2022年06月30日

新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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1――はじめに

新型コロナ感染症の拡大は、人々の結婚したいという気持ちを強めた可能性がある1が、それはどうしてなのだろうか。本稿では、人々が新型コロナ感染症の影響で結婚したいと感じた理由について、独自の調査で確認した結果を紹介する。

結果を先取りしてお伝えすれば、新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた男性の間で、最も多くの人が選択した理由は、「結婚生活への憧れが高まったから」であった。一方、女性の間で最も多くの人が選択した理由は「老後一人でいることの不安が高まったから」であった。そして、男性の間でも女性の間も2番目に多くの人が選択した理由は「ひとりはさみしいと思うようになったから」であった。また、年齢層別にみると、40歳以下の回答者の間では、「結婚生活へのあこがれが高まったから」が最も多くの人に選択された理由であった一方、41歳以上の回答者の間では「老後一人でいることの不安が高まったから」が最も多くの人に選択された理由であった。
 
1 岩﨑敬子(2022/6/29)「新型コロナ新型コロナ感染症拡大によって、どんな人が結婚したいと感じたか」
(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71610?site=nli)

2――調査概要

2――調査概要

本調査は、2022年3月にWEB アンケートによって実施した2。回答は、全国の 18~64 歳の被用者(公務員もしくは会社に雇用されている人)の男女を対象に、全国 6 地区、性別、年齢階層別(10 歳ごと)の分布を、2020年の国勢調査の分布に合わせて収集した。回答件数は 5,653 件。このうち、本稿では、2022年3月時点で結婚していないもしくは結婚1年以内かつ、「新型コロナ感染症拡大の影響で、結婚したいと感じた」にあてはまると回答した453名の回答の分布を確認した(2022年3月時点で結婚していない人もしくは結婚1年以内の回答者は、3,186名)。
 
2 「2022年被用者の働き方と健康に関する調査」

3――新型コロナ感染症拡大の影響で、結婚したいと感じた理由

3――新型コロナ感染症拡大の影響で、結婚したいと感じた理由

調査時点で結婚していない人もしくは結婚して1年以内かつ、新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた人が選択した、結婚したいと感じた理由の分布(複数選択)が図1である。最も多くの人が選択した理由は、「結婚生活への憧れが高まったから」で、約48%の人が選択した。2番目に多くの人が選択した理由は、「老後一人でいることへの不安が高まった」からで約45%、3番目は「ひとりはさみしいと思うようになったから」で約43%の人が選択した。これらの上位3つの理由に比べると選択した人の割合は少ないが、「子どもが欲しいと思うようになったから」や「経済的な安定が必要と考えるようになったから」という理由も、それぞれ約2割の人が選択したことが確認できる。一方、「社会的な信用が得られると思うようになったから」や「世間体を気にするようになったから」といった理由を選択した人はそれぞれ1割未満であった。
図1. 新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由(全体, n=453)

4――新型コロナの影響で結婚したいと感じた理由の男女別分布

4――新型コロナの影響で結婚したいと感じた理由の男女別分布

図1で確認した新型コロナ感染症拡大の影響で結婚したいと感じた理由の分布を、さらに男女別に確認したのが、図2である。この図から、男性の間で最も多くの人が選択した理由は、「結婚生活への憧れが高まったから」で、約54%の男性が選択したことが分かる。また、女性の間で最も多くの人が選択した理由は、「老後一人でいることへの不安が高まったから」で、約49%の女性が選択した。また、男性の間でも女性の間も2番目に多くの人が選択した理由は、「ひとりはさみしいと思うようになったから」で、男性約42%、女性約45%が選択した。

男性と女性を比べると、男性の間では「結婚生活への憧れが高まったから」を選択した人の割合が女性に比べて大きい(男性54%、女性43%)。一方女性の間では「老後一人でいることへの不安が高まったから」(男性40%、女性49%)や、「経済的な安定が必要と考えるようになったから」(男性15%、女性23%)を選択した人の割合が、男性より大きい。
図2. 新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由(男女別)

5――新型コロナの影響で結婚したいと感じた理由の年齢別分布

5――新型コロナの影響で結婚したいと感じた理由の年齢別分布

次に、新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた理由の分布を年齢別に確認したのが、図3である。40歳以下の人の間で最も多く選択された理由は、「結婚生活への憧れが高まったから」で、約53%の人が選択した。一方、41歳以上の人の間で最も多く選択された理由は、「老後一人でいることへの不安が高まったから」で、約62%の人が選択した。また、どちらの年齢層でも、2番目に多くの人が選択した理由は「ひとりはさみしいと思うようになったから」で、40歳以下の人の間では約43%、41歳以上の人の間では約46%の人が選択した。

