)、インフレの加速が消費者の購買力に悪影響を及ぼし始めているが、リベンジ消費の動きもあり7-9月期の個人消費は前年同期比+5.41%と順調に拡大する結果となった。
(図表3)インドネシアの新規感染者数の推移/(図表4)インドネシアのインフレ率と政策金利
現在インドネシアのマクロ経済環境は良好であり、今後も堅調な経済成長が予想されるが、成長ペースはやや鈍化しそうだ。インドネシア中銀はインフレの加速を受けてコロナ禍の金融緩和策の縮小に舵を切っており、今年8月から3会合連続の利上げ(計1.25%ポイント)を実施、政策金利を4.75%まで引き上げている。米国の金融引き締めが続くなかでは、自国通貨安が進み、輸入インフレが更なる物価上昇を引き起こすため、今後も米国に追随した利上げが実施されるものとみられる。こうした高インフレと金融引き締めは内需を冷え込ませる恐れがあるほか、今後の世界的な景気後退リスクが顕在化した場合には貿易相手国の商品需要が減退するため、インドネシアの輸出主導の景気回復は難しくなる。7-9月期のGDP統計はインドネシア経済の順調な回復が確認できる結果となったが、こうした不確実要素が今後の同国経済の回復を妨げるリスクに注意する必要があるだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

(2022年11月07日「経済・金融フラッシュ」)

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