- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 景気ウォッチャー調査(22年8月)~現状判断DIは3か月ぶりに改善も、懸念は価格上昇
2022年09月08日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.現状判断DI、先行き判断DIともに上昇に転換

とはいえ、現状判断DIは50を依然として割り込んでおり、悪化のテンポが緩和された段階である点には留意する必要がある。景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIは42.9であり、小幅な改善(前月差0.4ポイント)にとどまっている。
また、先行き判断DIも50を依然下回っており、新規感染者数が高水準で推移していることや、従前からの資源価格高騰や円安によるコスト増や価格上昇の影響への懸念が下押し要因となっているとみられる。これらの要因は、今後とも景況感の改善の足を引っ張るかもしれない。
2.景気の現状判断DI:飲食が大きく改善
<回答者のコメント>
他方、家計動向関連の内訳では、住宅関連は前月から更に下落した(前月差▲1.5ポイントの39.4、3か月連続の悪化、23か月連続の50割れ)。建築資材の高騰などにより、景況感の悪化が継続している。
<回答者のコメント>
その他の家計動向関連の内訳である小売関連は、前月差1.4ポイント上昇の44.7(3か月ぶりの改善、3か月連続の50割れ)、サービス関連は、前月差0.3ポイント上昇の44.6(2か月ぶりの改善、2か月連続の50割れ)であった。
企業動向関連では、製造業、非製造業ともに上昇した。製造業は、前月差2.9ポイント上昇の47.0(3か月ぶりの上昇、8か月連続の50割れ)であった。前月からDIは上昇したものの、半導体部品等の供給制約や原材料価格高騰の影響を受けて、景況感の悪化は続いている。非製造業は、前月差3.2ポイント上昇の48.0(3か月ぶりの上昇、3か月連続の50割れ)であった。
<回答者のコメント>
雇用関連は上述のとおりだが、継続的な人手不足による求人増が好調の背景である。
<回答者のコメント>
- 新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に飲食を控える傾向があったが、最悪の状況は防げているように感じる。皆それそれが新型コロナウイルス感染症に対する意識を持ち、予防や防護をしており、飲食の際にも注意して食事をしている様子が見受けられる(南関東・その他飲食)
- 新型コロナウイルス感染症が拡大したが、国からの行動制限がないため客の行動は活発である(北陸・一般レストラン)
他方、家計動向関連の内訳では、住宅関連は前月から更に下落した(前月差▲1.5ポイントの39.4、3か月連続の悪化、23か月連続の50割れ)。建築資材の高騰などにより、景況感の悪化が継続している。
<回答者のコメント>
- 建築資材の高騰による住宅価格の上昇だけでなく、食品や生活用品を含めた物価上昇の影響で客は様子見の状況であり、消費者の購入意欲の減少を感じる」北陸・住宅販売会社)
- 建築に関しては、材料や製品の価格高騰や入手困難が続いているため、建築価格の上昇が続いている。その反面、所得は増えておらず、生活必需品の値上げもあり、自由に使える資金が減っている(九州・設計事務所)
その他の家計動向関連の内訳である小売関連は、前月差1.4ポイント上昇の44.7(3か月ぶりの改善、3か月連続の50割れ)、サービス関連は、前月差0.3ポイント上昇の44.6(2か月ぶりの改善、2か月連続の50割れ)であった。
企業動向関連では、製造業、非製造業ともに上昇した。製造業は、前月差2.9ポイント上昇の47.0(3か月ぶりの上昇、8か月連続の50割れ)であった。前月からDIは上昇したものの、半導体部品等の供給制約や原材料価格高騰の影響を受けて、景況感の悪化は続いている。非製造業は、前月差3.2ポイント上昇の48.0(3か月ぶりの上昇、3か月連続の50割れ)であった。
<回答者のコメント>
- 半導体不足による生産調整やエネルギーコストの高騰が収益を圧迫している(中国・非鉄金属製造業)
- 電子部品の需給問題により、機器生産が計画どおりとなるか不安な状況が続いている。また、原材料の価格高騰により利益が圧迫され、前年比で減益は避けられない(東海・電気機械器具製造業)
雇用関連は上述のとおりだが、継続的な人手不足による求人増が好調の背景である。
<回答者のコメント>
- 採用数の増加を目指す企業や目標とする採用数に至っていない企業が採用を強化しようとする動きがある(中国・求人情報誌)
- 技術者不足に拍車が掛かっており、今後もしばらくは続きそうである(近畿・人材派遣会社)
3.景気の先行き判断DI:観光などのサービスや飲食が大きく改善
<回答者のコメント>
小売関連は、前月から6.8ポイント上昇の48.8となり、2か月ぶりに改善したが、8か月連続で50を割り込んでいる。新規感染者数が減少に向かうことにより、来客数が増えることへの期待がある一方で、価格上昇への懸念が景況感を下押ししている。
<回答者のコメント>
