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- 景気ウォッチャー調査(22年7月)~新規感染者数急増で景況感は悪化。落ち込み幅は第6波よりも小さい
2022年08月08日
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1.現状判断DIは大幅に低下に転じ、先行き判断DIも2か月連続で悪化
8月8日に内閣府が公表した2022年7月の景気ウォッチャー調査(調査期間:7月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは43.8と前月から9.1ポイント下落した(2か月連続の悪化、4か月ぶりの50割れ)。また、2~3か月先の景気の先行き判断DIは42.8と前月から4.8ポイント下落した(2か月連続の悪化、2か月連続の50割れ)。
従前からの資源価格の高騰等や供給制約の影響による押し下げ要因に加え、新型コロナの新規感染者数の急増により、現状判断DIは前月から大きく落ち込んだ。ただし、落ち込み幅は、「第6波」の22年1月(前月差▲19.6ポイント)よりも小さく、感染拡大前の景況感の改善度合いが弱かったことに加え、まん延防止等重点措置などの行動制限が実施されていないことがその要因だろう。
また、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIは42.5であり、前月から▲5.2ポイント低下したものの、22年1月(34.1)や2月(33.0)よりは高く、水準自体の落ち込みも「第6波」よりは小さい。
他方、先行き判断DIは2か月連続で▲5ポイント近い落ち込みとなり、22年1月と同程度(22年1月の先行き判断DIは42.5)となった。行動制限が実施されず、重症者数も以前の感染拡大時ほど増加していないとはいえ、新規感染者数はこれまでで最多を更新していることなどから、先行きへの悲観が強まっているものとみられる。
従前からの資源価格の高騰等や供給制約の影響による押し下げ要因に加え、新型コロナの新規感染者数の急増により、現状判断DIは前月から大きく落ち込んだ。ただし、落ち込み幅は、「第6波」の22年1月(前月差▲19.6ポイント)よりも小さく、感染拡大前の景況感の改善度合いが弱かったことに加え、まん延防止等重点措置などの行動制限が実施されていないことがその要因だろう。
また、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIは42.5であり、前月から▲5.2ポイント低下したものの、22年1月(34.1)や2月(33.0)よりは高く、水準自体の落ち込みも「第6波」よりは小さい。
他方、先行き判断DIは2か月連続で▲5ポイント近い落ち込みとなり、22年1月と同程度(22年1月の先行き判断DIは42.5)となった。行動制限が実施されず、重症者数も以前の感染拡大時ほど増加していないとはいえ、新規感染者数はこれまでで最多を更新していることなどから、先行きへの悲観が強まっているものとみられる。
2.景気の現状判断DI:飲食、サービスが大きく落ち込み

内訳をみると、家計動向関連は42.6(前月差▲10.8ポイント、2か月連続の悪化、4か月ぶりの50割れ)、企業動向関連は44.3(同▲3.7ポイント、2か月連続の悪化、2か月連続の50割れ)、雇用関連は50.7(同▲8.9ポイント、2か月連続の悪化、6か月連続の50超え)と、全てで前月からDIが低下した。雇用関連は50を超えており、減速しつつも依然として改善が続いているが、新型コロナ新規感染者数の急増に加え、資源価格高騰や円安による値上げ、天候不順の影響などから、家計動向関連は50を割り込んだ。企業動向関連についても、感染者数急増に加え、原材料価格の高騰、供給制約などが負の影響を与えている。
<感染者急増の影響に言及した回答者の主なコメント>
<行動制限が実施されていないことの影響について言及した回答者の主なコメント>
<最終消費財・サービスの値上げの影響に言及した回答者の主なコメント>
<原材料価格高騰や価格転嫁に言及した回答者の主なコメント>
<供給制約の影響に言及した回答者の主なコメント>
- 7月前半は、大人数の宴会が入っていたが、新型コロナウイルスの新規感染者数が増加するにつれ、キャンセルも増え、宴会も減少している(九州・高級レストラン)。
- 新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が爆発的に増加しており、7月19日以降、夏の団体旅行や企業における出張のキャンセルが相次いで発生している(北陸・旅行代理店)
- 夏休みに入り、旅行者が目に見えて増えている。新型コロナウイルス新規感染者数は増加しているが、来客数は以前の水準に戻りつつある(北海道・百貨店)
<行動制限が実施されていないことの影響について言及した回答者の主なコメント>
- 新型コロナウイルスの感染第7波がいまだにピークアウトを迎えていない状況だが、政府の行動制限を行わない方針が人々の消費の下支えをしている感がある(南関東・パチンコ店)
- 直近は行動制限などがなく、販売量は徐々に回復している(北陸・一般小売店[鮮魚])
<最終消費財・サービスの値上げの影響に言及した回答者の主なコメント>
- 客が最近、商品の値上げに対して慣れてきたという印象を受ける。しかし、年金生活者やアルバイト生活者といった弱い人々に対するしわ寄せが大きいと感じている。そういった層、あるいは建築関係の仕事が減っているせいか、来客数が減ったという印象を受ける(東北・コンビニ)
- 生鮮食品の相場の上昇や、メーカーの値上げによる商品単価の上昇がみられるものの、1人当たりの買上点数が減少している。結果的に、買上単価は前年よりも低下する動きが続いている(近畿・スーパー)
<原材料価格高騰や価格転嫁に言及した回答者の主なコメント>
- 原材料価格の値上げ分等を販売単価へ転嫁できているのは 10~20%程度である。原価値上がりのスピードに対し、取引先との交渉が難航し販売価格の引上げ交渉は思うようには進んでいない(東北・出版・印刷・同関連産業)
- 急激な円安により輸入品が高騰し、材料単価やエネルギー単価が上がり製造コストが大幅に上がっている。しかし、業界全体としては不況でメーカー間の競争もあるため、製品単価に部品単価の値上がり分を転嫁できず難しい状況である(東海・電気機械器具製造業)
<供給制約の影響に言及した回答者の主なコメント>
- 自動車メーカーは、海外での部品調達がまだ安定しておらず、当初計画に比し減産を余儀なくされている。下請である当社も工場の稼働停止や減産等の影響を受けている(南関東・輸送用機械器具製造業)
- 新型コロナウイルス感染症対策の行動制限の緩和が進む一方で、半導体不足やウクライナ情勢の長期化に伴う供給制限、物流費や原材料費高騰の影響は大きく、引き続き厳しい状況が続いている(北陸・プラスチック製品製造業)
3.景気の先行き判断DI:感染者急増により先行きへの不透明感が増加
<回答者の主なコメント>
- 新型コロナウイルスの感染第7波も、9月頃には落ち着くと予想している(近畿・高級レストラン)
- 新型コロナウイルス感染症の第7波の影響が懸念されるが、何よりも最大の懸念事項は、食料品の更なる値上げが実施されることである。直接生活に影響する食料品の値上げが大きく、パンなどの大幅値上げも予定されており、日々の購入頻度の高い商品だけに影響は大きくなる(中国・スーパー)
- 新型コロナウイルス感染症の第7波の影響により一時的にキャンセルは発生しているものの、新規も同レベルで受注できている。今後、更なる行動規制等が発出されなければ現状とそれほど変わりはないと見込んでいる(沖縄・その他サービス[レンタカー])
- 物価高は止まらず、販売価格への転嫁を求めなければならない。ただし、円安の恩恵で受注量が5~10%上昇しているので、打ち消されていくのではないか(南関東・精密機械器具製造業)
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(2022年08月08日「経済・金融フラッシュ」)
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