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計量テキスト分析で振り返る住宅事業者の事業方針~「戸建て」はエコ住宅、「マンション」は用地価格等の上昇対応に注力。コロナ後はニューノーマルへの対応を模索

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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1.はじめに
そこで、本稿では、今後の住宅事業を考えるうえで、「住宅事業者」の事業方針の特徴を把握すべく、定量分析を行った。具体的には、「住宅事業者」を対象とした、マンション事業および戸建て事業の事業方針に関するアンケートの回答結果について、計量テキスト分析の手法を用いて実施した。
1 2022年4月は「+17.4」まで上昇し、「住宅・宅地分譲業」の景況感は大きく改善している。
2 吉田資「コロナ禍で多様化する「住まい選び」の基準」 (2020.12.3)
2.住宅市場動向の確認
国土交通省「建築着工統計調査」によれば、「マンション(分譲住宅)」の新設住宅着工戸数は、2006年まで年間20万戸を上回る水準で推移していた。しかし、2007年の建築基準法改正(2007年6月施行)に伴う建築審査の厳格化や2009年のリーマンショックの影響を受けて、2009年に7.7万戸まで大幅に減少した(図表―1)。2011年以降は、10万戸台を回復して推移しているものの、2000年前半と比べると、半分程度の水準にとどまっている。
一方、「一戸建(分譲住宅)」の新設住宅着工戸数は、2008年まで10万戸から15万戸の範囲で推移していた。2009年はリーマンショックを受けて10万戸を下回ったものの、その後は増加基調で推移し、2021年は14.1万戸(前年比+8%)まで回復した。2013年以降、「一戸建」の着工戸数は9年連続で「マンション」を上回り、その差は拡大傾向にある。
国土交通省によれば、「建設工事費デフレーター3(2015年度=100)」は、不動産ファンドバブル期の2005年から2008年にかけて大幅に上昇した(図表―2)。その後は、リーマンショックや東日本大震災等の影響を受けて下落したものの、2013年以降、アベノミクスによる景気回復や東日本大震災の復興需要、2021年東京オリンピックに向けた建築需要、人件費や資材価格の高騰等に伴い、上昇傾向で推移している。2021年はコロナ禍における供給制約などの影響から「建設工事費デフレーター」は、「木造住宅」が「116」(前年比+7%)、「非木造住宅」が「114」(前年比+6%)と一段と上昇した。
3 建設工事に係る「名目工事費額」を基準年度の「実質額」に変換する指標。建設工事にかかる費用の相場を示す。
3.住宅購入に対する意向
国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」によれば、「今後望ましい住宅形態」との質問に対して、これまで一貫して「一戸建て」が最も多く、次いで「戸建て・マンションどちらでもよい」、「マンション」の順となっている(図表―4)。ただし、「一戸建て」が減少(07年79%⇒21年54%)しているのに対して、「戸建て・マンションどちらでもよい」(9%⇒21%)と「マンション」(9%⇒16%)はともに増加している。
これを、都市の規模別にみると、「10万人未満の市」では、「一戸建て」が70%、「マンション」が8%であるのに対して、「政令指定都市」では、「一戸建て」が45%、「マンション」が26%となっている(図表―5)。全体では依然として「一戸建て」を望む人が多いものの、政令指定都市など人口の多い地域を中心に、「マンション」を望む人が増加している。
4.住宅事業者の事業方針に関する計量テキスト分析
本章では、「住宅事業者」の事業方針の特徴を把握すべく、以下の定量分析を行った。具体的には、市場経済研究所「全国住宅・マンション供給調査」(2007年~2021年)の「わが社の〇〇度戦略(住宅事業者を対象としたアンケート回答結果)」に掲載の、「マンション」と「戸建て」の事業方針について、計量テキスト分析4の手法を用いて実施した。分析ツール(ソフトウェア)にはKH Coder5を使い、単語の抽出に用い形態素解析エンジンと辞書に「ChaSen(茶筌)」を使用した。
4 (1)文章を単語(形態素)に分解し、(2)各単語の出現回数を分析単位(本稿では、各社アンケート回答結果)ごとに集計し、(3)その集計表(数値データ)を統計手法で分析する、という手法。
5 樋口耕一(2014)「社会調査のための計量テキスト分析」、ナカニシ出版
(1)単語の出現頻度
まず、単語の出現回数について、図表-11に頻出上位25語を示した。
最も多い単語は、「戸建て」が「住宅」(1165 回)、「マンション」が「商品」(247回)であった。「戸建て」と「マンション」に共通して多い単語は、「商品」、「価格」、「顧客」、「販売」、「開発」、「事業」、「土地」であった。「戸建て」・「マンション」ともに、商品価格や販売戦略、開発に関する事業方針を示す企業が多いことが分かる。
また、「戸建て」では、「省エネ」(7位・194回)、「エコ」(8位・178回)、「環境」(12位・134回)等、住宅の環境性能に関する単語が多い。一方、「マンション」では、「供給」(6位・168回)、「立地」(8位・118回)、「エリア」(10位・111回)等、供給エリアや立地に関する単語が多い。
(2022年08月25日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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