40歳以下と41歳以上を比較すると、40歳以下では、「結婚への憧れが高まったから」(40歳以下53%、41歳以上37%)や、「子どもが欲しいと思うようになったから」(40歳以下23%、41歳以上11%)を選択した人の割合が41歳以上の人に比べて大きい。一方、41歳以上では、「老後一人でいることへの不安が高まったから」(40歳以下38%、41歳以上62%)を選択した人の割合が、40歳以下の人より大きい傾向が見られる。
図3. 新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由(年齢別)

6――新型コロナの影響で結婚したいと感じた人の割合の性年齢別分布

6――新型コロナの影響で結婚したいと感じた人の割合の性年齢別分布

さらに、新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた理由の分布を40歳以下と41歳以上に分けて男女別に確認したのが、図4と図5である。まず、図4は、40歳以下の男女の分布を示している。40歳以下では、「結婚生活への憧れが高まったから」という理由が男女共に最も多く選択されているが、男性と女性を比較すると、特に男性の間でこの理由を選択した人の割合が大きいことが確認できる(男性59%、女性49%)。

一方女性の間では、「老後一人でいることへの不安が高まったから」(男性32%、女性42%)、「ひとりはさみしいと思うようになったから」(男性40%、女性45%)、「経済的な安定が必要と考えるようになったから」(男性17%、女性23%)を選択した人の割合が、どれも男性より大きい。

次に図5は、41歳以上の男女の分布を示している。41歳以上の人の間では、「老後一人でいることの不安が高まったから」が男女共に最も多く選択されているが、特に、女性の間でこの理由を選択した人が多いことが確認できる(男性56%、女性68%)。この他、女性の方が男性より選択した人の割合が大きい理由には、「経済的な安定が必要と考えるようになったから」が挙げられる(男性12%、女性21%)。

一方41歳以上の男性の間では、「結婚生活への憧れが高まったから」(男性44%、女性29%)と「子どもが欲しいと思うようになったから」(男性15%、女性6%)を選択した人の割合が、女性より大きい。
図4. 新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由(40歳以下男女)
図5. 新型コロナ感染症拡大によって、結婚したいと感じた理由(41歳以上男女)

7――おわりに

7――おわりに

本稿では、人々が新型コロナ感染症拡大の影響で結婚したいと感じた理由を、ニッセイ基礎研究所の独自の調査を用いて、性/年齢別に紹介した3。結婚したいと感じた理由として40歳以下回答者が最も多く選択した理由は、「結婚生活への憧れが高まったから」であった。コロナ禍で健康/経済への不安が高まり、さらに他人との交流機会が限られる中で、パートナーと支え合う生活への憧れを感じるようになった可能性が考えられる。

一方、41歳以上の回答者で結婚したいと感じた人の間では、その理由として「老後一人でいることへの不安が高まったから」を選択した人が最も多かった。41歳以上の人は、40歳以下の人に比べて、老後準備への意識が高いことが予想される。そのため、コロナ禍で健康/経済への不安が高まったり、他人との交流機会が限られたりしたことで、家族がいなくてさみしい思いをしたり、経済的に困難な状況になったり、病気で支えてくれる人が周りにいなかったりするといった、老後の一人暮らしのリスクをより実感するようになったことが、結婚したいという気持ちにつながった可能性が考えられる。

また、40歳以下の回答者の間では、女性に比べて男性の方が「結婚生活への憧れが高まったから」という理由を選択した人の割合が大きく、約6割が選択した。さらに、41歳以上の回答者の間では、男性に比べて女性の方が、「老後一人でいることへの不安が高まったから」を選択した人の割合が大きく、その約7割が選択した。こうした性別による違いの要因としては、今も残る性別役割分業意識4による結婚生活への期待の男女の意識の違いが挙げられるかもしれない。例えば、新型コロナ感染症拡大による将来への不安は、経済的/精神的に支え合うパートナーの存在への意識を高めた可能性があるが、経済的に家庭を支えるのは男性であるという性別役割意識がある場合は、経済的にパートナーと支え合うといった要因で結婚したいと感じる男性は、女性に比べて小さい可能性が考えられる。実際に新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた人の割合自体は、男性よりも女性の方が大きい傾向が見られている5。その結果、新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた人の間で見れば、結婚への憧れを理由として選択した男性の割合が女性より大きかったという可能性が考えられるかもしれない。
 
3 本調査は日本の住民全体からランダムサンプリングによって選ばれた人々を対象に行ったわけではなく、株式会社クロス・マーケティングのモニター会員を対象に実施したWeb調査であり、日本の住民全体の傾向とは異なる可能性がある点に注意が必要である。
4 内閣府男女共同参画局『令和4年版 男女共同参画白書』https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_print.pdf(2022年6月21日アクセス)
5 岩﨑敬子(2022/6/29)「新型コロナ新型コロナ感染症拡大によって、どんな人が結婚したいと感じたか」
(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=71610?site=nli)
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岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

(2022年06月30日「基礎研レポート」)

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