その他の家計動向関連である住宅関連は、前月から5.6ポイント改善し、43.0となった。3か月ぶりに改善したが、10か月連続で50を割り込んでいる。住宅関連の現状判断DIと同様に、建築資材価格の高騰がその背景にあるとみられる。
また、企業動向関連では、製造業は、2か月連続に改善したものの(前月差3.3ポイント)、DIは47.7と3か月連続で50を下回っている。部品等の供給制約の解消への期待があるものの更なる長期化への懸念や、原材料価格高騰、それに伴うコスト増の価格転嫁への懸念が景況感を下押ししている。非製造業は、3か月ぶりに前月から3.4ポイント上昇したが、DIは47.0と3か月連続で50を下回った。
<回答者のコメント>
- ウィズコロナの浸透、新型コロナウイルス感染者の待機期間縮小などの緩和措置の拡大、全国旅行支援の開始などによって景気が良くなることを期待している(北海道・旅行代理店)
- 新型コロナウイルスの感染拡大第7波が、秋になり落ち着いてくれば、会食の機会も増えてくる(甲信越・高級レストラン)
小売関連は、前月から6.8ポイント上昇の48.8となり、2か月ぶりに改善したが、8か月連続で50を割り込んでいる。新規感染者数が減少に向かうことにより、来客数が増えることへの期待がある一方で、価格上昇への懸念が景況感を下押ししている。
<回答者のコメント>
- 新型コロナウイルスの新規感染者数の低減とともに、来客数増加に直結すると考えられる(北関東・百貨店)
- 可処分所得が伸びないなか、秋冬にかけて更なる値上げが予定されている。消費者は節約志向、倹約志向にならざるを得ない状況である(東北・スーパー)
- 衣料品は海外から入ってくる物が多く、円安で仕入単価が上がっているため、買い控えが起きる(近畿・衣料品専門店)
その他の家計動向関連である住宅関連は、前月から5.6ポイント改善し、43.0となった。3か月ぶりに改善したが、10か月連続で50を割り込んでいる。住宅関連の現状判断DIと同様に、建築資材価格の高騰がその背景にあるとみられる。
また、企業動向関連では、製造業は、2か月連続に改善したものの(前月差3.3ポイント)、DIは47.7と3か月連続で50を下回っている。部品等の供給制約の解消への期待があるものの更なる長期化への懸念や、原材料価格高騰、それに伴うコスト増の価格転嫁への懸念が景況感を下押ししている。非製造業は、3か月ぶりに前月から3.4ポイント上昇したが、DIは47.0と3か月連続で50を下回った。
<回答者のコメント>
- 半導体の動きが良くなっており、それに対する対策が採られているため、業界全体の動きが良くなっている。客からもそれなりの受注量を受けている(九州・一般機械器具製造業)
- 一部電機部品の入手難のため、装置や車等の生産が滞っているが、なかなか回復の兆しがみえず生産調整を余儀なくされている。しばらくは受注量の低下が予想される(東海・窯業・土石製品製造業)
- 原材料価格の高止まりや価格交渉の遅れにより、収益状況は悪化しており、回復のめどが立っていない。また、電気料金の燃料調整費の上限撤廃により、更に収益環境は悪化する見込みである(四国・鉄鋼業)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年09月08日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
山下 大輔
山下 大輔のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2023/08/22 | Japan's Productivity through the Lens of “Cheap Japan” | 山下 大輔 | 基礎研レポート |
2023/07/26 | 日本の物価は持続的に上昇するか-消費者物価の今後の動向を考える | 山下 大輔 | ニッセイ基礎研所報 |
2023/07/10 | 景気ウォッチャー調査(23年6月)~景況感の回復ペースが鈍化 | 山下 大輔 | 経済・金融フラッシュ |
2023/06/08 | 景気ウォッチャー調査(23年5月)~現状判断DIは4か月連続で上昇 | 山下 大輔 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年03月21日
勤務間インターバル制度は日本に定着するのか?~労働時間の適正化と「働きたい人が働ける環境」のバランスを考える~ -
2025年03月21日
医療DXの現状 -
2025年03月21日
英国雇用関連統計(25年2月)-給与(中央値)伸び率は5.0%まで低下 -
2025年03月21日
宇宙天気現象に関するリスク-太陽フレアなどのピークに入っている今日この頃 -
2025年03月21日
米国株式、3つの誤算
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【景気ウォッチャー調査(22年8月)~現状判断DIは3か月ぶりに改善も、懸念は価格上昇】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
景気ウォッチャー調査(22年8月)~現状判断DIは3か月ぶりに改善も、懸念は価格上昇のレポート Topへ