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資金循環統計(21年10-12月期)~個人金融資産は2023兆円と初めて2000兆円を突破、海外勢の国債保有高が初めて預金取扱機関を上回る
経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志
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1.個人金融資産(21年12月末):前期比では24兆円増
四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(9月末)比で24兆円増と7期連続で増加した。例年、10-12月期は一般的な賞与支給月を含むことから資金流入が進む3。今回は例年をやや上回る26兆円の資金流入があった。一方、この間に株価が弱含んだことで、時価変動の影響がマイナス2兆円(うち株式等がマイナス6兆円、投資信託がプラス3兆円)発生し、資産残高増加の抑制に働いた(図表1~4)。
ちなみに、足元の1-3月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年、10兆円前後資金流出が進む傾向がある。今年はオミクロン株の拡大・まん延防止等重点措置の発令による消費の抑制(貯蓄の押し上げ)があったとみられるが、それでも小幅な資金流出と推定される。また、ウクライナ情勢緊迫化等によって株価が大きく下落したことも個人金融資産の目減りに繋がっているはずだ。ただし、こうした要因を考慮しても、株価が急落しない限り、3月末時点の個人金融資産残高は2000兆円台を維持する可能性が高い。
1 今回、確報化に伴い、2021年7-9月期の計数が遡及改定されている。
2 統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
3 コロナ前である2016~2019年10-12月期の平均は19.3兆円増
2.内訳の詳細: 家計のリスク性資産への投資が進む
定期性預金からの純流出は24四半期連続で、この間の累計流出額は69兆円に達している。この結果、定期性預金が個人金融資産に占める割合は19.4%まで低下している。一方で、この間の流動性預金への資金流入は207兆円に達しており、流動性預金が個人金融資産に占める割合は28.9%にまで上昇している(図表8)。預金金利がほぼゼロであるにもかかわらず、引き出し制限があって流動性の低い定期性預金からの資金流出には歯止めがかかっていない。定期性預金の残高は未だ392兆円もあるため、今後も大幅な資金流出が避けられない。
なお、その他資産では、未収金が4兆円も発生し、フローの増加に大きく寄与している点が目立つ。一時的な収入と推測されるが、様々なものを含むだけに詳細は不明。
3.その他注目点: 家計の資金余剰は高止まり、海外勢の国債保有が預金取扱機関を上回る
主な経済主体の保有状況を見ると(図表13)、最大保有者である日銀の国債保有高は530兆円と9月末から8兆円減少し、全体に占めるシェアも43.4%(9月末は44.1%)と若干低下した。コロナ流行後に大量に買い入れた国庫短期証券が償還を迎えていることが背景にあり、長期国債の残高は引き続き増加している。
また、銀行など預金取扱機関の保有高は9月末比2兆円減の163兆円となり、全体に占めるシェアも13.4%(9月末は13.5%)と若干低下している。
一方、海外部門の保有高は9月末比11兆円増の175兆円となり、シェアも0.9%ポイント増の14.3%となった。残高、シェアともに過去最高を更新し、初めて預金取扱機関を上回った。インフレ懸念やそれに伴う金融引き締めによって金利が上昇(債券価格が下落)するリスクが燻る米国債などを避け、金利上昇リスクの低い日本国債へ資金を振り向ける動きが続いたとみられる。
4 2019年1-3月期の対外直接投資額は10.6兆円と突出しているが、これは国内製薬大手による総額6兆円の大型海外M&A完了という特殊要因が影響したものと推測される。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年03月17日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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