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中国経済:景気指標の総点検(2022年夏季号)-4-5月期は前年比▲1%のマイナス成長も6月は回復へ

三尾 幸吉郎
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1. 中国経済の概況
他方、インフレの状況を見ると、国際的な資源エネルギー高を背景に1-5月期の工業生産者出荷価格(PPI)は前年同期比8.1%上昇したものの、消費者物価(CPI)は同1.5%上昇と22年の抑制目標(3%前後)を下回る水準で安定している(図表-3)。但し、今後のCPIは上昇傾向を強める可能性が高い。ウクライナ情勢の緊迫化を背景に、引き続き食糧・エネルギーに上昇圧力が掛かるのに加えて、これまでCPI上昇を抑制する要因だった豚肉が下げ止まりつつあるからだ。
2. 供給面の3指標
3. 需要面の3指標
投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると(図表-9)、第2波が襲来する前の1-3月期には前年同期比9.3%増と高い伸びを示していたが、上海市がロックダウンされたあとの4-5月期には同1.6%増(推定1)に減速した。それでも製造業とインフラ投資が堅調だったためプラス圏を守ったが、不動産開発投資は同10.9%減と大幅マイナスとなった。先行指標となる分譲住宅の新規着工を見ても持ち直す気配がなく、低迷がしばらく続きそうだ(図表-10)。
輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-11)、第2波が襲来する前の1-3月期には前年同期比2桁増と堅調だったが、ロックダウンで上海港が機能不全になった4月には同3.9%増に鈍化した。但し、復工復産に動き出した5月には同16.9%増と順調な回復ぶりを示した。
1 中国では、統計方法の改定時に新基準で計測した過去の数値を公表しない場合が多く、また1月からの年度累計で公表される統計も多い。本稿では、四半期毎の伸びを見るためなどの目的で、中国国家統計局などが公表したデータを元に推定した数値を掲載している。またその場合には“(推定)”と付して公表された数値と区別している。
4. その他の4指標と景気の総括
需要面の指標は3つとも“〇”となった。消費の代表指標である小売売上高は、昨年11月以降6ヵ月連続で“×”だったが、5月には前月比0.05%増と低位ながらも3ヵ月前の同0.19%減を上回った。投資の代表指標である固定資産投資も、5月には前月比0.72%増と3ヵ月前の同0.26%増を上回った。また、昨年11月以降6ヵ月連続で“×”だった輸出も、5月には前年同月比16.9%増と3ヵ月前の同16.3%増を上回った。他方、供給面の指標はそれほど良くない。鉱工業生産は前月比5.6%増と3ヵ月前の同0.51%増を上回り“〇”となったものの、4月に同5.8%減と大きく落ち込んだ反動に過ぎず、製造業PMIと非製造業PMIはともに“×”のままである。
その他の景気指標を見ると、通貨供給量(M2)が8ヵ月連続で“〇”となったものの、その他の3指標は“×”となった。昨年9月までのM2は、中国政府(含む中国人民銀行)が金融を引き締め気味にしていたため “×”が目立ったが、その後は景気を支援する側に転じたため“〇”が続いている(図表-13)。他方、長らく“×”が続いていた電力消費量は今年2~3月に“〇”に転じ上昇トレンド入りかと見られたが、上海市のロックダウンで頓挫し“×”に戻ってしまった。特に工業部門は5月も前年割れが続いており、回復の鈍さを示した(図表-14)。同じく“×”が続いていた道路貨物輸送量も、今年1~2月に“〇”に転じ上昇トレンド入りかと見られたが、3月以降は“×”となっている(図表-15)。そして、今年2月以降3ヵ月連続で“〇”となっていた工業生産者出荷価格(PPI)も5月には“×”に転じた。
最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、実質成長率を推計した「景気インデックス」を確認しておこう(図表-16)。コロナショック下にあった20年2月には前年同月比12.6%減に落ち込み、それが峠を越えた20年4月にはプラスに転じ、21年1月には同22.0%増とV字回復を遂げることとなった。その後は中国政府が持続可能性を重視するようになったため緩やかに減速し、21年12月には前年同月比3.6%増まで低下したものの、22年1月には回復し始め、1-3月期の成長率は前年同期比4.8%増と前四半期(4.0%)を上回った。ところが、COVID-19の第2波で3月末に上海市がロックダウンされると失速、4-5月期の景気インデックスは前年同期比▲1%とマイナス成長に転じた。しかし、6月には復工復産が進展し4-5月期に積み残した分の生産が加速したのに加えて、インフラ投資の加速で建築業が動きだし、リベンジ消費にも京東集団が実施したネット通販セール(618)が前年比10.3%増と予想外の好調を示すなど動意が見られたため、6月の景気インデックスはプラス成長に戻るだろう。但し、どの程度かを計量的に把握するのは難しいだけに、7月15日発表の4-6月期成長率に注目したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年06月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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