2022年10月27日

定年後の働き方と幸福度の関係

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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■要旨

国家公務員の定年は、2023年度から段階的に引き上げられ、2031年度には65歳となる。こうした中で、定年延長の議論が進んでいるが、長く働き続けることは人々の幸福度を高めるのだろうか。例えば、定年後に働き続けている人の方が、定年後に働いていない人よりも幸福度が高いという結果が示されたとしても、定年後に働き続けることが幸福度を高めることを示しているとはいえない。それは、健康状態が良い人や、仕事がもともと大好きな人が定年後も働き続けているために、定年後に働き続けている人の幸福度が定年後に働き続けていない人に比べて高いだけで、定年後に働き続けることによって、幸福度が高まっているわけではない可能性があるからだ。

そこで本稿では、定年直前と定年直後の人を対象とした独自のアンケート調査を用いて、定年後の働き方の違いの幸福度への影響を捉えることを試みた分析結果を紹介する。結果を先取りしてお伝えすれば、本稿の分析結果からは、定年後も働き続けることによって幸福度が高まるという示唆は得られなかった。反対に、公務員の間では、定年後に働くことを辞めることで、時間の余裕が生まれることを通して、幸福度が高まる可能性が示唆された。また、会社員の間では、定年後の働き方に関わらず、定年を迎えることによって幸福度が高まる可能性が示唆された。

■目次

1――はじめに
2――調査概要
3――定年前後の幸福度
4――定年後の働き方別に見る定年前後の幸福度
5――おわりに
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

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【定年後の働き方と幸福度の関係】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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