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“タピオカブーム”と“ピスタチオブーム”後編-そもそもピスタチオブームなんてあったのか
生活研究部 研究員 廣瀨 涼
2――タピオカパン、タピオカグミ…
一方ピスタチオブームにおいては、確かにジェラートをきっかけに昨今のようなピスタチオ市場の広がりが生まれたわけだが、ピスタチオ愛好者からすると、ピスタチオ商品が市場に増えたきっかけを生んだのがジェラートに過ぎず、必ずしもジェラートである必要はなかった。それ故に、ピスタチオジェラートの市場性が見出されると、素材そのもののピスタチオに焦点が当てられ、ピスタチオジェラートにとどまらず、ピスタチオを使用した製品カテゴリーの拡大というフェーズを迎えたのである。タピオカと異なり、他の製品でタピオカ(ミルクティー)を再現するという事よりも、ジェラートに限らず他の製品においてもピスタチオの味が付与された(使われた)という事の方が自然な事であり、消費者にとっても受け入れやすいのである。
また、タピオカの場合はブームそのものが「タピオカ」をブランド化させていったが、「ゴンチャ」や「The Alley」など専門店そのものがブームとなることはなかった。それらの店舗は、ブームを先導する人気店という位置づけの方が大きかったのではないだろうか(「タピオカと言ったらゴンチャ」の様に)。しかし、ピスタチオにおいては、2014年以降の市場拡大をブームと捉えるのならば、その中でもパピコやポリコムのピスタチオスプレッドのように特定の商品がブーム(ヒット)になることもあった。これは、味そのものが差別化の手段となっており「おいしければ消費したい」という、他人を顧みない(ブームに左右されない)個人完結型の消費欲求が根底にあるからなのである。
3――「#ピスる」を筆者流に分析する
2 もちろん「ググる」のようにそれ以前に「名詞+る」の組み合わせにより造語としての動詞が生まれていたが、飲食において「タピる」という言葉は広く浸透し、インスタ映えやハッシュタグなどSNSに投稿することが主な目的として使われていたことを考慮すると、同じように飲食カテゴリーでSNSでの投稿を意識して用いられている「ピスる」は「タピる」という語の影響を大きく受けていると推量できる。
3 ピスタチオ同様、SNSをきっかけに愛好者が表層化した例は多々ある。中でもチョコミント味はその代表と言えるのではないだろうか。筆者自身サーティーワンアイスクリームでチョコミントをトリプルで頼むほどのチョコミントファンであるが、チョコミントが嫌いな人からは総じて「歯磨き粉味じゃん」と言われる。このチョコミント愛好者“あるある”は筆者以外の多くのチョコミント愛好者も同じような経験をしており、そのような不満はSNSで投稿をすることで同じ愛好者から共感を得ることができるわけである。チョコミント愛好者の中ではチョコミントと集団を示す“党”をもじった「チョコミン党」という言葉がSNS黎明期から使われている。2010年前後において「チョコミン党」という言葉は、好きだという事を理解されない事や、チョコミントフレーバーの商品が少ないことに対する嘆きと共に投稿されていた。しかし、SNSによってチョコミント愛好者が表層化したことでチョコミントフレーバーの商品数が増加し、2016年頃にはチョコミントブームが起こった。その流れを汲んでチョコミン党という言葉は愛好者の中でもデータベースの様に情報交換の手段として使われるようになったのだ。昨今では2021年4月にはファミレスチェーン「ココス」が「チョコミン党フェア」なる期間限定のフェアを開催するなど、ネットのみならず現実社会でもチョコミントファンの消費を喚起する言葉として使われている。
4 一方で、「全ての○○好きの人に伝えたい」という文言を使って情報を周知させようとする者もいる。このような投稿の多くは帰属欲求ではなくバズることによる快感や、自慢したい、知っているという顕示的欲求が根底にあるが、「全ての○○好きの人に伝えたい」という名目があることで、自己満足な投稿で溢れるSNSにおいて、「私はあなたにとって有益な情報を提供している」、という印象を残すことができる。
4――まとめ
03-3512-1776
- 【経歴】
2019年 大学院博士課程を経て、
ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・経済社会学会
・コンテンツ文化史学会
・余暇ツーリズム学会
・コンテンツ教育学会
・総合観光学会
(2022年06月15日「基礎研レポート」)
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