- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 資産運用・資産形成 >
- 資産運用 >
- 時を駆けるか中高年-時間は夢を裏切らないか
時を駆けるか中高年-時間は夢を裏切らないか
基礎研REPORT(冊子版)6月号[vol.303]
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
このレポートの関連カテゴリ
時間の流れは一定だろうか
時間があっという間に過ぎ去ってしまうという意味で、日本では古くから「光陰矢の如し」と表現して来た。他の国でも同旨の表現は多く、中国では「光阴似箭」などと言うらしく、むしろこちらが本家である。英語でも“ Time and tide wait for no man.” などの慣用句を大学受験に際して暗記したことが懐かしい。つまり、時が早く過ぎてしまうことを、世界中の人々が実感していることは間違いない。
こうした感覚的な表現に対して、時間の流れる速さは一定であると、物理学者は反論するだろう。かつて一日の長さは地球の自転周期を基に定められていた。しかし、そもそも自転周期自体が24時間ちょうどでないこともあって、現在はセシウム原子時計で観測される周波数を基に定義された「秒」が時間を計測する際の基準にされている。
また、年についても、当初は地球の公転周期に基づいて定められたものだが、遅くともユリウス暦の採用される以前の紀元前には1年=365日ちょうどでないことが認識されている。加えて、地球の公転周期自体すら必ずしも一定でない。
実際の時間と体感する時間
さらに、主観的な時間の価値は、観測する自然人の年齢によっても影響されると考えられる。つまり、10歳の小学生にとっての1年は、これまでの人生に対して1/10=10%にも相当する(厳密には物心ついてからで、より大きなウェイトになる)。そのため、子供は1年を長いと感じる。一方、50歳の中高齢層にとっての1年は、1/50=2%にしか相当しない。結果として、年をとってしまうと、流れる時間の価値が相対的に小さくなってしまっており、時の流れを早いと感じてしまうのではないか。
時間を味方につけること
『自助・共助・公助』という表現は、個々人の努力を求めるものとして反発を受けているが、高齢化が進行し人口が減少しつつある日本において、公助に限界があることは自明のことである。共助や自助を活用しない限り、将来の老後生活は厳しいものとなることが必至だろう。
そのためには、時間を味方につけることこそが重要である。長期に及ぶ日銀の低金利政策を受けて、投資による利回り獲得よりも、暗号資産やCFD(差金決済)取引などの投機的な手段による一攫千金が注目されて来た。しかし、物価や海外の金利上昇によって、日本国内の金利水準も超長期年限を中心に上昇の兆しが見られはじめている。
金利が0%ならば複利効果を得ることは出来ないが、プラスの利回りならば、複利効果によって資産の増殖を実現できる。7%で10 年間運用することが出来れば、元利金合計がほぼ倍になること(1.0710=1.967)が知られている。ここまでの高利回りは実現出来なくても、金利水準の上昇によって資産運用による果実の拡大が期待できる。
時の過ぎ行くままにせず、時間を味方につけ利用することで、将来に備えてはどうだろうか。時間は決して夢を裏切らないものと信じたい。
(2022年06月07日「基礎研マンスリー」)
このレポートの関連カテゴリ
03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
德島 勝幸のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/07/03 | 見直しを迫られる国内債券パッシブ運用 | 德島 勝幸 | ニッセイ年金ストラテジー |
2024/06/07 | アセットオーナー・プリンシプルへの期待-資産運用高度化の要 | 德島 勝幸 | 基礎研マンスリー |
2024/05/27 | アセットオーナー・プリンシプルへの期待-資産運用高度化の要 | 德島 勝幸 | 研究員の眼 |
2023/07/05 | 公的年金の「100年安心」は制度について | 德島 勝幸 | ニッセイ年金ストラテジー |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2025年01月23日
貿易統計24年12月-10-12月期の外需寄与度は前期比0.3%程度のプラスに -
2025年01月22日
トランプ政権始動、円相場の行方は関税次第に~マーケット・カルテ2月号 -
2025年01月22日
日本の株式インデックスは長期投資に向いているのか~なぜ海外の主要な株式インデックスは上昇してきたのか -
2025年01月22日
社会的インパクトをもたらすスマートシティ-CRE(企業不動産)を有効活用したグリーンフィールド型開発に期待 -
2025年01月22日
英国雇用関連統計(24年12月)-賃金上昇率は前年比5.2%台で推移
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【時を駆けるか中高年-時間は夢を裏切らないか】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
時を駆けるか中高年-時間は夢を裏切らないかのレポート Topへ