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資金循環統計(22年1-3月期)~個人金融資産は2005兆円と2000兆円の大台を維持、企業の現預金は過去最高、海外勢が日本国債売り
経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志
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1.個人金融資産(22年3月末):前期比では10兆円減
四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(昨年12月末)比で10兆円減と8四半期ぶりに減少した。例年、1-3月期は一般的な賞与支給月を含まないことから資金の純流出が発生する傾向がある3。今回も例年をやや下回るものの、3兆円の資金純流出があった。さらに、この間に米利上げへの警戒やロシアによるウクライナ侵攻を受けて株価が下落したことで、時価変動の影響がマイナス7兆円(うち株式等がマイナス6兆円、投資信託がマイナス2兆円)発生し、資産残高の目減りに繋がった(図表1~4)。
ちなみに、足元の4-6月期については、一般的な賞与支給月を含むことから、例年、10兆円余りの規模で資金の純流入が進む傾向がある。この間に進んだ大幅な円安も海外資産の時価上昇に繋がっているとみられる。一方、世界的な金融引き締めによる景気減速懸念によって、4月以降、内外株価が下落していることが資産の目減りをもたらしているはずだ。
こうした諸要因を考慮すると、月末にかけて株価が急落しない限り、6月末時点の個人金融資産残高は3月末比でやや増加する可能性が高い。
1 今回、年に一度の訴求改定に伴い、2005年以降の計数が遡及改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
3 直近5年(2017~2021年)の1-3月期の平均は5.0兆円減。
2.内訳の詳細:家計のリスク性資産への投資が進む
預金金利がほぼゼロであるにもかかわらず、引き出し制限があって流動性の低い定期性預金からの資金流出には歯止めがかかっていない。定期性預金の残高は未だ387兆円もあるため、今後も大幅な資金流出が避けられない。
次に、リスク性資産への投資フローについては、代表格である株式等が0.4兆円の純流入(前年同期は0.6兆円の純流入)となったほか、投資信託も1.2兆円の純流入(前年同期は1.8兆円の純流入)となった(図表6)。株式は相続対策などから従来、純流出傾向が続いていたが、直近1年間では0.8兆円の純流入に転じている。また、投資信託の純流入は8四半期連続で、この間の純流入額は9兆円弱に達している。外貨預金からの純流出は続いているものの、確定拠出年金内の投資信託が継続的に純流入となっているほか、直近では対外証券投資も純流入に転じている。全体から見れば限定的な動きではあるが、家計のリスク性資産への投資が従来よりも進みつつあると評価できる。直近では、国内でもインフレ懸念がやや高まったことで、家計の一部で資産の現預金偏重に対するリスクが意識され、リスク性資産への投資配分が引き上げられた可能性がある。
4 直近5年(2017~2021年)の1-3月期の平均は5.2兆円減。
3.その他注目点: 家計の資金余剰は高止まり、企業の現預金は過去最高、海外勢が国債売り
主な経済主体の保有状況を見ると(図表13)、最大保有者である日銀の国債保有高は531兆円と12月末から1兆円の増加に留まり、全体に占めるシェアも43.3%(12月末は43.4%)とわずかに低下した。1月から2月にかけて、国債買入れペースを抑えていたことが影響した。
また、海外部門の保有高は12月末比9兆円減の167兆円となり、シェアも0.8%ポイント減の13.6%となった。残高、シェアともに過去最高を記録した12月末から落ち込んでいる。9兆円減という規模はリーマンショック後である2008年10-12月期(12.5兆円減)以来の規模となる。世界的にインフレ・利上げ懸念から債券投資への慎重姿勢が強まったうえ、日銀による金融緩和縮小観測も台頭したことで、海外投資家がそれまで積み増していた日本国債の売却に動いたとみられる。
一方、銀行など預金取扱機関の保有高は昨年12月末比19兆円増の183兆円となり、海外勢の残高を再び上回った。全体に占めるシェアも15.0%(12月末は13.4%)と上昇している。銀行勢などは、金利上昇リスクの高まった米国債投資を手控え、同リスクの低い日本国債への配分を引き上げたとみられる。
5 2017~19年の四半期平均は3.9兆円の資金余剰
6 2017~19年の四半期平均は4.1兆円
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03-3512-1870
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
(2022年06月27日「経済・金融フラッシュ」)
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