2022年06月29日

新型コロナ感染症拡大によって、どんな人が結婚したいと感じたか

保険研究部 准主任研究員 岩﨑 敬子

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6――新型コロナの影響で結婚したいと感じた人の割合の年収別分布

次に、図5に「新型コロナ感染症の拡大によって、『結婚したいと感じた』」にあてはまると回答した人の割合を、性/年齢層/年収別に示した。男性の間では、年収によって、新型コロナ感染症の影響で結婚したいと感じた人の割合に大きな違いが見られない。一方、女性は、40歳以下の人の間では、年収700万円以上の人の間でその割合が小さい。一方、41歳以上の女性の間では、700万円以上の人の間で、その割合が大きい6
図5.「新型コロナ感染症の拡大によって『結婚したいと感じた』」にあてはまる人の割合(性/年齢/年収別)
 
6 学歴等を考慮した線形確率モデルの推計(参考資料2参照)では、41歳以上の女性の間で、年収300万円未満の人と年収700万円以上の人の間に統計的に有意な違い(有意水準10%未満)は見られなかった。学歴と年収の相関により、学歴を考慮した場合は41歳以上女性の間で年収700万円以上が統計的に有意にならなかった可能性がある。参考資料2の(6)を学歴の変数を除いて推定すると、年収700万円以上は、有意水準10%で正に有意である。

7――どんな人が新型コロナ感染症拡大の影響で結婚したいと感じたか

7――どんな人が新型コロナ感染症拡大の影響で結婚したいと感じたか

本分析の結果からは、新型コロナ感染症の拡大によって、人々の結婚への意識は高まり、特に40歳以下の女性、その中でも大卒者の間で結婚したいと感じた人の割合が大きかった。一方で40歳以下の女性でも年収700万円以上の人は新型コロナ感染症の拡大によって結婚したいと感じた人の割合は小さかった。参考資料1と2に掲載した「新型コロナ感染症の拡大によって、『結婚したいと感じた』」にあてはまると回答した場合に1、そうでない場合に0を取るダミー変数を被説明変数とし、性別、年齢、雇用形態、学歴、年収を説明変数とした線形確率モデルを推定した結果からも同様の傾向が確認できる。

新型コロナ感染症の結婚の意識への影響がこれらの要因で異なる理由については今後の分析課題であるが、男性の方が女性よりも新型コロナ感染症拡大によって結婚したいと感じた人の割合が小さかった要因の1つには今も残る性別役割分担意識7の影響が考えられるかもしれない。例えば、新型コロナ感染症拡大による将来への不安は、経済的/精神的に支え合うパートナーの存在への意識を高めた可能性がある一方、妻子は男性が養うべきといった性別役割分担意識に基づく役割を果たすことへの男性の不安にもつながる可能性が考えられる。こうしたことから、男性の間では女性ほど結婚への意識の高まりが見られなかった可能性が考えられるかもしれない。
 
7 内閣府男女共同参画局『令和4年版 男女共同参画白書』https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/pdf/r04_print.pdf(2022年6月21日アクセス)
参考資料1. 新型コロナ感染症の拡大によって、結婚したいと感じた人の傾向(1)
参考資料2. 新型コロナ感染症の拡大によって、結婚したいと感じた人の傾向(2)
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保険研究部   准主任研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
応用ミクロ計量経済学・行動経済学 

経歴
  • 【職歴】
     2010年 株式会社 三井住友銀行
     2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
     2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
     2021年7月より現職

    【加入団体等】
     日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
     博士(国際貢献、東京大学)
     2022年 東北学院大学非常勤講師
     2020年 茨城大学非常勤講師

(2022年06月29日「基礎研レポート」)

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