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「福岡オフィス市場」の現況と見通し(2022年)
金融研究部 主任研究員 吉田 資
1. はじめに
2. 福岡オフィス市場の現況
全国主要都市のオフィスの空室率は、2020 年4 月の緊急事態宣言の発令以降、いずれの都市も上昇傾向で推移している。(図表-1)。
三幸エステートによると、福岡市の空室率(2022年4月時点)は3.8%(前年比+0.6%)となった。福岡市の空室率を規模1別にみると、「大規模2.6%(前年比+0.6%)」、「大型3.1%(同+0.7%)」、「中型6.9%(同∔1.5%)」、「小型7.0%(同▲1.3%)」となり「小型」を除く全ての規模で前年から上昇した(図表-2)。景気悪化やテレワーク普及などを受けてオフィス需要が弱含むなか、大規模ビルの竣工が相次ぎ、空室が増加している。
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
三鬼商事によると、2021年末時点で賃貸可能面積が最も大きいエリアは、「博多駅前地区(24.1%)」で、次いで「天神地区(22.3%)」、「博多駅東・駅南地区(16.1%)」、「祇園・呉服町地区(15.2%)」、「薬院・渡辺通地区(12.2%)」、「赤坂・大名地区(10.1%)」の順となっている(図表-8)。
2021年は、賃貸可能面積が全ての地区で増加し、福岡ビジネス地区全体で+22.4千坪増加した。特に、新規供給のあった「博多駅前地区」(前年比+7.8千坪)と「天神地区」(同+7.5千坪)では大幅に増加した。
賃貸面積は、福岡ビジネス地区全体で+16.3千坪の増加に留まり、結果として、空室面積は+6.1千坪増加した。特に、「祇園・呉服町地区」(同+2.4千坪)等で空室の増加が目立つ(図表-9)。
3. 福岡オフィス市場の見通し
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「企業の景況判断BSI3」(福岡財務支局)は、2020年第2四半期に「▲53.7」と一気に悪化した。その後は、回復と悪化を繰り返しながら2021 年第4 四半期に「+17.9」まで回復したが、2022 年第1 四半期は「▲12.5」と再び悪化した(図表-13)。景況感の悪化幅は、全国平均と比べて、やや大きい傾向がみられる。
また、「従業員数判断BSI4」(福岡財務支局)は、人手不足を表わす「+22.5」(2020年第1四半期)から「+5.2」(第2四半期)へ大幅に低下した。足もとでは「+21.0」まで回復したが、コロナ禍以前の水準には至っていない(図表-14)。
また、帝国データバンク「新型コロナウィルス感染症に対する九州企業の意識調査」(2021年12月)によれば、コロナウィルス感染症による業績への影響について、福岡県では「マイナスの影響がある」との回答が68.9%を占め、全国平均(66.6%)を上回った。福岡においても、コロナ禍が企業経営に与えたダメージは大きいと言える。
福岡市では、人口の流入超過が継続しているもののその勢いは鈍化しており、福岡県の就業者は、10 年ぶりに減少に転じた。また、コロナ禍が「企業の経営環境」に与えたダメージは、全国平均と比べて大きく、「雇用環境」は本格的な回復には至っていない。以上を鑑みると、福岡市のオフィスワーカー数の拡大は力強さに欠けることが予想される。
3 企業の景況感が前期と比較して「上昇」と回答した割合から「下降」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど景況感
が悪いことを示す。
4 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。
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- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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