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高齢化と政府財政と世代間格差
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
高齢化と人口減少によって、社会保障政策のあり方が大きな影響が受けることは必至である。既に意識されているように、高齢者の増加によって介護や年金といった直接的な経費負担の増加が生じるのと同時に、医療費についても同様に政府財政を圧迫することとなる。後期高齢者医療者制度によって、高齢者医療費の増加による影響は組合健保にも波及しており、既に、国全体の問題となっている。年金については、マクロ経済スライドの導入によって、少子高齢化の進展を現在の高齢者にも負担してもらう仕組みとなっているが、反動として、自営業者を中心とする第1号被保険者の国民年金保険料納付率の低下を招いている。これが老後破産等と呼ばれる現象の一つの要因であり、また、公的及び私的年金からの受給額が十分でない層からは、生活保護の申請増加が見られており、社会保障費の中での費目の付け替えとしかなっていない可能性がある。今後の医療・介護費用の増加は必須であり、年金におけるマクロ経済スライドのような仕組みがビルトインされていないため、高齢化の進展によってますます国家財政を圧迫することになろう。
政府財政の先行きを考えるには、社会保障費の増大に加えて、国債費の膨張に対する懸念を忘れてはならない。企業会計では考え難いことであるが、国債費は元本の償還費用と利息支払いとが合わさったものである。国債の償還には60年ルールが存在するので、近年の国債増発の影響による元本償還費の増加はすぐに表面化して来ないが、今後の金利上昇による国債利払費の増加には注意が必要である。金利が上昇する際には景気が好転しており税収が増加しているために問題ないとするのが、一般的な主張である。しかし、景気好転を伴わない金利上昇の懸念はないだろうか。特に、足元の金利水準が日銀による量的質的金融緩和によって人為的に押下げられているため、金融緩和政策の行方によっては、反動としての金利上昇も考えられる。その結果として、政府財政への大きな影響が生じる可能性も懸念される。政府予算の作成において利払費を見込む際には、金利の過度な低下を織り込んでいないとされるが、このままの金利水準が続いて利払費の抑制されている状態が続くと期待するのは難しいだろう。
(2015年12月22日「基礎研レター」)
03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
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