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- 商業施設売上高の長期予測(1)-コロナ禍で進んだ「コト消費からモノ消費へのシフト」と「ECシフトの加速」
2022年04月04日
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1――コロナ禍による消費行動の変容は続く
このように、コロナ禍から2年が経過し小売販売額は以前の水準に戻りつつあるが、コロナ禍を契機とした消費行動の変容は続いている。具体的には、消費構造の変化として「コト消費からモノ消費へのシフト」、消費チャネルの変化として「EC(電子商取引)シフトの加速」を指摘することができる。そして、これらの変化は、アフターコロナにおいて、元に戻るものと、元には戻らない不可逆的なものが含まれており、今後の商業施設の売上高に大きな影響を及ぼすことが予想される。
そこで以下では、まず、コロナ禍における「コト消費からモノ消費へのシフト」、並びに「ECシフトの加速」について確認する。続いて、次稿では、本稿の考察をベースに今後の商業施設売上高をシミュレーションしたい。
1 2019年は消費税増税による駆け込み需要と反動減の影響があるため、2018年同月比とした。
そこで以下では、まず、コロナ禍における「コト消費からモノ消費へのシフト」、並びに「ECシフトの加速」について確認する。続いて、次稿では、本稿の考察をベースに今後の商業施設売上高をシミュレーションしたい。
1 2019年は消費税増税による駆け込み需要と反動減の影響があるため、2018年同月比とした。
2――消費構造の変化:コト消費からモノ消費へのシフトが進む
2 消費支出はこづかい、交際費、仕送り金を除く。
3 二人以上の世帯。また、本稿では特段の断りがない限り、二人以上を対象とする。
1|品目別にみた消費支出額: 一部のモノ消費では反動減
「コト消費からモノ消費へのシフト」は多くの品目で続いているが、一部のモノ消費では反動減も見られる。消費支出額を品目別に確認すると、コト消費は「旅行関連サービス」が2020年に前年比▲64.9%、2021年に▲9.6%、「外食」が2020年に▲24.7%、2021年に▲2.2%と、低迷が続く(図表3)。一方、「外食」の代替先としてモノ消費の「食料」が増加し、2020年に+6.9%、2021年に▲0.7%となった。また、在宅勤務の普及などにより自宅での滞在時間が増加したことで支出額を伸ばした「家電」は2020年に+11.7%、2021年に▲3.9%、「家具・寝具」は2020年に+7.7%、2021年に▲9.6%となった。こうした在宅環境改善のための耐久財消費への支出は2020年で概ね一巡したと言える。
「コト消費からモノ消費へのシフト」は多くの品目で続いているが、一部のモノ消費では反動減も見られる。消費支出額を品目別に確認すると、コト消費は「旅行関連サービス」が2020年に前年比▲64.9%、2021年に▲9.6%、「外食」が2020年に▲24.7%、2021年に▲2.2%と、低迷が続く(図表3)。一方、「外食」の代替先としてモノ消費の「食料」が増加し、2020年に+6.9%、2021年に▲0.7%となった。また、在宅勤務の普及などにより自宅での滞在時間が増加したことで支出額を伸ばした「家電」は2020年に+11.7%、2021年に▲3.9%、「家具・寝具」は2020年に+7.7%、2021年に▲9.6%となった。こうした在宅環境改善のための耐久財消費への支出は2020年で概ね一巡したと言える。
2|年齢別にみた消費支出額: コト消費への回帰の動きも
2021年に入っても、高年層では「コト消費からモノ消費へのシフト」が続いているものの、若年層と中年層ではモノ消費からコト消費へ回帰する動きがみられる。年齢別にモノ消費割合の推移を確認すると、「65~69歳」が2019年の63.3%から2020年に69.3%に上昇し、2021年でも69.2%と高水準を維持するなど、65歳以上の高年層では、2020年に上昇した後も高止まりしている(図表4)4,5。これに対して、「34歳以下」のモノ消費割合は2019年に63.8%、2020年に69.5%と上昇したものの、2021年に67.7%とやや低下するなど、64歳以下の若年層・中年層では、2020年に上昇したモノ消費割合が2021年には低下している。
2021年に入っても、高年層では「コト消費からモノ消費へのシフト」が続いているものの、若年層と中年層ではモノ消費からコト消費へ回帰する動きがみられる。年齢別にモノ消費割合の推移を確認すると、「65~69歳」が2019年の63.3%から2020年に69.3%に上昇し、2021年でも69.2%と高水準を維持するなど、65歳以上の高年層では、2020年に上昇した後も高止まりしている(図表4)4,5。これに対して、「34歳以下」のモノ消費割合は2019年に63.8%、2020年に69.5%と上昇したものの、2021年に67.7%とやや低下するなど、64歳以下の若年層・中年層では、2020年に上昇したモノ消費割合が2021年には低下している。
4 モノ消費割合は、消費支出を品目ごとにモノ消費とコト消費に分類することで計算した。
5 世帯主の年齢。また、本稿では特段の断りがない限り、「年齢別」は世帯主の年齢別を指す。
(2022年04月04日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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